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イギリスで最も著名な美術学校であるロイヤル・カレッジ・オブ・アートの大学院生であるNat Martin氏は、HoloLensに対応した指輪型コントローラー「Scroll」のデモ動画を公開した。
デモ動画を見るとわかるように、同コントローラーはスマホの操作でいうところの「スワイプ」や「タップ」に相当する動作で、AR表示されたオブジェクトを操作できる。さらに、指輪の側面を親指でなでることによって、ちょうどマウスのホイールを回すようにARオブジェクトをスクロールさせることができる。
以上のような同コントローラーの動作は、指輪に位置と角度を検知するジャイロスコープとタッチセンサーを実装することによって実現した。
同コントローラーを開発したねらいとして、同氏は以下のようにコメントしている。
Scrollは、誕生したばかりのARテクノロジーを使って、日々行っている空間的なデジタル・インタラクションの新しいすがたを提案しています。
このコントローラーを使えば、日々使っているデジタル的な機能をより楽しく、より直観的なものにしてくれます。
そして、インターフェースがより直観的なものになれば、それだけやりたいことをより効率的かつシンプルに実行できるようになるのです。
同氏によれば、同コントローラーの動作を思いついたきっかけは、ヒトが色々な概念を空間的に把握する時の傾向を研究したことにあった、とのこと。この研究に関しては、以下のように述べている。
ヒトは、自分の祖父や組織のボスを空間的な「上」に置く傾向があります。
時間に関しても、空間的に把握する傾向があります。たいていヒトは、未来を「前方」に、現在を自分の現在位置に、そして過去を自分の「後方」のように考えるのです。
時間を空間的な前後関係として理解する傾向は、同コントローラーのスケジュール管理機能に応用されている。同コントローラーのスケジュール管理機能では、直近の予定がユーザーの手前に、時間的に後のスケジュールがユーザーの遠方に表示されている。
同氏は、以上のような様々な概念を空間的に把握するヒトの傾向を、今後のインタフェース・デザインに役立てるつもりだ。
VR・ARデバイスを指輪型のコントローラーで操作するアイデアは、「Scroll」以外にも事例がある。
VIVEの専用コントローラーやOculus Touchは、概してヒトの手よりは大型で、決してコンパクトとは言えない。
本メディア2017年4月28日付の記事では、コンパクトなVRコントローラーの研究をしているイタリア・シエーナ大学の試みを紹介した。
同大学の研究チームがコンパクトなVRコントローラーを研究する直接的な動機は、小型なVRコントローラーであれば、リアルとバーチャルの両方のオブジェクトを操作できる、と考えてのことであった。
同研究チームは、ちょうど指サックのようにはめて使うタイプと、指輪型のタイプのふたつのコントローラーを試作した(上の画像参照)。このふたつのコントローラーを使って、リアルとバーチャルの両方のオブジェクトがある環境で、バーチャル・オブジェクトを操作する実験を実施した。その結果、ふたつのコントローラーが、作業効率を上げることが実証された。
リング型コントローラーは、実のところ、日本企業からもリリースされている。それは、ログバーがリリースした「Ring」だ。
同コントローラーは、もともとはVR・ARテクノロジーを意識して作られたものではなく、スマホやスマートウォッチをジェスチャー・コントロールするために開発された指輪型ウェアラブル・デバイスだ。
同デバイスの画期的なところは、操作可能なデバイスが多岐に及ぶIoT(Internet of Thing:モノのインターネット)的な特徴も備えていることだ。そして、操作可能なデバイスには、モバイル型VRヘッドセットも含まれている(以下の動画参照)。
現在のAR体験はスマホを用いたものが主流であるが、AR体験に最適化されたインタラクションを実現しているとは言い難い。近い将来、AR専用デバイスが普及する時には、AR体験に最適化されたインタラクションが再考され、「Scroll」のようなコントローラーが注目されるのではなかろうか。
指輪型コントローラー「Scroll」のデモ動画を紹介したdezeenの記事
https://www.dezeen.com/2017/07/25/rca-graduate-scroll-ring-lets-users-easily-interact-with-augmented-reality-design-technology/
ログバーが開発した「Rng」公式サイト
http://logbar.jp/ring/ja/
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