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グリセリンは非常に多くのスキンケアコスメで使用されている成分で、多価アルコールというアルコールの一種。
アルコールとはいっても、お酒に入っているアルコールのような「揮発して水分を蒸発させる」性質はほとんどなく、水を掴んで肌にとどまらせる作用がある事から高い保湿効果を発揮するため、代表的な保湿成分としてコスメに使用されています。
また、保湿以外でも水分と混ざる事で発熱するという温感作用がある事から、塗ると温まる系のコスメなどにも使用されていたり、40%以上の濃度で使用すると防腐剤を使用しなくても一定の防腐効果が得られる事から、防腐剤フリーとして販売されているコスメの基材としてもよく用いられます。
このようにスキンケアコスメの成分として非常に有用な成分がグリセリンなのです。
また、肌に優しいシンプルな手作りコスメを作ろうとした事がある方の多くは、グリセリンと精製水を混ぜるという経験が一度はあるのではないでしょうか。
グリセリンはその高い保湿効果に加え、薬局などで非常に安価で手に入れやすく、肌への刺激も少ない事から手作りコスメなどでも人気なのです。
では、いったいなぜそんな有用で安全なはずのグリセリンを避けた「グリセリンフリー」商品が一つのトレンドになっているのでしょうか。
2009年に、サティス製薬が行った研究で、化粧品に使用されている保湿成分それぞれが、アクネ菌(ニキビ菌)の餌になっているかどうか(資化性がどの程度か)というデータが公開されました。
その結果、様々な保湿剤の中でグリセリンは特にアクネ菌の餌になりやすく、増殖させやすいという結果が出た事から、グリセリンがアクネ菌を増殖させる可能性があるといわれているのです。
そもそも、グリセリンは元々人の肌にも存在する成分で、アクネ菌を含む皮膚の常在菌が皮脂などを分解した際にできる中性脂肪の一種ですから、肌への刺激が少なく高い保湿作用がある一方で、菌の栄養になるという事は仕方ないのかもしれません。
そして、もう一つグリセリンが悪影響といわれているのは、一部でグリセリンを使うと角栓ができやすくなり、毛穴が詰まりやすくなるといわれているためです。
ただ、これは正式な研究報告なども見つからず、グリセリンフリーの商品に変えたら角栓がなくなりニキビも出来なくなったため、経験則としてグリセリン=角栓の原因と考えられているというのが実情のようです。
正式なデータが無いので、本当にグリセリンが角栓を作るかどうかについての真偽は不明ですが、グリセリンは保湿成分の中でもややべたつき感がある成分のため、感覚的に「毛穴が詰まりそう」と思いやすい点や、グリセリンがニキビ菌の増殖に繋がるという報告から、グリセリン=ニキビを誘発=毛穴を詰まらせるという連想が大きな要因なのではないでしょうか。
また、そもそもグリセリンはコスメの基本成分といっても過言ではないくらいに使用されているので、グリセリンフリーとわざわざ銘打っている商品は、ニキビの要因となる毛穴の詰まりなどに最大限配慮している商品である事が推測できます。
つまり、グリセリンが入っていないコスメだから角栓ができなくなったという事ではなく、グリセリンフリーを一つの売りにしている「角栓ができにくい」処方のコスメだから角栓ができなくなったという構図も大きいのではないでしょうか。
グリセリンフリーの商品を使用する事自体は肌に合わせて選べていればとても良い事だと思いますが、グリセリンを使用していても角栓ができにくいノンコメドジェニックな処方のコスメなどは沢山ありますので、あまりグリセリンを危険視しすぎない方が、より自身の肌質にあったコスメを選びやすいのではないかと思います。
グリセリンフリーを推奨する情報の多くは、グリセリンをやめたら角栓がなくなったという話とセットで語られているようです。
もちろん、選んだコスメが肌に合って悩みが解消されたなら、それがベストである事は間違いありません。
しかし、前述の通りグリセリンは非常に多くのコスメに配合されているため、これを毛嫌いしてしまうと、もし肌質に最適なスキンケアコスメがあったとしても、グリセリンが入っているというだけで使用機会を逃してしまい、美肌を手に入れるチャンスが遠のいてしまうかもしれません。
グリセリンがはいっていても、角栓の原因となりにくい事がしっかり検証されている「ノンコメドジェニック」なコスメなども増えてきていますので、角栓が気になるならむしろこちらを気にしてあげた方が、肌に合ったコスメが見つけやすくなるのではないでしょうか。