「今日は一杯飲んで帰ろう!」

仕事終わりにふと立ち寄る居酒屋。あるいは週末の夜に仲間と集うスナックやバー。

そんなありふれた光景にも、いまデジタル技術による変革の波が押し寄せています。

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されました。それはもちろん、街の酒場も例外ではありません。

今回は、そんな酒場におけるDXの最新事例についてご紹介します。

酒場におけるDXの現状

居酒屋に、スナックに、ショットバー。夜の街に欠かせない酒場は、人々の憩いの場として、コミュニケーションの場として、様々な役割を担ってきました。

しかし、近年、酒場を取り巻く環境は大きく変化しています。

コロナ禍を契機としたDX推進の加速

記憶に新しい新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、飲食業界に大きな打撃を与え、多くの店舗が経営の危機に直面しました。なかでも、度重なる酒類提供の自粛要請によって、酒場が受けた影響は甚大なものでした。

現在はコロナ禍による影響は一定の落ち着きをみせたものの、外食産業の景気はコロナ前の水準までには回復していないと言われています。

酒場が抱えている問題は、パンデミックの影響によるものだけではありません。例えば、顧客ニーズは多様化の一途を辿っており、画一的なサービスでは顧客を満足させることは困難になっています。加えて、人手不足やコスト増加といった長年の課題も深刻化しているのです。

このような状況下で、酒場経営者は、デジタル技術を活用したDXを推進することで、新たな活路を見出そうとしています。

顧客ニーズの多様化とデジタル化

近年、顧客ニーズは多様化の一途を辿っています。かつては「とりあえずビール!」という言葉が表す通り、漠然と共有されている「標準的な飲み方」があり、多くの人がそれに沿って行動していました。しかし、現代では、顧客一人ひとりが自分の好みに合ったお酒や料理を求めるようになっています。

また、デジタル技術の普及により、顧客は様々な情報をオンラインで入手し、比較検討するようになりました。かつては口コミや雑誌の情報に頼るしかなかったものが、SNSやレビューサイトによって瞬時に膨大な情報へアクセスできるようになったのです。

これにより、顧客は来店する前から特定の酒場の雰囲気、メニュー、サービス内容を事前に把握し、複数の店舗を比較検討した上で、自分にとって最適な店を選ぶことが可能となりました。このため、ただ漠然と店を構えているだけでは、顧客の選択肢に入ることすら難しくなっているのが現状です。

このような状況下で、酒場経営者は、来店前の顧客の期待値を理解し、その上でニーズを的確に把握してきめ細やかなサービスを提供する必要があります。デジタルツールを活用して顧客の好みを分析し、パーソナライズされた体験を提供することが、競合との差別化を図る上で不可欠となっているのです。

人手不足、コスト削減、集客力向上

酒場などの飲食業界は、慢性的な人手不足に悩まされています。特に、深夜帯の従業員確保は難しく、人件費の高騰も経営を圧迫しています。

また、食材費や光熱費などのコストも増加傾向にありますが、その分を価格に転嫁することは容易ではありません。そのため、利益を削って何とか対応しているのが多くの酒場の現状でしょう。

このような状況下で、酒場経営者は、業務効率化やコスト削減、集客力向上などに取り組まなければならないのです。

DXは、酒場の抱える課題を解決するための有効な手段として注目されています。

酒場DXの最新事例

デジタル技術の進化は、酒場に新たな息吹をもたらしています。

顧客体験の向上、集客力向上、業務効率化など、デジタル化によるメリットは多岐にわたります。

特に、全国展開する大手の飲食チェーンはデジタル技術を先進的に導入しており、こうしたメリットを享受しているのです。

ですが、DXは決して大企業だけのものだけではありません。中小規模の酒場でも、ちょっとした工夫やアイデアで、大きな効果を得ることは可能です。

本章では、酒場におけるDXの最新事例について、顧客管理システム(CRM)の進化、オンライン予約システムの多様化、POSシステムの高機能化、AIを活用した人材不足解消、VR/ARを活用したエンターテイメントの提供、デジタルサイネージの進化に焦点を当て、具体的に解説していきます。

