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ビジネス面でも注目されており、ミュージシャンのMVや観光プロモーション用のPVなどで活用されている。
しかし実際、目にする多くのコンテンツは360°動画を撮影しただけ、というものが散見される。
これは話題性が先走ってしまった事も一つの原因だが、その本質は360°VRコンテンツの制作業界の中に、VRの特性を活かした見せ方ができる”演出家”が少ないからではないだろうか?
今回は、VR黎明期から撮影・編集に携わり、今日までに多数の人気VRコンテンツを世に贈り出しているネストビジュアル株式会社の代表取締役である植山 耕成氏に参入のキッカケと今後の展望を、ディレクターである和田 健太郎氏、山口 翔氏には過去、手掛けたプロジェクト事例を引き合いに出しながら、それぞれの考える360°VRコンテンツの”演出”について、お話を伺ってきた。
大学卒業後、約20年以上、TV-CMのプロデュースに勤しんできました。
さまざまなクライン・代理店、そしてスタッフの方々とお付き合いし、数百本のCM制作を作り続けています。チーム感を大切にしながらクリエイティブに重きを置いたプロデュースをしてきたつもりです。
前職の在職中、マネジメントに興味を持ち、大学院に再入学し経営を学び、ポストプロやCGスタジオのマネジメントも経験し、企業改革の実践を積んできました。
3年前に起業し、実写撮影、CG、プログラミング、そして企画・演出の各チームで、どのようなデジタルコンテンツの制作にも一貫して対応できるようなチームづくりをしてきました。
コンテンツとデジタルの融合した高いレベルの作品を制作し、革新的な企業となるべく精進しています。
日本大学芸術学部映像学科監督コース出身。
広告・MVを中心にディレクションを行いながら、デジタルサイネージ・VRなど既存の映像の枠にとらわれない自由かつ論理的な演出が特長。好きな言葉は「臥薪嘗胆」。
ディレクター/静岡文化芸術大学非常勤講師。
CGや実写の映像作品をベースに、プランニング、アートディレクション、メディアアートなどさまざまな仕事を手がける。デジタルを駆使し、平面や立体の垣根を超えた新たな表現を模索中。
—- 360°VRコンテンツ事業に参入したキッカケを教えてください。
植山氏:ネストビジュアル㈱は、2014年3月に設立したデジタルコンテンツの制作会社です。
多くのスタッフが、TV-CMに携わってきたわけですが、今後は実写やCGだけでなく、様々なデジタル技術を融合させた映像表現が増え、それに対して、我々がきちんと取り組んでいきたいと思い起業しました。未来の映像表現のLabを作りたかった訳です。
そのような中で、360°の全天球映像を見て衝撃を受けたことを覚えています。
我々が今までつくっていた16:9の映像と比べると、球体の中にいる自分、そしてその中で様々なインタラクションができるのです。これは映像革命としか言いようがありません。
我々が現状行っている、プロジェクションマッピングや体験型のインタラクティブシステムとの親和性もありますし、それぞれがつながり合う新しい表現が生まれてくると考えています。
—- 続いて、事例を元にお話伺っていきたいのですが、まずは「じゃらんVR」について、制作に至った経緯を教えてください。
和田氏:旅行離れの進む若者に「旅っていいな」と感じてもらい旅行サイトを利用してもらうためのきっかけとして、若者に人気のアイドルとの温泉旅行を疑似体験ができるVRとして制作しました。
—- 撮影体制について教えてください。
和田氏:機材はkeymission360×3、スタビライザー。メンバーは実際の撮影が3名。録音者が1名。制作5名のオンライン作業者1名、計10名体制で制作し、期間は14日程度でした。
—- 特にこだわったのは、どのようなポイントでしょうか?
