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自宅でVRゲームができる環境を整えるときに障壁となるのが、導入コストの大きさだ。VRデバイスそのものの価格は各社の値下げによって徐々に低くなってきたが、PCベースのVRヘッドセットであれば高性能なパソコン、PSVRであればPS4が必要になる。
特にVRゲームに適したゲーミングPCは数万円から数十万円と高価で、VRデバイスの導入に必要な総コストを大きく引き上げる要因となってしまっている。VRゲーム以外のPCゲームや動画の編集といった作業で高性能なパソコンを使うユーザならばともかく、VRゲームにしか使わないというユーザにとってはもったいなく感じられる出費だ。
中国では、HTCが新しくクラウドサービスを発表した。このサービスを使うことで、ゲーミングPCと接続せずにHTC ViveのVRゲームが楽しめるようになりそうだ。
インターネット回線の速度が向上したことで、データを高速でやり取りすることが可能になった。その結果、高性能なコンピュータを購入する代わりにネットワークに接続された高性能マシンの処理能力を借りることもできるようになった。
通信環境が安定していないと利用できないという難点はあるが、その点さえ克服されればクラウドサービスを利用したほうが低コストで同等の処理が実現できることもある。
これまでにも強力なGPUを搭載したマシンでPCゲームを動作させてユーザのPCに映像をストリーミングするサービスは存在していたが、VRゲームで同様のことを行うサービスは世界初だ。
HTCは先週末、Dalian TelevisionおよびBeijing Cyber Cloudとのパートナーシップを発表した。このパートナーシップにより、中国大連で世界初となるVRゲームのクラウドサービスを試験展開するという。
サービスの利用者は、PCではなくセットトップボックスにHTC Viveを接続してVRゲームをプレイすることになる。コンテンツストアを利用できるため、月に5本のような形で遊べるゲームの本数が制限されることもないとされている。
HTCによれば、ストアにはViveportのVRゲームやアプリが数十本あり、360度映像コンテンツも視聴可能だという。時間とともにコンテンツは追加されていく予定だ。
このサービスパッケージの一部として、VRゲームやその他の用途に利用できる60Mbpsのブロードバンド回線も含まれている。
このクラウドサービスには、大きく2つの利点がある。
おそらく最大のメリットとなるのは、Viveを導入するコストを大きく下げられることだ。
HTC Viveを接続するのに適した性能のゲーミングPCを既に持っているのでなければ、このセットトップボックスをレンタルする方法はVRデバイスの導入コストをかなり下げてくれる。
中国でVive本体は5,488元(93,000円)と高価だが、セットトップボックスと合わせて契約することで安価にViveを利用できる。
月額プランを契約する場合、ユーザは3,000元(51,000円)のデポジットに加えて毎月500元程度(約8,500円。サービス開始後の実際の価格は未定)の支払いでVive本体とセットトップボックスをレンタル可能だ。契約を終了するなら、デポジットは返金される。
年間契約の場合、6,688元(114,000円)で一年間Vive本体とセットトップボックスを利用できるという。
一年間の合計で見るとVive本体よりは高くなってしまうが、ゲーミングPCやVRゲームの代金が不要と考えればお得だ。また、回線使用料も含まれているようなのでインターネット料金も不要となる。
もう一つのメリットが、VRゲーム用PCの管理に時間や手間をかけなくても良いことだ。
一般的には、Vive用のVRゲームをするためにはWindows OSを搭載したパソコンにゲームをダウンロードする。ゲームのダウンロードやアップデートだけでなく、OSのアップデートやセキュリティ対策もユーザが行わなければならない。このサービスは、こうした手間を省いてくれる。
音楽や映像のストリーミングサービスと同じで、事前に数ギガバイトのゲームをダウンロードすることなくすぐにゲームを始められる。突然コンピュータの調子が悪くなって、ゲームができずに再セットアップで休日が潰れることもない。
ガジェット好きにとっては大した手間ではない(個人によっては楽しみですらある)かもしれないが、コンピュータに詳しくない層にとっては大きなメリットとなる可能性がある。
メリットも存在する一方で、クラウドサービスならではの弱点もある。
ユーザのViveへとインターネット回線経由で映像をストリーミングすることになるため、パソコンと有線接続する場合に比べると遅延が大きくなる。問題ない程度だとされているが、通信環境によっては大きな遅延が発生する可能性もある。VRではfpsの低下がVR酔いに繋がる可能性もあるので、遅延が少ないことは重要だ。
また、サービスを提供する事業者側でトラブルが起きればユーザはゲームが利用できなくなってしまう。ローカルでの作業が少なくなる反面、ネットワークやサーバ側でのトラブルには弱いのだ。
サービスの提供に高速回線が必要不可欠なことを考慮すると、このサービスは大連のような都市でしか提供できないだろう。だが、VRデバイスの導入に必要なコストを抑えられればユーザを増やすことに繋がるはずだ。
大連でのテストが成功すれば、他の都市や中国以外の国でも同様のサービスが提供されるようになるかもしれない。
HTCはついにスマートフォン事業を売却するとも言われている。スマートフォン事業を手放してVRに注力する同社がこうしたサービスに力を入れることは、十分に考えられる。
参照元サイト名:Engadget
URL:http://chinese.engadget.com/2017/09/15/htc-vive-cloud-platform/(中国版)
URL:https://www.engadget.com/2017/09/19/htc-vive-china-cloud-vr-service/
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