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2016年には消費者向けのVRヘッドセットが次々と発売され、VRを使ったサービスを提供する企業の数も増えた。2016年のVR業界の中でも、特に優れた企業や製品を表彰するのがこのVR Awards 2017だ。
夏にファイナリストが発表された企業の中から12部門の受賞者が決定し、10月9日にロンドンで開催された授賞式で発表された。授賞式には、HTC、Oculus、Googleなどを含む世界中のVR関連企業から300人あまりが出席したという。
ただ2016年の成功を祝うだけでなく、式典やアフターパーティーの中でVR業界の未来に繋がる関係が生まれているのかもしれない。
VR Awards 2017は全部で12の部門に分かれており、各部門ごとに受賞者が存在する。ファイナリストは78社(及び製品)だが、ノミネート総数は500を超えていたという。
受賞者は、40人のVR専門家によって選ばれた。
デザイン、装着感、機能などが優れたVRヘッドセットとそのメーカーに与えられるVR Headset of the Yearは、Oculus Riftが獲得した。ライバルとなるHTC Vive、Razer OSVR、Sony PSVR、Starbreez StarVRといったデバイスを抑えての受賞だ。
市場調査会社の報告によればPSVRの販売台数が多いようだが、VR業界への影響という観点からOculus Riftが選ばれた面もあるのではないだろうか。同デバイスにはハンドトラッキングコントローラーも用意されており、これからのVRデバイスの標準的な機能を定めた存在だ。
続いて、モバイルVRヘッドセットではGoogle Daydream Viewが受賞した。Merge VR Goggles、Samsung Gear VR、Homido V2も最終段階まで残ったが、Daydream Viewには及ばなかった。
モバイルVRの部門でも、ファイナリストの中で最も販売台数の多いGear VRではなくDaydream Viewが選ばれた。Gear VRに先んじてモバイルVRデバイスにリモコンをもたらした功績や、ファブリック素材を用いて装着感を高めた本体デザインなどが評価されたようだ。
VRヘッドセット以外のVRデバイスでは、Oculus Touchが選ばれた。Birdly(SOMNIACS)、Leap Motion、Hardlightスーツ(NullSpace VR)、Ultrahapticsを抑えての受賞だ。
いずれも革新的なデバイスだが、Oculus TouchはもはやOculus Riftに標準で同梱されるコントローラーとなっている。その存在感は一年を代表するVRハードウェアと呼ぶに相応しいだろう。
一方、Oculus RiftのライバルとなるHTC Viveでは最初からOculus Touchと同様の機能を持つハンドトラッキングコントローラーが同梱されている。もし別売ならば、HTCのワンドコントローラーがこの部門を獲得していた可能性もある。
VRゲームで受賞したのはSurviosの『Raw Data』だ。長く早期アクセス状態だったが、今月に入って正式版となった人気作である。元はHTC Vive専用タイトルとしてリリースされたが、後にOculus Rift版やPSVR版も登場している。
他にファイナリストとなったのは以下の企業・作品だ。
人気作が並ぶが、やはり発売月に最速で100万ドル(1億円)の売上を達成したRaw Dataは強かった。
革新的なVR企業としてはG’Audio Labが選ばれた。VRの没入感を高めてくれる立体音響を扱う企業だ。
Zero Latency、Technicolor Experience Center、Merge VR、Globacore、Jaunt VRといったライバル企業がいる中での受賞となる。この部門の選考には企業が提供する製品・サービスだけでなく、企業理念やポリシーも関わっているという。
VR体験コンテンツ(非ゲームコンテンツ)ではGoogleの『Tilt Brush』が受賞した。VR空間で3Dアートの創作が可能なアプリであり、初心者からプロのアーティストまで幅広く対応している。
他にノミネートされていたのは以下の企業(アプリ)だ。
GoogleからはTilt Brushの他に『Earth VR』もファイナルに残ったが、最終的に受賞したのはTilt Brushだった。
マーケティングにVRを活用する企業は多いが、その中でも最もクリエイティブだったと判断されたのはIKEAだ。VR空間でIKEAの家具を試せるIKEA VRでこの部門を受賞した。
比較的多くの企業が候補となっている部門でもある。
インタラクティブなVRメディア・VR映像コンテンツとして選ばれたのはPenrose Studiosの『Allumette』だ。この作品は第1回ViveportデベロッパーアワードでもExperience部門で1位を獲得している。
他に以下の企業・作品が最終選考に残った。
VRスタートアップの中で代表的な企業として選ばれたのはLiveLikeだ。スーパーボウルやCONCACAFゴールドカップなど、スポーツイベントをVRで友人と楽しめる体験を作っている企業である。
Inception VR、Cerevrum Inc.、MANDT VR、LiveLike、MetaVRseの5社から選ばれた。
VR映像でスポーツの試合を配信するだけでなく、友人や見知らぬスポーツファンと一緒にその試合を楽しめる仕組みを作っているところがLiveLikeの特色だ。VRヘッドセットがなくても利用できる同社のシステムは、新しいスポーツ観戦の形になるかもしれない。
教育やトレーニングにおけるVRの使用では、Industrial Training Internationalの『ITI Crane Simulator』が選ばれた。この分野でVRを利用する企業は多く、多数のライバルがいる中での受賞だ。
他のファイナリストとしては、以下の企業(コンテンツ)が残った。
健康維持や健康状態の改善にVRを利用するための研究も進められている。
この部門で選ばれたのはTribemixの『ImmersiCare』だ。元は認知症患者の苦痛をVRで和らげるために始まったプロジェクトだが、高齢者だけでなく他の疾患を抱える患者の痛みを軽減することも含めて対象が拡大している。
AiSolve、Osso VR、Vivid Visionなどのライバルを抑えての受賞だ。
家庭ではなく施設で体験するVRエンターテイメントの中から、The Voidの『Ghostbusters: Dimension』が選ばれた。アメリカ国外での展開や体験可能な施設の追加も行われている人気コンテンツだ。
また、The Voidはディズニーと協力関係にある。今年の12月には、スターウォーズのVR体験施設をオープンする予定だ。
このVR Awardsには一年間のVR業界を振り返るという意味もあるが、その授賞式にこれからのVR業界を動かす人々が集まることにも意義がある。
先述の通り、このイベントには多くの業界関係者が出席している。一年間に成功した企業を確認し、その関係者と直接話をする中で新しい協力関係が生まれたり、投資に向けた交渉がスタートすることもあるだろう。
あるいは、惜しくも今年は受賞を逃した企業が持つ気になる製品に出会う機会になるかもしれない。
VR Awardsで各賞を獲得したのは、必ずしもその分野で最も売上が大きい製品ではない。しかし、VR Awardsに選ばれたという事実はそうした製品に対して投資する企業の方針が間違っていないことを示すものだ。
利益が小さいから、ライバルに売上が劣っているから失敗だと短期間で投資を打ち切られてしまっては、革新的な製品を作るのは難しい。VR企業側は、継続的に投資してもらうための材料としてVR Awardsの受賞をアピールしていくこともできるだろう。
新しい関係を始めるときだけでなく、継続的な関係を築くときにもVR Awardsの存在が役に立つかもしれない。
参照元サイト:VR Bound
参照元サイト:VR Scout
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