- 週間ランキング
VR/AR技術を活用する企業や団体の数は日を追うごとに増えており、プラットフォーム間の競争も激化している。
VRではOculusとHTCがそれぞれ自社のPCベースVRヘッドセットを値下げしており、ARではAppleとGoogleがスマートフォン用のARプラットフォームを発表した。AppleのARKitとGoogleのARCoreはいずれも特別なAR用センサーを持たないスマートフォン上で物体との距離を測定可能な本格的ARアプリを動作可能にするものだ。
各プラットフォームの進化もあってVR/AR技術を利用する業界は増えており、医療や工業デザインの世界はもちろん小売業でも新技術の活用が試みられている。VRやARを使って顧客に今までにないショッピング体験を提供しようという企業も出てきているが、その採用に向けた姿勢は国によってかなり温度差があるようだ。
中国の小売業界は、この分野で他国をリードする存在となっている。
Infographics from 2017-1H #China#VR Consumer Research!
@htcvive@RoadtoVR@UploadVR@VRFocus@richardlai@VRScout@thevrara@tipatatpic.twitter.com/yRYpJyZElz — Alvin Wang Graylin (@AGraylin) 2017年8月4日
HTCの幹部が8月にTwitterで公開したインフォグラフィクスによると、中国では消費者の73.1%がVRを体験したことがあるという。
中国などのアジア各国には比較的VRアーケードが多い。その理由としては、エンターテインメント文化の違いや収入の差から来るVRデバイス価格に対する印象の違い、中国に限ってはHTC自身がViveを使った体験施設を運営していることなどが挙げられるだろう。
デベロッパーがVRゲームのライセンスについて語った記事を見ると残念ながら正規の商業ライセンスを得ることなくVRゲームを提供している施設もあるようだが、きちんと契約を結んだ施設であればVRアーケードでゲームを遊んでもデベロッパーにお金が流れる仕組みになっている。
中国でのアンケートでは全体の3割以上がVRのオフラインストア(アーケード施設や映画館など)でVRを知ったと答えており、こうした施設の存在は業界の発展を語る上で無視することのできない影響力を持っているようだ。
日本はあまりVRアーケードが多くないが、今後数が増えれば多くの消費者がVRデバイスに初めて触れた場としてアーケード施設を挙げるようになるのかもしれない。
ちなみに中国の場合、SNSや友人からの口コミでVRについて知ったという回答も多い。VRアーケードを初めて体験したユーザが他の友人に教えて…とコミュニティの中で広まっていくこともありそうだ。
WorldPayが最近行った調査によれば、中国では回答者の95%が過去3ヶ月間にVR技術またはAR技術を使用したと答えている。3ヶ月と長めの期間を設定しているとはいえ、この数字は他国では見られない高さだ。
中国では、84%の消費者がVR/ARにショッピングの未来があると信じている。対象的に、オーストラリアではこれらの技術がスマートフォンのようにポピュラーなものになると考えている消費者が半数程度しかいない。利用経験者が多いこともあり、中国は特にVRやARへの期待が大きい国と言えそうだ。
ただし、先月の調査では中国の消費者でVRを体験したことがあるのは73.1%でしかない。95%が3ヶ月以内にVR/ARを体験済みというのはかなり偏りのある数字だと考えるべきだろう。
VR/ARの利用に前向きな消費者が増えている理由の一つは、ハードウェアの性能が向上を続けていることだ。
現在のVR/ARデバイスは、かつてのシミュレーターと比べてリアルな三次元映像を描画できる。高解像度の映像が体験の質を高めていることは間違いない。
実際にVRデバイスを体験した消費者が増えることで、その没入感が評価されるようになっているのだろう。
かつて、買い物をするときは店舗に行って商品を見ながら選ぶのが当たり前だった。実際に商品を手に取って選ぶことができるのは今でも変わらず実店舗の強みだが、最近ではインターネットショッピングを利用する消費者も多い。個体差の大きい手作り品や鮮度の落ちやすい生鮮食品と違って、家電製品や書籍はどこの店舗で購入しても同じものが手に入るのでインターネットサイトから購入しやすい。
VR/ARを使ったショッピングも、まずはその特徴に合った一部の商品から広まっていくことが考えられる。
特にVR技術への関心が高いのは中国だ。多くの消費者がVRやARといった技術の利用経験があるだけでなく、半数以上が週に1回以上のペースでそれらの技術を利用するというユーザとなっている。
中国以外では、VRの利用経験がある消費者は少ない。同じWorldPayの調査だとオーストラリアで22%、日本で19%がVRを利用したことがあるという。他国も似たような状況だ。
ただ、利用経験がないからといってVR技術に期待していないわけではないようだ。利用経験者が少ないのは、先に上げたVRアーケードが少ないことが原因かもしれない。身近な場所で安価に利用できる環境が整えば、日本やオーストラリアでもVR利用経験者が増えるだろう。
日本では現在でも現金での支払が一般的だが、高額商品やインターネットサイトでの購入時にはクレジットカード決済を行うことも増えてきた。VR/ARアプリでの買い物を気軽に行えるようにするためには、アプリ内で簡単に使える決済システムが必要だ。
既に複数のシステムが開発されており、実際に運用されているものもある。VRデバイスを使ったショッピングを行わない理由としてセキュリティの不安を挙げる消費者もいるので、この点を解消することもポイントになりそうだ。
最新技術をどう捉えるかという国民性の違いや買い物に何を求めるかという文化の違いもあるが、中国ではVRデバイスに触れられる場所が身近にあることが意識の違いとして現れているとも考えられる。
VRショッピングを根付かせるためには、セキュリティの向上やデバイスの進化に加えて消費者がデバイスに触れられる場所の拡大も必要になりそうだ。傾向としては日本も含めたアジア圏の消費者の方がヨーロッパに比べてVRショッピングに積極的なので、案外早く日本でもVR/ARアプリで買い物ができるようになるかもしれない。
参照元サイト名:The Drum
URL:http://www.thedrum.com/opinion/2017/09/12/chinas-retailers-lead-augmented-and-virtual-reality-the-rest-the-world-follows
Copyright ©2017 VR Inside All Rights Reserved.