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2017年11月1日、英Arm社(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)は、ディスプレイ・プロセッサ「Mali-D71」、システムIP「CoreLink MMU-600」、ディスプレイ管理コア「Assertive Display 5」によって構成される統合型ディスプレイ・ソリューション「Arm Display Solution」を発表した。
この最新ソリューションは、ユーザー体験とデバイスのパフォーマンス向上を統合型アプローチにより実現するものだという。
ディスプレイを取り巻く技術トレンドの急激な変化にともないディスプレイデバイスのスループット要件が高まり、システム全体のパフォーマンスに大きな負担がかかるなか、こうした課題をインテリジェントに解決する。
ユーザーがスマートフォンで日常的に目にするコンテンツは、ますます複雑になっており、屋内・屋外を問わず、あらゆる環境で快適な視聴体験を実現する必要性に迫られている。
仮想現実(VR)ゲームやハイダイナミックレンジ(HDR)動画などのコンテンツを表示するディスプレイの品質は、優れたユーザー体験を実現する上で不可欠な要素となっている。
モバイル・ディスプレイ技術と視聴体験は、最新デバイスの大きなセールスポイントとなっており、この分野ではイノベーションを牽引するトレンドが多数見受けられるようになった。
VRヘッドセットでは、ディスプレイと眼の間の距離が近く、画像本来の品質を表現するには、同一画面の中でより多くのピクセル数が必要となる。
さらに、VRパネルでの全体的なレイテンシー(表示遅延)と残光を抑えるには、最大120fps(フレーム/秒)のフレームレートが必要となる。
このピクセル・スループットは、他のアプリケーションに比べて1桁近く高いピクセル・スループットであり、これは設計の複雑性やシステムバンド幅に著しく影響を与える。
消費電力や面積の制約があるモバイル機器にとって、これは大きな課題となっている。
HDR(High Dynamic Range)は、画像の忠実度を高める上で欠かせない機能である。
より良い色彩と扱える輝度レンジを高め、視覚に近い画質を作り出すことで、リアルなユーザー体験を実現する。
HDRコンテンツは、HDRディスプレイとSDR(Standard Dynamic Range)ディスプレイの両方で表示させる必要があり、ディスプレイ・パイプラインの終端ではパネル機能が複数存在することから、ディスプレイ・サブシステムにとって、大きな課題となっている。
複数のアプリケーションを一つの画面上で同時に見せることができるマルチウィンドウモードは、これまで主にPCで利用されてきた。
使われるアプリケーションとシステムによっては制限がありますが、ウィンドウのサイズや構成はモバイルでも調整可能である。
ただし、システム設計の観点から、マルチウィンドウ機能の実現は容易ではない。
Android Window Compositionの強化により、プレミアムなディスプレイ・ソリューションであれば、PCと遜色のないマルチウィンドウをモバイル上で見ることができる。
より複雑なコンテンツが登場し、アプリケーション・プロセッサとパネルのディスプレイドライバの相互接続の間で機能性が最適化されるなか、ディスプレイ技術に対応が求められるパネルとインターフェイスの多様化が進んでいる。
HDRからSDRへユーザーが期待する鮮やかな色彩と引き締まった画像を表示する場合、ディスプレイ・パイプラインでは、パネルの持つ適切な性能でコンテンツを出力する必要があるなど、帯域幅の無駄を防ぐには、これらをインテリジェントに実行する必要があるということだ。
現在のディスプレイIPの中核を構成する買収を2013年に行い、その後すぐにディスプレイ・プロセッサの提供を開始するなど、Armにはディスプレイに関する豊富な実績がある。
2016年にはMali-DP650をリリースしたほか、Apical社の買収によって、Assertive Displayを製品ポートフォリオに加えている。
VR、HDR、マルチウィンドウに対する新たなアプローチが必要となった結果、Armは新たなアーキテクチャ「Komeda」の開発に至ったという。
今回新たに提供する統合型ディスプレイ・ソリューションは、Mali-D71、CoreLink MMU-600、Assertive Display 5によって構成されているが、その基礎となるのがKomedaアーキテクチャだということだ。
プレミアムなモバイル・ディスプレイに求められる要件は高まっている。
4K以上の解像度と高フレームレートの実現には、システムパフォーマンス上で新たな課題が生じ、ディスプレイ・プロセッサの最適化が強く求められている。
ディスプレイ・プロセッサは、広く汎用的なものだったたが、今後デバイスメーカーに高い競争優位性をもたらす製品へと進化する必要があり、Mali-DPUとしてそれに初めて対応するのが、今回新たに発表されたArm Mali-D71である。
その特長は以下の通りとなっている。
Mali-D71は、コンポジション、回転、高品質スケーリングなどの画像処理を固定機能としてハードウェア上で行い、GPUのワークロードを軽減する。
これは、最終出力を画面に送る前のパイプラインの最終段階で行われるため、GPUは全く関与する必要がないということだ。
