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VRヘッドセットが一般に広まり始めたことで、VRコンテンツの開発を行うデベロッパーの数も増加した。現在では、大手のゲーム会社やソフトウェア企業だけでなく、世界中のインディーズデベロッパーもVRコンテンツを手がけるようになっている。
様々なバックグラウンドを持つデベロッパーがVRコンテンツの開発に取り組んでいるが、デベロッパーの属性には偏りもある。ヨーロッパ諸国やアメリカ、そして中国や韓国のようなITに力を入れている国には多くのデベロッパーがいる。また、彼らの年齢は比較的若いようだ。
加えて、女性の参加機会が少ないとも言われている。VRLAとGirls Make VRは、このVRにおけるジェンダーギャップを埋めようと動いている。
LAコンベンションセンターは、VRLAのイベント会場として使われている。
イベントではVR関連メーカーの製品やパーツが展示され、VRの将来に対する来場者の期待を高める。あるいは、MRを利用したイースターエッグハントのようなユーザ向けのイベントが開催されることもある。
そんなLAコンベンションセンターの会議室は、10代の少女たちがVRコンテンツを開発するための作業スペースとしての役割も持つ。VR開発に適した大型のコンピュータが用意され、彼女たちがアイデアを形にするための教育プログラムが提供されている。
Georgia Van Cuylenburgは、誰もがこの楽しい世界で遊べることがとても大切だと語る。VRに携わるのは男性ばかりでなく、女性も参加できる環境が整えられるべきだろう。
Van Cuylenbergは、VRLAを通して設立されたGirls Make VRの創設メンバーであり、13歳から18歳の少女たちにVR開発の方法を伝えることを目指している。Girls Make VRは昨年夏のイベントで設立され、現在まで順調に活動を続けている。
今回の講座には二人の男性も生徒として参加しているが、本来は女性をターゲットとしてデザインされたプログラムだ。
Girls Make VRは、いまだ形成途中にあるVRの世界へ男性と女声が平等に関われる環境を整えることを目標としている。野心的な内容ではあるが、夢物語ということもなさそうだ。
VR自体は若い業界だ。しかし、ジェンダーギャップの存在が知られている他の業界・分野とも関連がある。テクノロジー、映画、テレビゲームといった分野はジェンダーギャップの存在が指摘されていると同時に、VRとの繋がりが深い。
LAタイムズによれば、昨年時点でもテクノロジー分野で働く女性の収入は男性に比べてはるかに少ない。平均すると、男性の方が28.3%多く稼いでいるという。
もちろんテクノロジー企業で大成功する女性もいるが、傾向としては男性にとって生きやすい業界になっていると言えるだろう。業界への適正に性差があることを考慮しても、女性のアイデアが評価される環境・土壌が整っていないことが危惧される。
映画やテレビゲームのようなエンターテイメントの世界では、作品に登場する女性の扱いが批判されることも多い。これには業界がこれまでに育ててきたノウハウや、現在制作に携わっている人々の意識が影響している。
VR映画やVRゲームはこれらの特徴を引き継いだ存在であり、独立した存在でもある。VRにおける男女の平等は、VRだけに留まらないかもしれない。従来の映画・テレビゲームに遡る形でジェンダーギャップを埋め、VRが社会に広まるに従って他の分野にも波及することが考えられる。
VRLAのプロデューサーの一人、Christian FalstrupはGirls Make VRプログラムが彼らにとって「最初」だという。彼らはまずこの教育プログラムへの取り組みを始め、どのような変化が起きるのかに注目している。
Girls Make VRに対しては、多くの企業がサポートを申し出ている。UnityやOculusを含むVR関連企業が講座の開催に協力している。参加希望者からの申し込みの数も多く、今回のセッションは締め切り前に定員に達したという。
Van Cuylenbergは、講座を週一回開催にすることを目指している。継続的に学習の機会を設けることで、参加した学生がVRでの作業に関する一連の知識と技術を身につけられるようにするためだ。
講座では、現在VRコンテンツを作成するゲームエンジンとしてUnityが学ばれている。講師役は、VR/ARのエバンジェリストとしてUnityで働くSarah Stumboだ。
25歳の彼女はVRに関わる前は大学で電気工学を学んでいた。女性のためのゲームワークショップでUnityに触れ、最終的に現在の職に就いた彼女はGirls Make VRの講師として適任と言えるだろう。
2時間あまりをかけて、彼女はUnityの基礎について参加した学生たちに伝える。
参加者たちはUnityのストアで提供される素材を用いて、Viking Quest VRというプロジェクトに取り組む。あらかじめ用意されたパーツをマウス操作で組み合わせ、Mini Viking Ericと名付けられたキャラクターを取り巻く世界を構築する。
Ericには、装備する武器や探索すべき世界が用意される。参加者は彼が地面を突き抜けたり、倒れたりせずにきちんとVR空間を動けるようなプログラムを作っていく。
現在のところ、Unityの仕組みを学ぶことに重点が置かれている。将来は素材となるパーツそのものを作成する方法やアニメーションの作成、コーディングについてもっと詳しく学ぶことになるかもしれない。
Stumboは実際の授業を終えた後に語っている。こういった若い世代を対象にした教育プログラムは、さらに普及するという。
「ここで教えた内容は、本当に『さわり』でしかありません。基礎に過ぎませんが、幅広いベースでもあります。
私は、Unityを使う才能ある高校生、ときには中学生が制作した作品から強いインスピレーションを受けることがあります。彼らは未来を築くことになる世代です」
Stumboが指摘するように、VRや他のテクノロジーの未来を支えていくのはテクノロジーとともに育ってきた若い世代になるだろう。Girls Make VRプログラムの他にも、この世代を対象としたVR開発やプログラミングのワークショップは行われている。
女性を対象としているのもこのプログラムの特徴だが、こちらも同様だ。女性限定のコンベンションが開催されるなど、女性デベロッパーを育てようという動きは存在している。
アメリカでは既にVRユーザの40%が女性という調査結果もあり、今後もVRを利用する女性は多くなると考えられる。彼女たちに受け入れられやすいコンテンツを作るのは、同じ女性のデベロッパーになるのかもしれない。
こうした動きは、純粋にVR開発に取り組むデベロッパーの数を増やす以上の意味を持つ。コンテンツの多様性は、VRの普及と発展を助ける力になるに違いない。
参照元サイト名:LA Weekly
URL:http://www.laweekly.com/arts/vrla-program-girls-make-vr-aims-to-close-the-gender-gap-in-virtual-reality-before-it-widens-8136760
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