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医療DXとは、「医療サービスや医療システムの変革により、国民自身の医療予防促進やより良質な医療やケアを受けられる世界の実現」をデジタル技術を活用して目指す取り組みです。
そのため、単に紙を電子化したり、新しいシステムを導入するといった形式的なデジタル化にとどまらず、医療のあり方そのもの、さらには社会や生活の形を変えることを目指しています。
日本政府が医療DXで実現しようとしているのは次の5点です。
- 国民の更なる健康増進
- 切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
- 医療機関等の業務効率化
- システム人材等の有効活用
- 医療情報の二次利用の環境整備
現在進めている具体的な取り組みとしては、電子カルテの普及と標準化、医療情報のプラットフォーム化、そして今回のテーマである保険証のデジタル化などが挙げられます。
健康保険証のデジタル化は、「オンライン資格確認」の導入によって可能になりました。オンライン資格確認とは、マイナンバーカードまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認ができるシステムです。
2021年10月から本格運用が開始され、2023年4月からは保険医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入が原則義務化されました。
厚生労働省の発表によると、2023年10月時点で、全国の医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の運用開始施設数は203,144施設に達しています。これは、全国229,144施設中88.5%にあたります。
2024年12月1日には健康保険証が原則廃止され、「マイナ保険証」への一本化が予定されています。マイナンバーカード1枚で健康保険証の機能を含む様々な行政サービスが利用可能な状況になっているのです。
オンライン資格確認システムの導入は、生活のさらなる安全安心につながると期待されています。
実際に、2024年1月の能登地震が起きた際には、オンライン資格確認システムの強みが発揮されました。避難した人々の多くは保険証やお薬手帳を所持していませんでしたが被災地の医療機関や薬局で「オンライン資格確認システム」の「災害時モード」を活用することにより、患者の名前や生年月日などの基本情報をもとに、薬剤情報あ診療情報、特定健診情報などを確認することができたのです。
マイナ保険証の利用率の低迷が続く中での廃止には批判の声も根強く、スムーズな移行が実現するかは不透明ですが、日本の医療の大きな転換点であることは間違いありません。
健康保険証のデジタル化をはじめとする大きな変革期を迎える中、健康保険組合も独自のDXを推進しています。これらの取り組みは、被保険者の健康管理を支援するとともに、保険者の業務効率化に貢献しています。
デジタル技術を活用した新たなサービスや業務改善が進むことで、被保険者の利便性向上と保険者の業務効率化が期待されます。同時に、蓄積されたデータを活用した健康増進施策の立案など、より効果的な保険運営につながる可能性も有していると言えるでしょう。
本章では健康保険組合が取り組んでいる、具体的なDX事例を紹介します。
株式会社大和総研と株式会社法研は、健康保険組合向けのDX推進を協業で開始しました。この取り組みでは、健康保険組合の業務効率化と被保険者の健康増進を目的としています。
具体的サービスの提供内容は以下の通りです。
ヤマトグループ健康保険組合が提供する「MYs HEALTH WEB」は、被保険者が自身の健康情報をオンラインで管理できるサービスです。
主な機能には以下のようなものがあります。
健康保険証のデジタル化は日本の医療DXにおける象徴的な変化ですが、これは社会全体で進む包括的な変革の一部に過ぎません。
医療DXは、医療システム全体を効率化し、患者中心の医療を実現するための幅広い取り組みを含んでいるのです。
本章では、健康保険証のデジタル化以外の重要な医療DX施策例として、全国医療情報プラットフォームの構築と電子カルテ情報の標準化について解説します。
健康保険証のデジタル化と並行して、より包括的な医療情報の共有・活用を目指す「全国医療情報プラットフォーム」の構築が進められています。
これは、オンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診等情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテ等の医療(介護を含む)全般にわたる情報について共有・交換できる全国的なプラットフォームです。
このプラットフォームの構築により、以下のような効果が期待されています。
全国医療情報プラットフォームの構築と同じく、並行して進められているのが、電子カルテ情報の標準化です。
現状では、電子カルテシステムはベンダーごとに異なる仕様で開発されており、医療機関間での情報共有が困難な状況にあります。
厚生労働省は、2023年11月に「文書情報(3文書)及び電子カルテ情報(6情報)の取扱について」を公表し、電子カルテ情報の標準化を推進しています。
標準化された電子カルテ情報を全国医療情報プラットフォームで共有することで、医療機関間での円滑な情報連携が可能となり、より質の高い医療サービスの提供が期待されるでしょう。
具体的な文書情報(3文書)及び電子カルテ情報(6情報)は以下の通りです。
文章情報(3文章)
電子カルテ情報(6情報)
The post 【医療DXの今】デジタル化による健康保険証の廃止と医療保険の未来 first appeared on DXportal.