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今月17日に各メーカーから一斉にリリースされるWindows MRヘッドセットについて、調査会社SuperDataのアナリストStephanie Llamas女史は、同メディアに対して同VRヘッドセットの売り上げ予想を話した。
同女史が所属するSuperDataは、VR市場調査において定評のある調査会社で本メディアでも以下のような調査結果を報じたことがある。
(参考記事)
「SuperData、2017年はVRハードウェアが前年売上比2.4倍、ソフトウェアが4倍になると予測」
「SuperData、「アメリカのVRユーザーの40%が女性」という調査結果を発表 」
まず同女史は、Windows MRヘッドセットとVIVE・Oculusの決定的な違いに関して、以下のように言っている。
Microsoftは、主要な競合他社であるVIVE(を製造するHTC)とOculusに対して、強力な一手を打ったと言えます。
というのも、$400~$500(¥約45,000~56,000)というユーザに手頃な価格で多数のヘッドセットを揃えたことで、「Windows MRヘッドセット」というブランドの認知度を高めるマーケティングに成功したからです。
同女史は、同ヘッドセットの特徴をふまえて、さらに以下のように発言を続けた。
一連のWindows MRヘッドセット群は、ライバルデバイスであるVIVE・Oculusよりスペックが低いPCを使ってでも(完全にとはいかないまでも)動作させることができます。
加えて、Microsoftは「Halo」シリーズのような魅力的なコンテンツを抱えていること、また(世界最大のゲーム・プラットフォームである)Steamにアクセスできることから、コンテンツ不足に悩まされることはないでしょう。
そういうわけで、Windows MRヘッドセットは2017年第4四半期にOculus Riftの2倍、VIVEの10~15%多く売り上げるでしょう。
同女史は同ヘッドセットを高く評価する一方で、ひとつだけ懸念材料があることを指摘している。その懸念について、以下のように説明している。
しかしながら、MR(Mixted Reality)とVRはどう違うのかに関して、ユーザに混乱をもたらすかも知れません。
Windows MRヘッドセットはVR体験をユーザにもたらすもので、HoloLensのようなMR体験ができるわけではありません。
それゆえ、ユーザのなかにはwindows MRヘッドセットがVIVEやOculusとは全く違う体験を提供すると期待してしまい、失望するヒトも出てくるでしょう。
同女史が指摘しているように、Windows MRヘッドセットは「MR(Mixed Reality)」という表現を使ってはいるが、実質的にはVIVE・Oculusと変わるところのないVR体験を可能とするデバイスである。
それでは、Microsoftはなぜユーザに誤解を与えかねない「MR」という表現にこだわるのか。その答えは、2017年5月10日から12日、アメリカ・シアトルで開催された同社の開発者向けイベント「Microsoft Build 2017」で披露されたデモにある(以下の動画の1:47~48を参照)。
同イベントでは、Windows MRヘッドセットとHoloLensを同時に使ってパフォーマンス集団シルク・ドゥ・ソレイユとコラボしたデモが披露された。同デモでは、物理的に近いところにいるユーザはHoloLensを使い、物理的に遠いところにいるユーザはWindows MRヘッドセットを使ってコラボしている。
同デモが示そうとしているビジョンは、Windows MRヘッドセットとHoloLensを必要に応じて使い分け、同一のバーチャル体験をシームレスに共有すること、と言えるのではなかろうか。
そして、現在では異なる分類のバーチャル体験と理解されているVRとARを融合させるようなビジョンを持っているからこそ、同社はユーザに誤解を生じかねない「MR」という表現をあえて使い続けていると解釈できるのだ。
Microsoft社とはやや異なるビジョンではあるが、VR・AR市場におけるプラットフォーマーであるGoogleとFacebookも、VRとARを区別せず統一的に捉えようとしている。
GoogleのVR&AR部門を率いるClay Bavor氏は、「没入的コンピューティング」という概念でVRとARを統一的にとらえる発言を繰り返している。その「没入的コンピューティング」に関しては、以下のように言及している。
VRとARの違いとは、ある同一の範囲における違いなのです。私は、その範囲のことを「没入的コンピューティング(immersive computing)」と呼んでいます。
そもそも、VRとARのレッテル貼りには興味がありません。VRとARの違いはデジタル・イメージがユーザーに感じられる範囲の違いに過ぎないのです。
VRでは、ユーザーが体験する全てがコンピュータによって生成されます。対してARでは、ユーザーがいるリアルな環境にデジタル情報が部分的に付加されるのです。
以上の発言内容を理解しやしように表にすると、以下のようになるだろう。
体験名 | 使用デバイス | 没入的コンピューティング適用範囲 |
---|---|---|
VR | VRヘッドセット | 100% |
モバイルAR | スマホ | 0%~スマホ・ディスプレイがユーザーの視野を占める範囲 |
(ハイエンドAR)・MR | HoloLens、Meta 2、AppleGlass? | 0%~100%未満 |
今年4月に開催されたFacebookの年次総会「F8」では、「ライトAR」と「フルAR」という概念が提唱された。
以上の2つの対概念は、次のように説明される。「ライトAR」とは、スマホを活用した現在体験可能なARのことを意味しており、対して「フルAR」とは、HoloLensのような専用のARデバイスを活用した現在のAR体験よりリッチなそれを指している。
同社の発表によれば、フルARが普及するのは20〜30年後と予想される。フルARにおいては、ARデバイスを使って、現在のVRヘッドセットによるバーチャル体験がリアルな世界にいながら体験できるので、現在のVRとARの区別はもはや意味をなさなくなるというのだ。
以上のようにVR・AR市場の主要プラットフォーマーであるMicrosoft、Google、Facebookは、若干のニュアンスの違いはあるものも、いずれもVRとARを統一的に捉えるビジョンを打ち出している。そして、プラットフォーマーがそのように考えている以上、将来的には実際にVRとARはひとつの体験、あるいはひとつの市場となるとみて間違いないだろう。
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