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成長因子は、英語でグロスファクター(Growth Factor)。日本語はこの直訳ですね。
「成長〇〇」というと、成長ホルモンを思い浮かべる方も多いと思いますが、成長ホルモンとは別物です。
成長因子と一口に言っても色々な種類があり、代表的なものは「EGF」や「FGF」「IGF」など。大体共通して「なんとかGF」という形の名称になっています。
成長因子の主な役割は、細胞の活動を促す事。
細胞にはそれぞれ成長因子と結合するための「受容体(レセプター)」という場所があって、そこに成長因子がくっつくと、細胞が色々な活動を行います。
具体的にどんな働きがおこるかというと、一つ目の例がEGFという成長因子が、表皮細胞の向上である「基底層」部分の細胞にくっついて発生するもの。
私たちの肌は「基底層」という部分の細胞によって作られ、部位にもよりますが大体1か月程度の期間でターンオーバーをしているというのはご存知かと思いますが、このターンオーバーを引き起こすのが、EGFという成長因子なのです。
基底層の細胞は常に新しい細胞を作り続けているわけではなく、EGFを受け取る事で細胞を作り始め、肌細胞の入れ替えを行っています。
つまり、体内で作られるEGFが少なくなるほど肌のターンオーバーは遅くなり、健康的な肌から遠ざかっていく事となります。
FGFは、日本語で線維芽細胞成長因子と呼ばれるもの。
線維芽細胞といえば、美容でなじみ深い所でいえば真皮の中にある「コラーゲン」のような弾力繊維組織を作る細胞ですね。
FGFが線維芽細胞にあるFGF受容体にくっつくと、細胞はコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸など真皮の弾力を保つ成分が作られていきます。逆に言えば、FGFが無いとこうした弾力性分が作られなくなっていくため、シワやたるみといったエイジングサインが発生してきます。
成長因子の中でも幅広い働きをするものがIGFと呼ばれるもので、これは日本語でインシュリン様成長因子というもの。
インシュリンと聞くと糖尿病を思い浮かべる方も多いと思いますが、インシュリンは体の中にある様々な細胞がエネルギーを作り出すために非常に重要なホルモンで、このインシュリンにとても似た形をしている事からIGFとよびます。
インシュリンが様々な細胞に働きかけるように、IGFも色々な細胞に働きかける性質を持っていて、神経細胞や血管の細胞の新生を促すのもこのIGFの作用です。
また、美容にも健康にも重要な働きをもつ「成長ホルモン」の働きも、実は半分はこのIGFを介して行われるものですので、人体にとって非常に重要な役割をもっています。
美容面としては、IGFは細胞のダメージを回復させるなどの作用により、EGFやFGFの効果を引き上げるという働きもあるため、他のものと合わせて是非利用したい成分です。
以上のように、各成長因子は美肌と大きな関わりがあるのですが、そもそも成長因子は体内のどこから作られるのでしょうか。
なんとなく、成長ホルモンと同じように「脳」で作られて体の各部位に送られていると思っている方も多いかと思いますが、実は成長因子は脳ではなく、体の様々な部分で作られています。
例えば、筋肉。
筋肉というと、単純に体を動かすためのパーツと思いがちですが、実は最近の研究で筋肉は体の成長を促す様々な物質を作る工場としての働きがある事も分かっています。その作られるものの1つが成長因子です。
そのため、筋肉が衰えると成長因子などの分泌も減少し、体の老化が早まる一方、トレーニングなどで筋肉量を維持していると、体が若々しく保たれやすくなります。
この働きは特に太ももの大腿四頭筋あたりが強いと言われています。
それ以外でも、実は新しい細胞が作られる時、様々な成長因子も一緒に作られる事が分かっています。
どういう事かというと、例えば私たちの体についている脂肪は、脂肪細胞の元となる「幹細胞」が分裂する事で作られるのですが、この細胞分裂の際に、新しい細胞と一緒に様々な成長因子も作られるのです。
何故このような事がおこるかというと、新しくできた細胞が、周囲の血管などと結合して生き残る事ができるように、新しい細胞を作ると同時に周囲の細胞の成長を促す必要があるために引き起こされていると推測されます。
ちなみに、この性質を利用して作られているものが、昨今よく話題になる「幹細胞コスメ」です。
細胞分裂は人間の体の中ではいたるところで行われていますので、つまり成長因子は体中のいたるところで作られている事になります。
しかし、紫外線などのダメージやストレスなどによって細胞がダメージを受けると、その細胞は細胞分裂ができなくなって死滅していってしまいますよね。
