- 週間ランキング
海外大手VRポルノサイトVR Pornは、先週、同社が調査したVRポルノコンテンツのアクセスに関する統計情報を公式ブログで公開した。
VRポルノコンテンツがVRコンテンツのなかで大きな位置を占めつつあるのは、本メディアの同ジャンルに関する報道からも明らかである。しかしながら、このほど公開された統計情報は、予想を上回る(もしかしたら衝撃的な)内容である。もっとも、こうなることを予想していた読者もいるかも知れないが。
Googleが提供しているウェブ検索をリサーチするツール「Googleトレンド」を使って、直近3ヶ月を調査範囲として「VR」という単語と関連して検索された単語を調べたところ、「VR Porn」が圧倒的な首位であることがわかった。
首位以降は「VR Games」「VR Videos」「VR Apps」と続く。
ウェブサイト比較ツールを提供しているSimilarWebを使って、海外VRサイト上位50の直近3ヶ月を調査範囲としてアクセス数を調べたところ、50サイト中30がVRポルノサイトであった。
なお、上位50サイトのうちVRポルノサイトではないサイトには、VIVE・Oculus公式サイト、本メディアでも度々参照するVRニュースサイト「Road to VR」「Upload VR」が含まれる。
SimilarWebを使って調べたVRサイト・トップ5は以下のようなサイトである。
VRサイト・アクセス数首位はVRポルノサイトVRPorn.comである。
2大ハイエンド型VRヘッドセットであるOculusとVIVEはそれぞれ2位と5位であり、上位5サイトのうち3つがVRポルノサイトであることがわかった。
SimilarWebで調べたVRサイト上位50のうち、30を占めるVRポルノサイトの6~8月の平均トラフィック数の推移を調べると、3ヶ月で50%増加していることがわかった。
VRサイト・サクセス数1位であると同時にVRポルノ・サイト1位でもあるVR Porn.comが、同サイトの国別アクセス状況をサイト管理ツール「Google analytics」を使って調べたところ、以下のような結果となった。
・1位:アメリカ
・2位:ドイツ
・3位:イギリス
・4位:インドネシア
・5位:インド
・6位:カナダ
・7位:日本
・8位:フランス
・9位:オーストラリア
・10位:中国
1位のアメリカは当然予想できるとして、4位にインドネシアがランクインするのは意外ではなかろうか。インドネシアが上位にランクインしている原因は、人口がアメリカに近い2億6千万人とランキング10ヵ国中で上位にあるうえに、インターネット環境が整備されているからであろうか。
国別人口では1位である中国が10位にランクインされているのは、「言語の壁」もさることながら同国はインターネットの利用が中国政府によって検閲されている影響があるのではないか、と推測される。
国別人口および「言語の壁」を考慮すると、日本の7位はむしろ健闘?していると言える。もっとも、日本に関しては国内のVRポルノ市場が早くも成熟しつつあるので、国内ポルノサイトのアクセス数を加算したら、おそらくは順位があがると予想される。
なお、参考までにランキング10ヵ国の1960年以降の人口推移をグラフで表す。人口データのソースは世界銀行である。
以上の統計情報を公開したVR Porn.com公式ブログ記事では、VRサイトにおいてVRポルノサイトが優位に占めている理由として、以下のふたつの要因を指摘している。
ひとつめの要因は、VRコンテンツのオフィシャルなプラットフォームであるOculus StoreおよびSteamでは、VRポルノコンテンツを扱っていないことを意味している。
VRゲームをプレイするのであれば、オフィシャルなプラットフォームにアクセスしてしまえば、そのプラットフォーム内で希望のコンテンツを検索・ダウンロードできる。
対してVRポルノコンテンツを探す場合は、オフィシャルなプラットフォームが存在しないので、ユーザが自力でGoogle検索することを余儀なくされる。さらにオフィシャルなコンテンツ・プラットフォームがないため各VRポルノ提供会社が自前でコンテンツを提供することになり、結果としてVRポルノサイトが乱立することになったと考えられる。
ふたつめの要因は、WebVRの整備と普及が進んだことである。
