VRを使って未就学児が安全に過ごせる空間を考える


VR技術を使えば、その場から移動することなく様々な環境を体験することができる。


ユーザの視点の高さを変更することもできるので、子供の目線から、あるいは自分よりも背の高い人の目からその空間がどのように見えるのかをチェックすることも可能だ。この特徴は、インテリアや公共施設の設計を行うデザイナーの助けとなる。


シンガポールでは、学校に通い始めるよりも前の段階の教育が重要だとされている。未就学児の教育を担当する教師は、子供たちを安全に保つためにVRを使って彼らが直面する可能性のある危険について学ぶことができるという。


プロジェクトSafe Heaven


子供の世界には楽しいことも多いが危険も多い


Institute of Technical Education College Central(ITE)で研修を受ける未来の教師たちは、VRを使って子供たちが過ごす5つの空間に潜む危険を学ぶことができる。プロジェクトSafe HeavenのVRで体験できる5つの空間は遊び場、教室(2種類)、トイレ(年齢に合わせて2種類)だ。


インターンシップの前に


シンガポールで幼児教育の教師を目指す学生は、二年間かけて学ぶ。その二年目には、6ヶ月間のインターンシップを行って教育の現場で学ばなければならない。


プロジェクトSafe HeavenのVR体験は、彼らがインターンシップで実際に子供たちを預かる立場になる前の研修として有効だ。現場でのインターンシップは2年目に行われるため、1年目にVRシミュレーションを通して学ぶだけの時間がある。


大人がそれで怪我をすることは少ないが、子供たちにとって壊れたおもちゃやテーブルの角などは危険だ。どういった場所に危険が潜んでいるのかを事前に学んでおけば、実際に子供たちが危険な目に遭う前に取り除くこともできるようになるだろう。


プロジェクトの内容


Safe HeavenプロジェクトのVR空間では、子供たちにとって潜在的な危険となり得るものを見つけて取り除かなければならない。研修を受けるユーザはVRヘッドセットOculusRiftを使ってVR空間に入り込み、コントローラー(画像を見る限り、Touchではなくゲームパッドを使用しているようだ)を使ってプレイヤーキャラクターを操作する。


危険だと思うものを見つけて調べると、その詳細が表示されるという。


プロジェクトの始まり


Safe Heavenプロジェクトの始まりは、2013年に遡る。


学生に幼児教育を教える教師たちのアイデアが元となり、実際に開発を行ったのはゲームアートやデザインを学ぶ学生たちだ。


安全への意識


プロジェクトに関わっているVinothini Mariappanは、教師が子供たちの安全に対する意識を持つことの重要性を指摘する。


「数年前に、地域の保育園で教師の過失によって起きた事故のニュースを読みました。


このVRプロジェクトは、学生がインターンシップに出る前に安全性に対する意識と感覚を植え付け、教師らしくしてくれるでしょう」


彼女は特定の事例を挙げなかったが、一例として2013年には生後9ヶ月の乳児が床に置きっぱなしにされたコーヒーのカップによって火傷をする事故が起きている。


VRの効果


おもちゃも扱い方によっては危険になる


VR体験の時間


VRで子供たちにとって危険になる可能性があるものを学ぶことができるコンテンツは、一つのシーンごとに10分程度がかかるという。全ての場面を通しても1時間程度と、ボリュームは控えめなので通常の教育コースに組み込むのも容易だろう。


ただ、VRを使うと気分が悪くなるユーザもいる。このコンテンツの場合も、初めてVRヘッドセットを利用する学生の場合は軽いめまいを感じることがあるという。特に乗り物で酔いやすい学生は、VR酔いを起こしやすいようだ。


もっとも、激しいアクションがあるVRゲームではないためかその症状はあまり酷くならないらしい。多くの場合には一つめのエリアを終える頃に治っているという。


学生の感想


VRを利用した学生も、その効果に肯定的だ。18歳の2年生、Noor Rashikin Mohamed RashidはVRが便利なツールだとコメントしている。


「VRゲームは、就学前の子供たちのための環境を視覚的により良く理解する助けとなります。


間違いなく、便利なツールです」


拡張されるプログラム


Safe Havenのプロジェクトで作られたVRゲームは、さらに機能の拡張が予定されている。


新たに、VR空間のオブジェクトをユーザが操作できるようになる予定だ。学生が子供たちのための椅子とテーブルやおもちゃをVR空間に配置し、安全で使いやすい空間をレイアウトする助けとなるだろう。


 


VRを使うことで、設計図や模型を使う場合よりも現実に近い感覚で空間をデザインし、体験することができる。この特徴は、デザイナーだけでなく子供たちと関わる教師にとっても便利なようだ。


いきなり実際の現場に行くと子供たちに振り回されてしまうことが考えられるが、事前に予想できる危険を学んでいれば注意を払うべき場所を見つけることができるだろう。このプロジェクトは、過去に起きたような事故の防止に繋がるはずだ。


 


参照元サイト名:The Straits Times

URL:http://www.straitstimes.com/singapore/education/making-pre-school-spaces-safe-using-vr


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 VR技術で幼児の安全な遊び場を考える