こうした事が原因で、私たちの体内で作られる成長因子の量は、加齢とともに徐々に減少していきます。
これが肌などにエイジングサインがあらわれる大きな原因の1つです。
体質や生活環境による差は大きいのですが、例えばEGFやFGFの体内合成量は30代を迎えるあたりから急激に減少していき、これがいわゆる「お肌の曲がり角」の原因となっています。
この疑問を解消してくれる1つの研究報告が、アメリカのコーエン博士らによって行われた実験です。
実験では30~60代の12名に対し、EGFが0.1ppm(=0.00001%)配合されたクリームと、EGFが含まれないクリームで肌細胞の増加度合いを計測したところ、60日間で平均で約280%、EGFが含まれるクリームを塗った場所の方が肌細胞増加が多かったとなっています。
EGFが細胞に働きかけるためには、表皮の最下層である基底層の細胞にくっつく必要があり、通常であれば肌のバリア機能に阻まれ、効果を発揮する事が難しいと考えられるのですが、この研究結果をみる限りではEGFは肌表面に塗布してもしっかりと効果を発揮するという事がいえそうです。
コーエン博士の研究報告では、EGFによる肌細胞増加以外に、FGFによる真皮内のコラーゲン増殖についての内容もあります。
この研究でも、EGFの研究と同様30~60代の12名を対象とし、FGFが0.1ppmのクリームと、EGFが0.1ppmのクリーム、そしてEGFとFGFがそれぞれ0.1ppm入ったクリームと、FGFもEGFも入っていないクリームの4種類を塗って、60日間の経過を調査しています。
結果として、FGFが配合されたクリームを塗った箇所では真皮内のコラーゲン量を図る指標の1つである「ヒドロキシプロリン」が、EGFもFGFも含まれないクリームを塗った箇所と比べて1.45倍に増加したという事で、FGFを利用する事で真皮内のコラーゲン量を増やせる事が示唆されています。
更に、FGFとEGFの両方が配合されたクリームではヒドロキシプロリンの量が平均1.88倍になったという結果もあり、FGFは単体ではなく、EGFと組み合わせる事でより高い効果が発揮できる可能性が高いという事も示されています。
(ちなみにEGF単体のクリームでは1.1倍程度とほぼ変化が無く、FGFの存在が重要と読み取れる)
EGFやFGFといった成長因子をコスメとして利用しても、表皮のバリア機能によって浸透が妨げられるため、効果は期待できないという意見もありますが、以上のような研究報告を見る限りでは、表面に塗る事でもEGFやFGFの作用はそれなりに発揮される事が分かっており、成長因子が配合されたコスメによるエイジングケアの効果が期待できるものといえそうです。
ここまでEGFやFGFといった成長因子の良い面をご紹介しましたが、一方で肌に直接働きかけるような成分って、なんだか怖いという印象を持つ方も多いのではないでしょうか。
実は、成長因子の中でも特にEGFなどは、その作用が「医療分野」に該当するものとされ、コスメに配合する事を禁止する動きがちょっと前にありました。
この動きは日本EGF協会など各方面の働きもあって、現在の所はEGFのコスメ配合を特に規制するような形にはなっていませんが、それだけ強い作用が想定される成分でもあるわけです。
結論から言ってしまえば、EGFやFGFの「悪影響」については、今のところ絶対に問題ないとは言えません。
美容医療分野では、FGF注射がちょっと前から流行ったものの、FGFによって強制的に線維芽細胞の働きなどを促進する事は、細胞の疲弊に繋がって長期的にみれば肌老化を早めるといった意見も出ているなど、賛否両論がある状態です。
結局のところ、成長因子を美容分野で活用しはじめてからまだ日が浅く、長期的に使い続けた場合に悪影響がでるのか、出ないのかは、正直なところまだ誰にも分らないのです。
そんな「危険かもしれない」という可能性があるものを使って大丈夫なのかという意見ももちろんありますが、それを言い出したら、今殆どの女性が受けている「永久脱毛」や、視力回復の「レーシック手術」など、長期的にみれば危険かもしれないものというのは数多く存在している世の中。
結局の所、ある程度の将来的リスクがある事を認識した上で、今現在の悩み解消を優先するかどうか、自分で判断するしか無いといえるのではないでしょうか。
シワなどのエイジングトラブル解消にとても大きな期待がもてる成長因子。
今後、EGFやFGFといった成長因子が医薬品扱いとなりコスメへの配合ができなくなる事などもあるかもしれませんが、現在ではまだコスメとして気軽に手に入れる事も可能ですので、興味がある方は試してみてはいかがでしょうか。