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ごっつい外観、果てしなく重い。スピーカーから流れくる音楽は心地よいスローバラード。 世の中に、これほどいとおしく、愛くるしい存在の機械があるだろうか?
高度成長期の真只中、雨後の筍のように世の中に現れ、古代の恐竜のようにあっと言う間に市場から絶滅したポータブルオーディオ黄金期の勇者達である。
松崎順一
今年4月、大阪で開催され話題を集めた日本発アナログ合体家電「大ラジカセ展」が遂に東京に! 12月27日(火)まで、東京・池袋のパルコミュージアムに、100台の貴重なヴィンテージ・ラジカセが集合しています。
本展の監修は、ビジュアルブック『ラジカセのデザイン! 増補改訂版』(立東舎)の著者である松崎順一さん。日々廃棄された家電を発掘し、日本のみならず世界へ古い家電を蒐集し廻り現代に蘇らせている、日本随一の家電蒐集家に、早速お話を聞いてみましょう!
ーーー今回の「大ラジカセ展」はどんなところが見所ですか?
松崎さん 「見所はすべてなのですが、ラジカセは写真だと立体感が分からないのがあり、ラジカセのデザインは立体感をぜひ見て欲しい。見る角度によって様々な表情があります。」
ーーー大阪での展示からパワーアップした点はありますか?
松崎さん 「今回は会場が広くなったのでラジカセのカタログを厳選して展示しています。様々なラジカセの背景、時代感も感じて頂けると嬉しいです。そしてカセットは語るコーナーでも参加アーティストが増えてますます見応えが増しています。今回は本当に必見ですよ!」
ーーー著書『ラジカセのデザイン! 増補改訂版』(立東舎)では貴重なヴィンテージ・ラジカセがたくさん紹介されていますが、その中で松崎さんのベスト5をあげるとしたら?
SONY CF-1980mk2
松崎さん 「当時憧れた一番大好きなラジカセです。」
SONY FX-300
松崎さん 「ラジカセの中では、さすがSONYのデザインは最高で、今でもコンディションの良い物を探しています。」
AIWA CS-80
松崎さん 「“仮面ライダーのマスク”そのものに見えて、なぜかそそられます。」
NATIONAL RX-7700
松崎さん 「僕が選ぶのはどれもそうなんだけど、メカニカル感が溢れているデザイン。RX-7700はその中でも最高峰のラジカセ!」
VICTOR RC-M90
松崎さん 「大好きなHioHopを語ったらこのM90。LL.COOL.Jのアルバムはラッパー達のアイコンとしての地位を確立している証拠。」
ーーーカセット人気が再燃していますが、音楽専門出版社のリットーミュージックでも若いスタッフの中にはラジカセやカセットを手にとったことがない者もいます。そもそもラジカセが流行っていたのはいつ頃でしょうか?
松崎さん 「ラジカセがラジカセらしかった黄金期は、1975年から1985年の10年間前後だと思っています。ただその後もCDラジカセ、MDラジカセと形を変えながら進化はしています。」
ーーーラジカセは日本生まれ、と聞いて驚きました。
松崎さん 「世界に出回っているラジカセすべてが“メイド・イン・ジャパン”という訳ではありませんが、黄金期は、日本から海外に輸出されたラジカセが世界を席巻したことは事実です。」
ーーー松崎さんはラジカセを何台所有されていますか? 保管は大変かと思うのですが。
松崎さん 「黄金期のラジカセを中心に約5,000台所有しています。現在は家とは別に倉庫を兼ねたファクトリーを持っていて、そこで保管、整備などを行っています。」
ーーー脱サラしたと伺ったのですが……。当時ご結婚はされていたのでしょうか?
松崎さん 「42才で勤めていた会社を辞めて、家電の蒐集家として独立しました。結婚はしていました。まぁ当然奥さんの大反対がありました(笑)。」
ーーー奥様の立場では大反対ですよね(笑)。これまでにラジカセに費やした総額が気になります!
松崎さん 「実はそんなにお金はかけてはいなくて、1,000万円位でしょうか。集めるのにもっとお金がかかる他の家電と比べると、僕の中では少ない費用です。金額よりも探すのが大変です。」
ーーー著書に掲載されているラジカセの中で、一番高額なものは?
松崎さん 「当時の価格でいくとSHARPのCT-6001でしょうか。当時でも15万円弱していました。」
ーーー入手するのに苦労したラジカセは?
松崎さん 「僕がラジカセを探すのは目標ありきではなく“出会ったモノ”を集めるので、あまり苦労して集めるというスタイルではないです。でもなかなか出会えないのは、当時マイナーだったメーカーのモノですね。フェアメイトとか。あまり欲しくはないけど(笑)。」
ーーーカセットもかなりの数を保有されていると伺っていますが。普段からラジカセで音楽を?
松崎さん 「普段音楽を聴くのはiPodです。ただファクトリーに居る時は、好きなアーティストのミュージックカセットテープを掛けていることが多いです。」
ーーー今さらですが、ラジカセって英語じゃないですよね。ではラジカセの定義は何でしょうか?」
松崎さん 「ラジカセという言葉は最初パイオニアが商標登録を行ったのですが却下され、一般呼称として定着しました。また、僕が勝手に決めているラジカセの定義は、ラジオとカセットが付いている。把手が付いている。電池で使う事ができる。この3ヶ条です。」
ーーー今急速に拡がっている定額制の聴き放題(音楽配信)サービスに比べると、わざわざラジカセで、というのはかなり“面倒くさい”と思うんです。それでもこれだけ人気があるのはなぜだと考えますか?
松崎さん 「その面倒くささが人気の秘密なんだと思っています。デジタルならではの簡単に聴けるスタイルの対極として、“面倒”なところがカッコいいと認識されている感じがします。」
ーーー最後に、このインタビューはガジェット通信で公開されるのですが、ラジカセのガジェットとしての魅力を教えてください。
松崎さん 「やはりスイッチやボタン、それにメーターが沢山付いているところじゃないでしょうか。見た目のメカニカル感は、家電の中でもほぼ“ガジェット”に近いかそのものだと思います。」
撮影:新井卓(ラジカセ)/小浜晴美(人物)
『ラジカセのデザイン! 増補改訂版』(立東舎)
著者:松崎順一
定価:(本体1,800円+税)
発売:2016.4.25
ISBN 9784845628056
Amazon.co.jpで購入する
《著者プロフィール》
松崎順一(まつざきじゅんいち)
家電蒐集家・デザインアンダーグラウンド工場長。1960年生まれ。インハウスデザイナーを経て2003年よりデザインアンダーグラウンドを設立し活動を開始。近代家電製品の蒐集・整備・カスタマイズ等を手掛ける。近年は特にデジタル世代へのメイド・イン・ジャパン家電の持つ魅力をカルチャーとして伝える活動をイベント、執筆等、広範囲に展開中。そして現在、独自の家電理論をコンセプトとして家電メーカーの立ち上げも視野に入れる。著書に写真集『メイド・イン・ジャパンのデザイン! 70年代アナログ家電カタログ』(青幻舎刊)等がある。―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: Rの広報ガール) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか情報提供元: ガジェット通信
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