サンゴの海に暮らす魚たち


オーストラリアの豊かな自然は、毎年多くの観光客がこの国を訪れる理由になっている。数多く存在する名所の中でも特に名高いものの一つがグレートバリアリーフだ。


この巨大なサンゴ礁は世界中の観光客をオーストラリアに呼び込む観光資源であるだけでなく、様々な生物が暮らす場としても重要だ。1981年には、自然遺産としてユネスコの世界遺産にも登録されている。


そんなグレートバリアリーフだが、近年では海水温の上昇などの気候変動によるサンゴの白化現象や、サンゴを食べるオニヒトデの異常繁殖といった危機に晒されている。いくつかのVRコンテンツでは、360度の写真や動画でグレートバリアリーフの美しさやサンゴが直面する危機を知ることが可能だ。


死んでいくサンゴ



上の動画はオーストラリアではなくサモア(オーストラリアの東北東に浮かぶ島。アメリカ領)のサンゴを見られる360度の写真から作られたものだ。


最初に示された2014年の画像では元気なサンゴが見られ、小さな魚たちもたくさん泳いでいる。しかし、次の写真ではサンゴがほとんど真っ白になってしまっている。この夏は海水温が高く、サンゴの白化現象が引き起こされてしまった。


これは2015年に撮影された写真だ。1枚めの写真から3ヶ月しか経っていないにも関わらず、ずいぶん雰囲気が変わっている。


季節や時間による違いもあるかもしれないが、サンゴが白くなっただけでなく魚もずいぶん少なくなってしまったようだ。新たな住処を求めてこのサンゴ礁から移動していったのだろうか?


サンゴはなぜ白化する?


白化したサンゴはまるで漂白しされてしまったかのようにきれいな白になっているが、これが元々サンゴの持っている色だ。サンゴがカラフルに見えるのはサンゴ自体に色が付いているためではなく、共生している褐虫藻(藻類)の色だという。


サンゴが健康な状態であれば、褐虫藻が光合成で得たエネルギーの一部を受け取ることでサンゴも成長していく。しかし、海水温の上昇や水質汚染などのストレスがかかるとサンゴの中から褐虫藻がいなくなってしまうのだ。


一時的に褐虫藻がいなくなっただけならば、環境が戻ればサンゴも回復する。しかし、その状態が続けばサンゴは死んでしまう。


サンゴの成長はとても遅い。最後の写真のようにサンゴが死んで黒くなってしまうと、サンゴ礁全体が元のような状態に戻るには何年も、あるいは何十年もかかるだろう。


危機を知らせる


こうした水中での変化を直接知っているのは、ダイバーや現地の漁師だけだ。だが、360度映像やドキュメンタリー番組を通して一般の視聴者にも荒廃したサンゴ礁の状態を伝えることができる。


オーストラリアやサモアのような国を訪れることも、ダイビングのライセンスも必要ない。さらに、過去と現在を比べてみせることでその変化を伝えられるのも強みだ。


サンゴの保護を考えるなら世界レベルで気候の変動に対応していかなければならないため、多くの人に現状を知ってもらうことに意味がある。


グレートバリアリーフを360度探索



サンゴが危険な状態にあるのは事実だが、全てのサンゴがその色彩を失ってしまったわけではない。


Googleストリートビュー


現在のグレートバリアリーフを知る方法としては、Googleのストリートビューを利用する方法がある。


Googleマップのストリートビュー機能は行ったことのない場所にある目印を写真で確認するために使えるだけでなく、自然豊かな土地や観光地のバーチャルツアーも可能だ。陸上の道だけでなく海中にも対応しているので、グレートバリアリーフはもちろん沖縄やフロリダなど様々な国と地域の海を自由に眺められる。


ハイエンドVRデバイスで海中へ


Googleストリートビューの強みはパソコンやスマートフォンなど使用するデバイスを選ばないことだが、HTC ViveかOculus Riftを持っているならばより没入感の高い経験が可能だ。


Googleの『Earth VR』アプリは今年Oculus RiftとTouchでの利用にも正式対応したので、Fakeviveを使ってHTC Viveを装う必要はなくなっている。これらのハイエンドデバイスを所有しているなら、Earth VRはサンゴ礁の美しさやサンゴに迫る危険を知るための優れたツールとなる。


モバイルVRでのVRツアー


ハイエンドVRデバイスを持っていないなら、『Google Expeditions』を使う方法もある。Expeditionsは元々学校の教室で学習用アプリとして利用することを想定して開発されたが、現在は個人用のソロモードも搭載されているアプリだ。


グレートバリアリーフを訪れることのできるバーチャルツアーは2種類用意されており、一方はサンゴ礁に暮らす生物の生態系や科学について学ぶ学習用コンテンツ、もう一方はレディエリオット島やヘロン島といった有名な観光地・ダイビングスポットのバーチャルな旅行が可能なコンテンツだ。


ExpeditionsアプリはAndroidスマートフォン用に提供されており、CardboardゴーグルかDaydream Viewを使って視聴できる。


 


VRはドキュメンタリー番組のように知識を得るためのコンテンツを提供するメディアとしても、観光客のために自然の美しさを紹介するメディアとしても利用できる。オーストラリア政府(観光局)がYouTubeでグレートバリアリーフを含めたオーストラリアのおすすめスポットを紹介する映像を多数公開しているので、旅行先を考えるときの参考にすることもできそうだ。


観光資源としてサンゴ礁を活用している地域ではサンゴを守る活動も行われているので、観光客がその土地を訪れてお金を使うこともサンゴの保護に繋がるだろう。


 


参照元サイト:Cnet


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 グレートバリアリーフの美しさとサンゴの危機を伝えるためにVRが使われる