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最近、ますます「積読」が増えているkeikoです。
Web上にも本棚を持てたりするので、「読みたい!」と思ったらすぐブックマークしてしまって、未読の本がどんどん溜まっていきます。
目下の目標は、積読を消化し、「美女読書」編集室の第一期メンバーとして、魅力ある記事をたくさん書いていくことです。
そのためには、文章を読む「インプット力」と、そこで学んだことを記事にする「アウトプット力」、両方のスピードと質を磨かなければなりません。
それを叶えるべく、手に取ったのが『「最速で考える力」を東大の現代文で手に入れる』です。
本書は「東大現代文」を教材に、インプットとアウトプットの <速さ> と <正確さ> を兼ね備えた <型> を学ぶことができる一冊です。
著者は、東進ハイスクール国語科教材スタッフとして、東大からセンター試験まであらゆるレベルの模試の作成・監修に携わっている相澤理さん。
相澤さんは、インプットとアウトプットを速く、正確に行うための <型> を学ぶ上で「東大現代文」は絶好の教材だと言います。
なぜなら、東大現代文が問うものは <読み書きの基本>、つまり速くて正確なインプット・アウトプットができる能力があるかどうかだからです。
インターネット社会に生きる私たちは、日々大量の文章に接します。そして常に限られた時間の中で、そうした膨大な情報量の中から有益な情報だけを把握し、アウトプットにつなげていかなければなりません。そこでは<速さ>と<正確さ>が求められます。
著者は、「物事には <型> がある。まずはその <型> を繰り返して自分のものにしなさい」と述べています。
野球でいうなら、バッティングフォームが <型> ですね。 <型> 通りにバットを振れば、軌道は最短距離を描き、無駄なく力を伝えることができます。しかし正しいバッティングフォームを身につけるには、何千回・何万回もの素振りをしなければなりません。
私は中学生の時、吹奏楽部に所属していて、毎日基礎練習を繰り返していました。まずはゆっくりとしたテンポで吹く練習し、徐々にテンポを上げていきます。遅いスピードで基礎を身につけているからこそ、早いスピードに対応できるようになるんですね。
文章だと「日本語が使えれば誰でも読み書きできる」と思われがちですが、その正確さやスピードを高めるためには学んでおくべき <型> があり、身に付けるには何度も繰り返しトレーニングする必要があるのです。
そこで最適な教材となるのが、東大現代文です。
本書では、実際の東大現代文の問題を用いて、インプットとアウトプット、それぞれの <速さ> と <正確さ> を高めるための <型> について紹介しています。
以下、3つの <型> を紹介します。
「このように」「このような」といった幅広い指示語に注目すると、インプットのスピードを速めることができます。
なぜなら「このように」は、その段落の<内容>を受けてまとめる働きを持っており、その部分にこそ筆者の主張があるからです。
このように現代の日本社会には少子高齢化に関わる多くの問題が山積みしている。
この一文を見れば、「このように」の前には、おそらく介護施設の不足や国民医療費の膨張といった「少子高齢化に関わる多くの問題」が書かれていて、その <内容> を受けて「このように」と言っているのだろうと推測できます。
つまり「このように」は、具体例を指摘するパートを終わりにして、その具体例から何が言えるのか、これから自分の見解を示しますよ、と筆者が宣言している重要な言葉の <サイン> なのです。
著者の言いたいことを速く把握できるようになれば、当然、文章を読むスピードも速くなります。
インプットのスピードを上げ、「積読」を消化するために、これは簡単に実践できそうだと思いました。「このように」といった幅広い指示語にマーカーを引いていくとよさそうですね。
文章とは <具体> と <抽象> のくり返しで成り立っていると相澤さんは言います。
<具体>は、一つの事物や事象を表すものなので、他の場合にもあてはまるかどうかわかりません。一方 <抽象> は、具体的なものの共通点を取り出し、一般化したものなので、他の事柄にも適用することができます。
会議などの場面でも、個々の事例をダラダラ説明していると、「一言でいうとどういうことだ」と上司に言われたりしますよね。これが、<具体> 的な事柄を <抽象> 化してくれ、という要求なのです。
つまり、先に具体的な事実の指摘があって、そこから抽象化・一般化した法則や理論が導き出された部分にこそ、筆者の主張が表れるのです。
筆者の言いたいことは <抽象> のほうにあるということを意識すると、素早く筆者の主張をとらえることができるようになります。
たとえば先の「少子高齢化に関わる多くの問題」の例文でいうと、「介護施設の不足」や「国民医療費の膨張」といった <具体> 的な内容を踏まえて、それらが「少子高齢化に関わる」問題であることを主張しています。
筆者の言いたいことは「少子高齢化に関わる」と <抽象> 化された部分にこそあるわけです。
このような <具体> と <抽象> をつなぐ言葉の <サイン> は、他にも「たとえば」や「つまり」「要するに」などがあります。これらに注目し、<抽象> 部分を重点的に読むようにすれば、筆者の主張を素早く捉えることができるのです。
<逆説>とは、「一見矛盾しているようで真理を述べた説」のことです。
入試問題でも本文中に出てきたら、かなりの頻度で解答にからむくらいと言われるくらい重要なポイントだそうです。
例として「急がば回れ」ということわざが挙げられています。「急いでいる」のに「遠回りする」、この両者は矛盾しているように思われますが、急ぐときこそ慎重にことを進めたほうが、かえって早く片付くもの、というのは真理を述べています。
相澤さんは、<逆説> について意識的にアウトプットができるようになれば、困難な仕事の課題に対して、効率よく新しいアプローチができるようになると言います。
なぜなら <逆説> は、一見矛盾する要素を結びつけることで、新しいもの(真理)を生み出しているからです。
例えば、温室効果ガスの排出は抑えなければならない一方で、安定的な経済成長も求められる、この一見両立不可能な2つの要求を同時に満たそうとすることからこそ、新しい技術が生み出されるわけです。
<逆説> が出てきたら、まず矛盾する2つの要素を捉えることが重要だと言います。両者は多くの場合、「かえって」「同時に」「〜であればあるほど…」といった表現でつなぎ合わされているので、<逆説> の周囲にこれらの表現を探してみましょう。
<逆説> をアウトプットに生かすことができれば、文章の価値は格段に高まるはずですが、難易度は高いと感じました。まずは、文章の中から <逆説> の部分を見つけ、どのように使いこなせばよいのかを理解するところから始めたいと思います。
本書から3つの型を紹介しました。私としては、「抽象の部分に着目する」というのが目からウロコでした。
具体的な話は想像しやすいから、それを並べれば読者に理解してもらえると考えていたのですが、主張は抽象的にして、その理解を促すために具体例を使うことが大切なんですね。
著者は、<読み書きの基本> は大学で学んでいくうえで欠かせないものであるものの、それが必要とされるのは、むしろ社会に出てからだと述べています。
仕事で経験した <具体> 的な事例は、共通点を取り出して <抽象> 化し、ノウハウにすることをいつも心がける。そうすることで、次の新しい仕事に対しても、蓄積したノウハウを生かして効率よく進めることができます。
本書は、単なる読書のインプット・アウトプットのためだけでなく、仕事の場面でも生かしていきたいと思いました。