1月21~24日は「款冬華さく(ふきのはなさく)」。一年でもっとも寒くなるこの時季、ふきのとうが雪の中からちょこんと顔をのぞかせる、今回の候はそんなふきのとうが芽吹く頃を指しています。



ふきのとうの花言葉は「待望」。まさに雪の早春に芽吹く、ふきのとうにぴったりですね。今日はふきのとうのシーズンを彩る"冬の花"こと、雪のお話です。



 

七十二候とは?

時間に追われて生きることに疲れたら、ひと休みしませんか? 流れゆく季節の「気配」や「きざし」を感じて、自然とつながりましょう。自然はすべての人に贈られた「宝物」。季節を感じる暮らしは、あなたの心を癒し、元気にしてくれるでしょう。



季節は「春夏秋冬」の4つだけではありません。日本には旧暦で72もの豊かな季節があります。およそ15日ごとに「立夏(りっか)」「小満(しょうまん)」と、季節の名前がつけられた「二十四節気」。それをさらに5日ごとに区切ったのが「七十二候」です。



「蛙始めて鳴く(かえるはじめてなく)」「蚯蚓出ずる(みみずいずる)」……七十二候の呼び名は、まるでひと言で書かれた日記のよう。そこに込められた思いに耳を澄ませてみると、聴こえてくるさまざまな声がありますよ。







 

天から降る花





雪には、花にまつわる多くの呼び名があることをご存知ですか?



「天花(てんか)」「瑞花(ずいか)」「風花(かざはな)」「銀花(ぎんか)」「寒花(かんか)」「牡丹雪(ぼたんゆき)」などなど、雪は昔から花にたとえられてきました。



まさに、雪は冬に咲く花ですね。中でも私がいちばん好きな呼び名は、「不香の花(ふきょうのはな)」。天から降る雪は、"香りのない花"という意味から付けられた呼び名です。



雪に付けられた数多くの呼び名からも、いにしえの人たちが、雪からさまざまな美しさを感じ取っていたことがわかりますね。雪が舞い降りてきたら、少しだけ立ち止まり、味わうように眺めてみませんか? きっと、あわただしい日常から少しだけ離れることができ、真っ白な雪に心が癒されるでしょう。



 

冬の花を詠む心に見えるのは、春への「待望」





どんなに寒くとも、冬のあとにやってくるのは春。日一日と春が近づいてくる、そう思うと、空から舞い落ちる雪も桜の花びらのように見えるのは私だけでしょうか?



『古今和歌集』には、そんな気持ちを詠った美しい和歌が残されています。

「冬ながら空より花の散りくるは雲のあなたは春にやあるらむ」清原深養父(きよはらのふかやぶ)



〜冬なのに空から花が降ってくるのは、雲の向こうはもう春なのだろうか。〜

「花の散りくる」という表現は、雪を花びらに見立てて生まれたのですね。



冬の中に息づくかすかな春の胎動を感じて、和歌を詠んだいにしえの人々の心にあったのは、ふきのとうの花言葉と同じ「待望」だったのでしょう。花咲く春を待つゆえに、雪を花のように美しく捉えることも、冬の楽しみ方のひとつかも知れませんね。



 



美しい幾何学模様を描く雪の結晶は、まるで万華鏡のよう。結晶の基本の形は六角形なので、雪の結晶は別名、「六花(むつのはな)」とも呼ばれるそうです。



そんな冬の花が見られるのも、あと少しの間。そう思うと雪が降るのも、ちょっぴり楽しみになってきませんか?



 

【参考】『くらしを楽しむ七十二候』広田千悦子/泰文堂、『美しい暦のことば』山下景子/インデックス・コミュニケーションズ、『古今和歌集 新古今和歌集』小学館



情報提供元: ANGIE
記事名:「 日常に癒しを見出す。雪の美しさを堪能するための話【1月21〜24日】