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ITやガジェットを中心に新しいものが好きな20代男、ロマ本です。テレビを捨てたら本をたくさん読むようになり、それが高じて「Romancing Book」という書評ブログを始めました。
今回ご紹介する『シンギュラリティ・ビジネス』では、AI(人工知能)を始めとしたこれから実現するであろう革新的な技術と、それらが実現した先の未来についてわかりやすく語られています。
スマホを始め、ドローンやVR、自動運転などテクノロジーに関するニュースを見かけることが多くなりました。中国では個人がQRコードを介して決済するなど、世界に先駆けて電子マネー化が進んでおり、日本でもQRコードでの決済を導入し始めています。数年後には、財布を持ち歩く習慣はなくなっているかもしれません。
こうした変化の激しい時代に、企業や個人はと何を考え、どのように動いていけばいいのか、そのヒントが詰まった一冊です。
シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件 (幻冬舎新書)
タイトルにある「シンギュラリティ」とは、日本語で「特異点」を意味します。この言葉はレイ・カーツワイル著『シンギュラリティは近い』で言及されて話題となりました。
カーツワイルは、著書の中で、2045年頃に技術的な「特異点」が現れ、これまでとはまったく変わった社会になるだろうと予想しています。重要なのは、すでに特異点に向かって社会や個人は変化し始めていて、そのスピードも増しているということです。
電話もカメラもゲームもSNSもパソコンも、すべてがスマートフォン一台に入ってしまって、一体いつの間に、スマートフォンなしでは暮らせなくなってしまったのかと、あらためて驚くことはないでしょうか。iPhoneが発売されたのは、ほんの10年前です。
著者が述べるように、スマートフォンがこの世に登場してまだ10年しか経っていません。にもかかわらず、多くの既存製品を刷新し、淘汰してきました。紙の地図やカーナビは地図アプリに代替され、スマートフォンがあれば人々は道に迷うことがなくなりました。
ほかにもゲームやSNSなどいくらでも暇つぶしができるので、ガムを噛むことがなくなり、ガムの消費量が減少するなどの波及効果も見られます。スマートフォンの登場は、あらゆる産業に多大な影響を与えているのです。
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その変化のスピードは「エクスポネンシャル(指数関数的)」で、この単語は本の中で頻出するキーワードになっています。
指数関数は「y = a^x」で表され、xの値が大きいほど結果も莫大になり、指数関数のグラフは直線的なグラフにはならず時間の経過とともにほぼ真上に向かってカーブしていきます。
例えば2の累乗は「2→4→8」とはじめは小さな変化にしか感じませんが、これを何十回も続けると天文学的な数字になります。
ある進化がほかの進化に結びつくことで、進化のペースがどんどん速くなったのでしょう。単細胞生物が多細胞生物になるまでには長い時間がかかりましたが、いったん多細胞生物ができると、短期間のうちに「カンブリア紀の大爆発」と呼ばれる身体設計の多様化が起きています。
これを「収穫加速の法則」と呼びます。地球の生命誕生から現在に至るまで、生物はエクスポネンシャルなスピードで発展してきました。それと同様に、技術進化のスピードも「明日は今日の倍」、「明後日は明日の倍」というふうに倍々ゲームで増え続けているのです。
たとえば、コンピューターの処理速度は年々向上し、大規模なデータ解析も短時間で済むようになりました。今まで手作業で実験していたソーラーパネルで使用する素材も、コンピューター上で組み合わせてシミュレーションできるようになっており、さらに効率のよい組み合わせが発見されるのも時間の問題と言われています。
すでに最新のメガソーラーでつくられた電気の中には、契約価格で化石燃料を下回るものも出てきました。この四十年間の価格の推移を見ても、1977年に76ドルぐらいだったものが、いまは0.74ドルと100分の1にまで下がっています。このままソーラーパネルがエクスポネンシャルに進化していくと、そう遠くない将来に、太陽光発電によるエネルギーの価格はほぼ0になるのです。
仮にエネルギー問題が解決されると、食料や水の不足といった問題から人類は解放されることになるでしょう。
ありとあらゆる産業が変化を迫られ、仕事のスタイルも大きく変わっていく未来において、現在の常識が当てはまるでしょうか。
いずれこうした未来が訪れることを念頭において、日々の過ごし方や働き方を考えていかなければいけません。変化についていけなければ、衰退を余儀なくされてしまうからです。
例えばデジタル写真の将来性に気づけなかったコダック社は、2012年に破産しています。破壊的なイノベーションは、フィルム業界でトップシェアを誇るコダック社のような、これまで磐石だと考えられてきた大企業さえも飲み込んでしまうのです。
写真がデジタル化した当初、それが主流になると考えた人はあまり多くはなかったでしょう。(中略)むしろアナログ写真のすばらしさをあらためて認識した人たちも大勢いたはずです。そもそもデジタルカメラを最初に開発したコダック社の経営陣が、それをオモチャとしか見ていませんでした。
新しいテクノロジーが実用化され、話題になり始める時点で、すでにその市場のトップランナーは決まっています。
成長期の日本は、欧米の技術を盗んで、さらに最適化することでシェアを獲得していましたが、現在、技術革新はどんどん高度化し、スピードも高速化していっています。
ポケモンGOを開発したNianticという企業はGoogleの子会社で、Googleが集めた膨大な地図データを利用して実現していますが、似たようなゲームが出てこないのは、Google以上の地図データを所有企業がおらず、キャッチアップすることが困難だからです。
しかしながら、AppleやGoogleのような大企業でなくとも、ベンチャー企業であるUberやAirbnbが社会に多大な影響を与えているとおり、テクノロジーを利用したアイデアと、それを実行する行動力があればイノベーションが起こせる時代でもあります。
プラットフォームを牛耳るトップランナーになること、つまり新しい領域を作り出すことが、企業や個人に関わらず重要になってきます。
本書を読めば、人類がこれまで歩んできたエクスポネンシャルな進化を実感することができます。
これからは既存の働き方や価値観に縛られず、変化に適応できる柔軟性が一層、必要になる時代になっていくでしょう。起業や独立を考える人、新しいものが好きな人はぜひ手にとって読んでみてください。
ここ数年、本をたくさん読むようになり、それが高じて書評ブログを始めました。基本的には新しく刊行された話題の本を書評としてまとめるようにしています。
同時に始めたTwitterでブログの更新情報や読書で得た気づきをつぶやいているので、こちらもチェックしてみて下さい。
シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件 (幻冬舎新書)