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なので、現在で最もバーチャルアイドルの定義にふさわしいのは、「初音ミク」だろう。
ただ、アイドル活動を行ってなくともバーチャルアイドルと呼ばれることがあり、広い意味ではアニメやゲームに登場する美少女キャラクター全般を意味していると捉えらえる。
しかし、広い意味の方だとアニメ・ゲーム・コミックの美少女キャラクター全員を紹介する…ということになりかねないため、ここでは狭い意味の方のバーチャルアイドルについて扱いたい。
「バーチャルアイドル」という概念がまだなかったころから、架空のキャラクターのアイドル化というのは存在してた。
たとえば現在もシリーズ作品が作られているアニメ「超時空要塞マクロス」シリーズの初代作品では、ヒロインとして登場するアイドル「リン・ミンメイ」の歌う楽曲が一般のアイドル歌謡として発売された。
また、1990年ごろにはゲームのヒロインになぞらえたアイドルというのも誕生している。
日本テレネットからリリースされていた美少女アクション「夢幻戦士ヴァリスII」においては、主人公の「優子」のイメージガールを募集する「セーラー服 優子オーディション」が実施。
日本ファルコムから今もリリースされる人気アクションRPG「イース」シリーズにおいては、「イース2」のヒロインである「リリア」のイメージガールを募集する「ミス・リリアコンテスト」が実施された。
これらは「ゲームのプロモーションの一種」「アイドルの売り出し方の一例」と見ることもできるが、3DCG技術が発展していない時代に、架空のキャラクターをなんとか現実に出現させようとする試み…ととることもできる。
また、1993年にはコナミがシューティングゲーム「ツインビー」のヒロインであるウィンビーをアイドル化させるという「ウィンビー国民的アイドル化計画」が行われた。
「ウィンビー国民的アイドル化計画」は現実のアイドルをあてがうのではなく、ゲーム内の美少女キャラクターをそのままアイドルとして売り出すというもので、公式に「バーチャルアイドル」という用語が使われている。
技術的に3DCGが実現されると、3DCGを使って架空のアイドルを作り出す、正しい意味での「バーチャルアイドル」が出現し始めた。
90年代なかばに、芸能プロダクションのホリプロに所属タレントとしてデビューしたバーチャルアイドルが「伊達杏子」だ。
ホリプロ設立35周年を記念し、株式会社ビジュアルサイエンス研究所との共同で開発。
当時は恋愛シミュレーションゲーム「ときめきメモリアル(=ときメモ)」がヒットした時期であり、「ときメモ」のヒロインである藤崎詩織が「バーチャルアイドル」として人気を集めていた時期。
つまり、「ウィンビー国民的アイドル化計画」を受けて「バーチャルアイドル」という概念が活性化しだした時期といえる。
ウィンビーや藤崎詩織は2Dグラフィックで描かれたキャラクターだが、「伊達杏子」は3DCGで作られている。
当時多くの予算をかけて作られたバーチャルアイドルだが、残念ながらそこまでヒットはしなかった…。
マンガ家であるくつぎけんいち氏が仕事のあいまに趣味として、3DCGソフト「Shade」で作り上げたバーチャルアイドルが「テライユキ」。
発表されたのは1998年。
ヤングジャンプへのグラビア掲載を皮切りに、企業キャンペーンやテレビ番組・CMへの出演、写真集、CD、ミュージックビデオ、ゲームソフト…などなど、幅広く活躍。
3DCGで描かれた黎明期のバーチャルアイドルとしては、最も成功したアイドルといえる。
ゲーム業界の風雲児として活躍した、ゲームクリエイター・飯野賢治氏。
飯野賢治氏の代表作「Dの食卓」は、主人公から背景まですべて3DCGで制作されたアドベンチャーゲーム。
主人公でありヒロインである「ローラ」は、タレント的な位置づけがなされており、「Dの食卓」のみならず、続編的なタイトルだが世界観は全く異なる「Dの食卓2」や「エネミーゼロ」といった作品でも主人公役で「出演」している。
自社のゲームのみならず、フジテレビの深夜番組においても司会進行役で出演してたことがあり、バーチャルアイドルの一例といっていいだろう。
1990年~2000年という3DCG技術の普及とともに一気に広まっていった「バーチャルアイドル」が、次に革新を起こしたのは2007年。
この年、今やバーチャルアイドルの代名詞となった「初音ミク」が登場した。
「初音ミク」は、ヤマハが開発した音声合成システム「VOCALOID」によって楽曲に歌声を合成することができるソフトウェア音源。
声だけで売り出すのではなく、キャラクターとしての性質を与えることで声にリアリティをもたらす…というコンセプトによって、ソフトウェア音源でありながらバーチャルアイドルとして売り出されている。
3DCG作成ツールの一般への普及や、インターネットでの動画再生サイトの普及といった時代背景もあいまって爆発的にヒット。
さらにはAR技術と組み合わせてのライブなども行われており、現役の人気バーチャルアイドルとして現在も活躍を続けている。
バーチャルアイドルは実体を持たない架空の存在だからこそ、90年代の3DCG技術や2000年代後半の音声合成技術や動画サイトなどといった技術発展に伴って進化・普及してきた。
このため、VR技術によってさらなる進化・発展が期待できそうだ。
特に、架空の存在を現実のように感じられるVR技術とバーチャルアイドルの相性はバツグンだ。
アーケードゲームとして生み出された「アイドルマスター」に登場するアイドル達も、れっきとしたバーチャルアイドルだ。
「アイドルマスター」はすでにプレイステーションVR(PSVR)向けに「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」としてリリースされており、これまではゲームの中か声優のライブとしてしか体験できなかったライブを、現実かのように体感することができる。
歌のリリースや写真集の発売など、アイドル的な活動を行っているわけではないため、狭い意味でのバーチャルアイドルとはいえないが、VR時代をけん引するヒロインといえるのが「サマーレッスン」の「宮本ひかり」。
「サマーレッスン」はPSVRのローンチタイトルとして話題をかっさらい、その後も定期的に追加コンテンツが配信されている。
ゲーム内の設定である「家庭教師と生徒」という構図を守る上では、今後「宮本ひかり」がアイドル化することは考えにくいが、もしかするとパラレルワールド的なコンテンツとして「宮本ひかり」がアイドルになった世界が味わえる追加コンテンツがリリースされるかもしれない…!?
今回の記事では、実体を持たないバーチャルアイドルについて触れたが、実は生身のアイドルやタレントも、バーチャル化しようとしている。
例えばセガのゲーム「龍が如く」シリーズでは、ビートたけし氏や藤原竜也氏をはじめ様々な実在の俳優・タレントが3DCGで描かれたキャラクターとして登場。
また、カプコンのゲーム「鬼武者2」では、既に故人となっていた俳優・松田優作氏を3DCGと音声技術を使って復活させ、主人公として活躍させている。
こうした例はゲームだけでなく映画においても存在し、たとえば「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」では、3DCGを活用することで、初代「スターウォーズ」のキャラクターを当時の姿のまま登場させ、新たな演技を行わせている。
またアダルトゲームにおいては、セクシー女優の3Dスキャンデータを活用する…といった事例も存在。
今後は、現実とバーチャルの垣根が崩れ、「元が生身の人間だろうと、架空の存在だろうとどうでもいい」といった時代がくるのかもしれない…!?
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