和田氏:全般的にVRであればすごい・楽しいという、新しい技術を手放しで称賛する時期はとっくに過ぎ去ったので、私が携わった企画は「カメラが動く=映像表現の幅が広がる」ということにこだわっています。
じゃらんで言えば、よくあるアイドルのVRモノは、カメラ・目線の立ち位置がよく分からないものが多かったので(※1)、演者とカメラの関係性を大切に、キャスト4人と温泉旅行にきた友達目線と設定しました。
(※1.アイドルが円になりその真ん中にカメラがおかれバラバラと話しかけられる。何かをしているアイドルを横から撮影しているなど、、、)
普段みられないアイドルの素顔を感じられるよう、キャスト4人にはある程度自由に演技してもらいカメラもそれに合わせて臨機応変に動き撮影しました。
また露出先がスマホだったので、スマホで見た際に、話しかけてくるアイドルの顔が小さすぎずにも、大きすぎずにもならないよう、程よい距離感を意識して撮影しました。スマホであれば360°好きな場所を比較的自由に見られるので、どこを向いてもキャストの4人がいるような位置にカメラを配置・移動させ撮影しました。
—- 目指すべき演出を実現する過程で、障壁になったのはどのような所でしょうか?
和田氏:旅館の中を自由動くにあたり、段差や階段が多くカメラが非常に揺れてしまうことですね。
—- どのように解決したのでしょうか?
和田氏:カメラマンと既存のジンバルを改良、360°撮影仕様のスタビライザーを開発し、段差を越える際も揺れないように撮影できるようになりました。
関連記事:乃木坂46と一緒にバーチャル温泉旅に行こう!「じゃらんVR乃木坂温泉」 を公開
—- ありがとうございます。次は山口さんが担当された「ほぼドドンパ」の制作経緯についてお聞かせください。
山口氏:ドドンパが7月のリニューアルで、運休するため、その間VRで来場者に体験していただくために制作されました。
また、こういった実際のジェットコースターが怖くて乗れなくても「VRなら体験してみようかな」という方や、雨天のアトラクション休止時にもVRでの体験が有効でした。
—- 撮影体制について教えてください。
山口氏:撮影・リグの構築に2名で、機材はGopro+Entaniya×2を使用しました。ステッチ、カラコレ、CG作成など含め編集に2ヶ月ほどかかりました。
—- 特にこだわったのは、どのようなポイントでしょうか?
山口氏:VRではアトラクションの強力なGや浮遊感を、実際に乗った時と全く同じように感じることはできないので、視覚的にアトラクションとしてどのように楽しむことができるか、逆にVRでしか体験できないことは何かという点を考えました。
体験を楽しむため、隣には「絶叫戦隊ハイランダー」のレッドさんに乗っていただだいています。レッドさんが話しかけてくる点もVRでしかできない体験です。
コースレイアウトやドドンパの売りでもある最高速度(172km)などの情報もグラフィックとして映像の中に配置しています。
また、座席を動かすことはできませんでしたが、正面から風を当てることで走行中の疾走感を肌で感じることもできるようになっています。
—- 目指すべき演出を実現する過程で、障壁になったのはどのような所でしょうか?
山口氏:グラフィックを作成する際に、歪みを考慮した(VR上で正しく見える)作り方をする必要がありました。
これに関してはプラグインである程度対応できましたが、実写の場合でも編集やポスプロの段階で三次元的な考え方が必要でした。
また、撮影したドドンパのカーブやダイナミックな動きは、VR酔いの原因になったので、それらを軽減するために試行錯誤を繰り返しました。
—- どのように解決されたのでしょうか?
山口氏:酔いは揺れが大きく関係するので、とにかくライドにしっかりカメラを固定することを優先しました。
編集では、水平線を維持するよう動画を加工しました。自分の角度は一定で、傾いているのはコース側とすることで、視線と体の傾きの差を少なくしています。
また、走行中にグラフィックを多く配置しましたが、映像を賑やかにするだけでなく、これらもVR酔いの抑制にもなっています。
関連記事:VRで日本最速絶叫コースター「ドドンパ」を体験!!富士急ハイランドVRアトラクション「ほぼドドンパ」をOPEN!?