これらの事例は、中小規模の酒場にとっても参考になるものばかりです。ぜひこれらの事例を参考に、あなたの酒場に合ったDXを導入し、新たな価値を創造してください。

顧客管理システム(CRM)の進化

これまでも飲食店にとって、顧客情報の管理は重要なタスクの一つでした。それぞれの好みやアレルギー、誕生日などを記録しておくことで、顧客に喜んでもらえるサービスを提供できるようになるためです。しかし、忙しい業務の合間に、顧客情報を丁寧に記録することは容易ではなく、記憶や感覚頼みの部分も少なくなかったのではないでしょうか。

この課題を解決するのが、進化した顧客管理システム(CRM)です。現代では、AIを活用した顧客分析機能が普及しており、顧客の来店履歴や注文履歴に加えて、SNSでの発信内容や属性情報などを分析することが可能になっています。こうした情報を簡単に収集・分析できることによって、顧客が喜ぶ、パーソナライズドされたサービス提供が可能になっているのです。

例えば、顧客の誕生日や記念日に合わせた特別なキャンペーンを自動配信したり、顧客の好みに合わせたメニューやドリンクを提案したりすることが可能です。

オンライン予約システムの多機能化

オンライン予約システムは、これまでも多くの飲食店が活用してきた仕組みですが、現在では24時間予約受付だけでなく、顧客の属性や利用シーンに合わせたプラン提案、事前決済機能などを搭載するものが増えています。

具体的には、カップル向けの個室プランや女子会向けの飲み放題プランなどを提案したり、予約時に誕生日ケーキやサプライズ演出をオプションとして選択できるようにしたりすることができます。オンライン予約システムは、「気軽に席を確保する」だけの仕組みではなく、「当日の顧客体験を向上させる」ための、店と顧客とのコミュニケーションツールへと変化しているのです。

POSシステムの高機能化

POSシステムもすでに普及しているものですが、近年では従来の売上管理や在庫管理の機能に加えて、顧客分析や従業員の勤怠管理機能などを搭載するものが増えています。また、モバイルPOSの普及により、テーブルでの注文受付や会計がスムーズに行えるようになりました。これにより、注文や会計を効率化することができます。

高機能なPOSを活用することで、時間帯別の売上データを分析し、混雑時の人員配置に役立てたり、従業員のシフト管理や給与計算を自動化したりすることも可能になりました。これは経営の合理化という観点からも非常に有益な施策です。

AIを活用した人材不足解消策の進化

AIを活用した人材不足解消策は、単に接客やシフト管理を効率化するだけでなく、間接的に顧客の感情分析やマーケティングにも活用されています。

例えば、AIチャットボットで顧客からの定型的な問い合わせに対応すれば、従業員はより複雑な接客業務に専念できるようになります。また、AIがSNSでの口コミを分析し、店舗の改善点を見つけたりすることも可能です。これにより、顧客の不満を未然に防ぎ、従業員が対応すべきクレームやトラブルを減らすことができるため、結果として従業員の負担が軽減され、限られた人材をより生産的に活用することにつながります。

これらのAI活用は、顧客体験の向上と業務効率化の両面から、間接的に人材不足を解消する有効な手段と言えるでしょう。

デジタルサイネージの進化

デジタルサイネージは、単にメニューを表示したりイベントを告知したりするだけでなく、インタラクティブなコンテンツやリアルタイム情報配信に活用されています。酒場では、店頭に設置することで集客ツールとして機能し、店内に設置することで顧客体験を向上させる役割を担うようになりました。

例えば、タッチパネル式のデジタルサイネージを活用し、おすすめメニューや季節限定のドリンクを写真や動画付きで魅力的に表示する。あるいは、SNSと連携することで、来店客が「#(ハッシュタグ)」をつけて投稿した写真やコメントをリアルタイムで表示し、店内を盛り上げるエンターテイメントとして活用することもできます。

これにより、単なる情報提供に留まらず、顧客とのコミュニケーションを創出し、滞在時間をより楽しいものに変える効果が期待できます。

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情報提供元: DXportal
記事名:「 進化する夜の街!酒場DXで生まれる新たなエンターテイメント