前世代のMali-DP650に比べると、Mali-D71では、同一面積あたりの処理が向上する。
1つのディスプレイを駆動する場合、2つ目のディスプレイのリソースを再利用できるため、フルフレームのレイヤをより多く処理でき、2倍のパフォーマンスを得ることができるということだ。
メモリ・サブシステムの大幅な最適化により、Mali-D71は、前世代のMali-DP650と比べて、システムバス上で最大4倍の遅延を許容でき、同一のスループットを出すことができる。
4Kフレームを最大120fpsで出力側に送る必要がある高性能ディスプレイ処理では、これは非常に重要で、ディスプレイのブランク時にはマイクロ秒単位でピクセルを先読みし、バッファを常に一杯の状態にしておくことで、ディスプレイ・プロセッサは、システムバスでの時間を最適化する必要がある。
「サイド・バイ・サイド」モードで実行すると、Mali-D71は、かつてないない2倍のピクセル・スループットを達成でき、超低消費電力の枠組みの中で、プレミアムなVR 4K120のパフォーマンスを発揮できるということだ。
Mali-D71についての技術的な詳細は、以下リンク先を参照(英文)。
https://community.arm.com/graphics/b/blog/posts/mali-d71-and-the-next-generation-display-solution
これらの新たなモバイル・ディスプレイの課題が最終的に行き着く先は、データ管理の問題だ。
Arm社はこれまで、Arm Corelink MMU-600の特殊レンダリング版とMali-D71の密接な統合に取り組んできた。
この組み合わせにより、統合ソリューションでは55%の省面積化が可能となる。
また、MMUのレイテンシーをリアルタイム・パスから隠すことで、レイテンシーを50%改善できる。
CoreLink MMU-600は、現実として避けられないもう1つの課題、プレミアムメディアのセキュアなコンテンツ保護も解決するということだ。
Arm Corelink MMU-600についての技術的な詳細は、以下リンク先を参照(英文)。
https://community.arm.com/graphics/b/blog/posts/arm-corelink-mmu-600-saves-1billion-in-premium-content-protection-systems
視覚状況に合わせてリアルタイムで設定を調整し、ディスプレイを見やすくするという独自機能により、Assertive Displayはその提供開始以降、広く採用されており、プレミアムモバイル機器での出荷数は10億個を突破している。
Assertive Display 5は、従来技術の誇る太陽光下での高い視認性を基盤とし、ディスプレイ処理のパイプラインにHDR制御を組み込み、色彩・色域制御機能を向上させ、さらに省電力機能を向上させることを主な特長としている。
Assertive Display 5は、HDRコンテンツ(HDR10またはHLG)を、ダイナミックレンジや色域に関わらずあらゆる特性のディスプレイに提供できるため、SDRディスプレイでもHDR体験が楽しめるということだ。
映像の暗部にも重要な情報が存在することから、外光補正機能は、HDRコンテンツにとってこれまで以上に重要となる。
Assertive Displayの高度な機能により、イメージの持つリアルなディテールは、作り手側の意図した通りに表現されるということだ。
Assertive Display 5についての技術的な詳細は、以下リンク先を参照(英文)。
https://community.arm.com/graphics/b/blog/posts/assertive-display-5-a-stunning-hdr-experience
これら3つの要素が連携することで、Arm社のパートナーとOEMは、現在のディスプレイ技術の課題を解消する画期的なソリューションを市場に提供することができるようになった。
Arm Display Solutionの登場により、ディスプレイIPは今後、ユーザー体験の向上、消費電力の削減、バッテリー駆動時間の延長を実現し、デバイスメーカーに真の競合優位性をもたらすことになるだろう。
今回の発表は、最高のVR/HDR体験に向けた取り組みの成果であり、Arm社は今後もディスプレイ技術のリーダーとして、技術革新をけん引していくとしている。
Armテクノロジーは、コンピューティングとコネクティビティの革命の中心として、人々の暮らしや企業経営のあり方に変革を及ぼしている。
そのエネルギー効率に優れた高度なプロセッサ設計は、1,000億個ものシリコンチップでインテリジェンスを実現しており、各種センサからスマートフォン、スーパーコンピュータまで、さまざまな製品をセキュアにサポートしています。世界最大のビジネスブランドや消費者ブランドをはじめ、1,000社以上のテクノロジー パートナーと協力することで、Armは現在、チップ、ネットワーク、クラウドの内部で行われる演算のあらゆる分野でArmイノベーションを牽引している。
ArmはArm Limited(またはその子会社)の登録商標となっている。
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参照元:ニュースリリース
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