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同メディアは、2017年2月25日にアメリカ・ニューヨークで開催されたカンファレンス「Version2017」で実施されたパネル・ディスカッションについて報じた。
同カンファレンスが開催された目的は、「テクノロジーがもたらす未来社会への影響について討論する」だ。同カンファレンスの会場には、物理学者アインシュタインの言葉「リアリティとは、長続きする幻想のひとつに過ぎない」が掲げられていた。
テクノロジーをテーマとするカンファレンスだけに、出席したパネリストにはゲームデザイナー、NASA所属のエンジニア、さらにはHTCクリエイティブ・ラボのヴァイス・プレジデントDrew Bamfordがいた。
ただ、同カンファレンスを特異なものとしたのは、テック業界以外からもパネリストを招いたことだ。例えば、SF作家、社会科学の教授も招かれたのだ。
同カンファレンスは、「テクノロジーで何ができるか、あるいは作れるか」を討論するだけではなく、さらに一歩先を行って「その作られたものが社会にどのような影響を与えるか」について掘り下げることを目指しているため、パネリストをテック業界だけで固めなかったのだ。
同カンファレンスでは、「あなたと私、そして私たちが知っているすべてのことについて」と題されたパネル・ディスカッションが行われた(トップ画像参照)。
ディスカッションでは、作家兼ハーバード大学所属フェローのJudith Donath女史が、2010年にニューヨークタイムズ年間ベスト作品に選ばれたSF小説「スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー」を引用しながら、次のような問題提起をした。
同小説では、ヒトにかざすだけで、そのヒトの個人情報から性的魅力度といった測定が困難なコトまで全て数値化してAR表示するデバイスäppärats(アパラット)が登場する。そして、今日のARテクノロジーにも、潜在的にアパラットのようにプライバシーを裸にしてしまう危険性がある、と同女史は指摘したのである。
以上の主張を、同女史は以下の言葉でまとめてみせた。
プライバシーの問題をどのように考えるかによって、ARとVRの未来が変わってくるのです。
同女史は直接的な事例に言及していないが、VRテクノロジーに関してもプライバシーを危うくする危険性がある。
VRテクノロジーが適切に機能するためには、ユーザーをトラッキングすることが前提となる。つまり、ユーザーの一挙手一投足をトラッキングすることによって、ユーザーはバーチャルな世界でまるでリアルな世界にいるかのような没入感を味わえるのだ。
しかし、トラッキング技術が発達し、その精度が上がって利用範囲も広くなると、ユーザーの日常生活すべてがトラッキングの対象となる可能性がある。
VRテクノロジーの深刻さを分かりやすく伝える例を以下に挙げたい。
最近リリースされたVRゲーム「VRカノジョ」のフルボディ・トラッキング版がリリースされたとしよう。プレイヤーは文字通り全身を使ってゲームを「プレイ」できる。かつてない没入感を味わえるだろう。
その進化した「VRカノジョ」のプレイデータを、開発会社はゲーム内容の改善のために収集することができるだろう。その収集されるデータとは、プレイヤーのカラダの動きをトラッキングしたデータをゲームシーンごとにまとめたものになるだろう。
ゲーム開発会社は、このボディ・トラッキング・ビックデータを使って、プレイヤーにさらなる没入感を提供するようにゲームを改善するだろう。そして、プレイヤーはかつてない興奮を味わうだろう。
だが、プレイヤーはその興奮を味わう時、他人にどんな種類のデータをサラしてしまっているか、一度立ち止まって考えてみることをお勧めしたい。
VR・ARに限らず、今日の重要なテクノロジー・トレンドであるIoT(モノのインターネット)などが実現しようとしているのは、万物をデジタル情報化して、ヒトとモノ、リアルとバーチャル、ヒトと世界のあいだにある「つながり」を強化すること、と言える。
あらゆる「つながり」が強化された未来社会は、確かに今よりずっと便利で無駄の少ない世界だろう。だが同時にこの未来社会は、ユーザーである自分たちがあらゆるモノに見られ、しばられている空前の監視世界の側面もありそうだ。
VR・ARが進化し普及する過程で、こうした負の側面と向き合う時が来るだろう。そして、その時には、テクノロジーに精通した人材だけではなく、テクノロジーがもたらす影響を想像できる人材も求められるのではなかろうか。
Version2017を紹介したCreatorsの記事
https://creators.vice.com/en_us/article/will-augmented-reality-destroy-privacy
Version2017公式サイト
https://versions2017.squarespace.com/
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