WebVRとは、VRコンテンツをWebコンテンツとして開発するときに活用する開発技術のことである。このWebVRコンテンツと対比されるのが、VRコンテンツを各VRヘッドセットの仕様に最適化されて開発するネイティブVRコンテンツである。ネイティブVRコンテンツは、主としてUnityやUnrealといったゲームエンジンで開発され、WebVRコンテンツよりリッチなものとなる。
しかしながら、ネイティブVRコンテンツのようなリッチなインタラクティブ性は実現できないWebVRコンテンツには、大きな利点がある。その利点とは、クロスプラットフォーム開発が極めて容易なことである。極端な話、WebVRコンテンツを閲覧するには、ウェブブラウザにアクセスできるVRヘッドセットであれば何でもよいのである。
VRポルノコンテンツは仕様的には360°動画に分類される。360°動画を開発するにはWebVRで十分であり、実際ほとんどのVRポルノはWebVRコンテンツである。それゆえ、短期間に大量に開発され、かつ閲覧可能なVRヘッドセットが多様であることから、急速にユーザを獲得できたと考えられる。
同ブログ記事では、(ビデオテープでメジャーな規格であった)VHSとインターネットの普及過程において、ポルノが大きな役目を果たしたことを引き合いにしながら、以上のようなVRポルノの隆盛はVRがメインストリームに着実になりつつあることを意味している、と結論している。
だが、本当にそうであろうか?この結論は検討する必要があるだろう。
2017年におけるXR市場における最大の事件と言えば、ARKitとARCoreがリリースされたことによる「モバイルAR市場」の誕生だろう。
つい先日、モバイルAR市場が誕生したことによって、今後5年間において相対的にVR市場の成長が鈍化、モバイルVR市場においてはその規模が縮小するだろうとするDigi-Capitalの市場予測が発表された(下の画像参照)。この予測が正しければ、メインストリームとなるのはARであってVRではない、と言える。
対して海外メディアUploadVRは、VRはまだ普及の途上にあるという見解を展開した記事を掲載した。その見解の根拠として、過去のメディアの普及曲線を振り返れば、ある時点を過ぎると急速に普及する「指数関数的曲線の曲がり角」が存在する(下の画像参照)。VRはまだこの「曲がり角」の手前にいるのだから、現在のように普及が予想より進んでいないのも「想定内」というわけだ。
現在、VR市場は「拡大のシナリオ」と「縮小のシナリオ」の両極で揺れ動いている時期のように思われる。
VR市場の今後を占うために、直近でメインストリームとなったスマホの普及過程におけるポルノの役割を振り返ってみよう。
周知のように、現在スマホを使えば気軽にウェブ上のポルノコンテンツにアクセスできるうえに、「出会い系アプリ」も多数リリースされている。しかし、だからといってポルノコンテンツを楽しむためだけにスマホを購入したユーザはほとんどいないだろう。
スマホがメインストリームとなった要因は、スマホアプリがビジネスおよび日常生活におけるタスクに広く活用できたことに由来するのではなかろうか。そして、スマホ文化を考えるうえで欠かせないスマホゲームが主としてライトゲーマーに受け入れられた理由は、すき間の時間に気軽にプレイできるというビジネスモデルを確立できたからだろう。
スマホの普及にポルノコンテンツが決定的な役割を果たしたと主張したら、多くのヒトが首をかしげるのではなかろうか。
VRが普及する「拡大のシナリオ」を歩むためには、おそらく「パズドラ」「Clash of Clans」のようなキラーコンテンツが現れるか、iPhoneのような誰もが使いたいと思うヒーローデバイスの出現が必要なように思われる。現在のVRには、まだどちらの「英雄」も誕生していない。
そして、キラーコンテンツの候補にはVRポルノはおそらく排除されるだろう。ポルノコンテンツは万人向けのものとは言えないからだ。
以上のような英雄がVR市場に現れるのは、いつだろうか?ひとつ言えそうなのは、今後5年以内、もしかしたら3年以内に「VRの英雄」が現れなかったら、VR市場は「縮小のシナリオ」を歩む可能性が極めて高くなる、ということだろう。
ソース:VR Porn.com
https://vrporn.com/vr-porn-and-the-web-a-statistical-study/
Copyright ©2017 VR Inside All Rights Reserved.