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今回は宋文洲さんのブログ『宋文洲のメルマガの読者広場』からご寄稿いただきました。
ファーウェイがやっと日本にも法人を作りました。以前にも紹介したように、ファーウェイの創業者社長の任さんは利益が一兆円に迫る今も国内移動はエコノミー席を利用する異色な経営者です。
ファーウェイでは17万人社員の平均年収は80万元(1330万円、平均月給110万円)です。日本法人の初任給は全社員の平均に過ぎないのに、大きなニュースになること自体、日本の常識が如何に保守的で画一的かを示唆しています。
一番がっかりしたのは「こんな高い給料を出すのは日本の技術がほしいから」という日本のマスコミの「井の中の蛙」発想です。彼らにしてみれば、40万円の初任給がどうしても理解できないのでしょう。悩んだ末、「日本凄い」の「井の中の蛙」本領を発揮し、それは「日本の技術がほしいからに違いない」との結論にまたも辿り着いたのでしょう。任さんに取材をしたのでしょうか。取材できないならせめて取締役などの責任者の生の声を聴いてきてほしいものです。
私は2年前からファーウェイの携帯電話を持っています。はっきり言ってその時点でもう特に日本のメーカーよりはるかに進んだ端末を作っていました。ファーウェイは日本の何の技術も欲しくないとは言いませんが、それを40万円の初任給を出して新人に求める必要はないのです。
ファーウェイは中国人も日本人も米国人も関係なくハイレベルの社員しか雇わないのです。レベルの高低と関係なく新人に一律20万円前後の給料を出す日本企業には理解できないだけなのです。また日本のように4月1日から一律の紺色のスーツのバージン社会人を大量に雇うのではなく、一年中、過去の履歴を問わずにリクルートし続けるのです。
東大を出たからといって採用する訳でもないですし、有名企業に居たからと言って採用する訳でもないのです。何ができるか、どんな能力を持つかを議論し、一対一の対等な労働契約を行うのです。この世界的な対等労働契約は日本では「契約社員としか行わない」のですが、たぶん、ファーウェイは日本のこの商習慣には従わないのではないでしょうか。
私が経営をやっていた頃、この一律の初任給を嫌ってわざと2~3万円の差を付けました。書類審査を含め、面接は何回もやっているのに初任給の差もつけられないのはおかしいと思いました。また、差があるのに認めないのも新人教育上よくないと思いました。多分、ファーウェイも40万円はあくまでも平均的目安で同じ新人でも初任給に差をつけているのではないでしょうか。
ファーウェイの給料の高さは中国では常識です。その代わりに本当に能力のある人でないとファーウェイの面接に行かないのです。ファーウェイはいったいどのようにして高い給料を出しても370億元(約6000億円)の利益を出しているか、どうやって社員の能力と貢献の差を社員が納得のいく方法で評価を行っているかは私にはわかりません。これこそ日本の経済記者の仕事ではないでしょうか。
私が知っているのはファーウェイ任社長が常にファーウェイが直面している危機と課題を語っていることです。「ファーウェイがすごい」「中国の技術がすごい」などの自己満足はありえないことです。それから任社長は未だに深夜の空港からタクシーで帰宅したり、地下鉄で通勤したりしていることです。そしてファーウェイの社員食堂のメニューの豊富さです。
ファーウェイの給料アップは習近平の要請の結果でもなければ、マスコミや労働組合の圧力の結果でもないのです。ファーウェイの企業戦略の都合に過ぎません。だから中国ではすごいという驚きはありません。そこの社員になりたいのであればそれだけ世界をリードするような才能を持ち、世界一流の努力をすればいいだけなのです。
執筆: この記事は宋文洲さんのブログ『宋文洲のメルマガの読者広場』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2017年07月10日時点のものです。