—- 最後にMTVの事例についてお伺いします。まず、制作経緯を教えてください。
山口氏:「MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN」の受賞者に向けての招待状として制作しました。
これはクロスデバイスさんが授賞式を360°カメラで撮影し、ライブ配信した、MTVとサムスン電子ジャパン様とのプロジェクトの一環となります。
受賞者にはVRのヘッドセットと動画一式が送られ、このVR動画の中で自分が受賞者であることが伝えられます。
—- 撮影体制について教えてください。
山口氏:CG制作で1ヶ月程度かかりました。
—- 特にこだわったのは、どのようなポイントでしょうか?
山口氏:ゲームやアニメーション、PVなどのVRは多くありますが、モーショングラフィックのVRはまだあまりなく、実験的な映像になりました。
一般的なモーショングラフィックと違い、アングルを切ったりカット割りの考え方が’360°の中では異なるので、その中でタイミングやレイアウトの気持ち良さ、映像の心地よさを追求しました。
—- 目指すべき演出を実現する過程で、障壁になったのはどのような所でしょうか?
山口氏:MTVに関しては歴代のロゴを見せたいとの要望があり、360度の中でどのようにロゴを見せられるか、という視点誘導が大きな課題でした。
VRではいろんなところに情報がありすぎると、体験者がどこを見ていいかわからなくなるので、体験者が自然と見てしまうような演出や空間の作り方が必要でした。
—- どのように解決されたのでしょうか?
山口氏:グラフィックで作られたトンネル内を前進し続けることで、360度の中での方向性を持たせました。ロゴはバラバラの状態から正面で一度形になり、その後またバラバラになって後ろへ流れていきます。
トンネル内での前後を意図的に作ることで、体験者が意識しないでも方向性を認識し、自然と正面に見てもらえるような作りになっています。
—- これらの撮影経験を活かせる応用可能な分野について教えてください。
山口氏:VR酔いの軽減はどのような動画でも問題になるので、ドドンパのような激しい動きでの酔い軽減テクニックは応用がきくと思います。
個人差も大きいですが、今回のノウハウで酔いをある程度コントロールできてきたように思います。
また、グラフィックやCGをVR上で立体的に配置することは、これから主流になるであろう「実写での立体視VR」でのVFXにも役に立つと思います。
関連記事:日本初「MTV VMAJ 2016 -THE PARTY!!-」の様子を 「Gear VR」向けにライブ配信!
—- ありがとうございます。最後に御社の今後の展望についてお聞かせください。
植山氏:現状、イベントやプロモーション用の360°動画や富士急さんのような遊園地や施設で使う360°動画の制作が多いのですが、今後はオリジナル開発も進めていきたいですし、インタラクティブ性の高い作品づくりもしていきたいと思っています。
また、益々難易度の高い作品が求められれば、実写、CG、プログラミング、企画・演出のチームが社内にある弊社の強みが発揮されると思っておりますので、クライアントやコンシューマーのVRに対する高い要求を期待しています。
ぜひやってみたいことは、スポーツや舞台、そしてライブでの高品質なカメラ機材での立体視撮影です。立体視は、VRの価値を向上させるものと考えていますし、何よりもマネタイズできるものだと確信しています。自分の目の前でスポーツが繰り広げられ、アーティストが歌い、役者が演技するという、新しい刺激的な体験をできるはずです。
既に “VR映像”だけで喜ばれる時代は過ぎており、TVや映画と同じく “演出”が求められるのは間違いない。
その中でいかにVRの特性を理解し、映像に落とし込めるかが、次の360°VRのステップになるだろう。
ただ、撮影しただけでない付加価値を360°VR映像に与えられるか、まさにVR時代の “演出家”が求められる。
そんな”VR演出家”を多数、抱えるネストビジュアル。もし、VRコンテンツの制作でお困りであれば、一度相談してみてはいかがだろうか?
360°VR動画の企画・撮影・編集・CGはもちろん、アプリ開発までワンストップで対応できる360°VRにおける制作プロダクション。
CMや映画など、各エンターテイメント分野で培った高いスキルを元に、クライアントニーズに答えるクリエイティブを制作している。
コーポレートサイト:https://www.nest-vis.com/
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