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AR(拡張現実)は通常、現実には存在しないものを見せるために使われる。購入を考えている家具を室内に置いたときのイメージを確認したり、架空のキャラクターがそこに居るかのように表示して一緒に写真を取ったりといったアプリがその一例だ。
だが、AR技術を応用すれば存在するはずのものを見せないこともできるのだ。写真に写ってしまった不都合なものをフォトショップで隠すのと同じように、リアルに存在するオブジェクトを隠すARKitを使った動画が公開された。
公開された動画では、Appleが今秋配信予定のアップデートで提供を開始するARKitを搭載したiPhoneを使っている。ARKitを使ってARオブジェクトを表示した例はたくさん公開されているが、これは逆にリアルなオブジェクトをAR技術によって隠してしまった例だ。
机の上に置かれた鳥や布団の上に置かれたiPhone(実物)が、周囲に合わせたテクスチャを配置することで見えなくなる。
この仕組みは画像をフォトショップのような編集ツールで修正するのと同じだが、ARKitを使うことでライブ修正が可能となっている。ユーザが細かく修正を行わなくても、指定された場所にテクスチャが表示されるのだ。
ユーザが移動してもオブジェクトの上に重なるようにテクスチャが表示され続けるので、まるでそこに何もないかのように見える。
この動画を公開したのは、Laan Labsだ。Laan Labsは過去に紹介したARメジャーアプリも開発しており、ARの新たな利用法を考えていく中でこのアイデアが出てきたものと思われる。
現時点ではまだテクスチャの配置が完璧ではないため、画面を見ていればどの部分がARによって修正されているのかが分かってしまう。特に、木目がある木製の床やテーブルなどではズレに気づくユーザが多いはずだ。
だが、均一な壁面などであれば違和感を与えずに修正することも可能かもしれない。
これまでのARアプリでは存在しないものが存在するように見せることばかりが注目されてきたが、実際に存在するものを隠すためにAR技術を使うことも可能であると示した動画だ。
このアイデアがすぐに実用化されるようなものではないが、見る必要のないものを隠すことでより直感的な表示を行うことができるかもしれない。
例えば、AR表示が可能なカーナビアプリにこの技術を使うことが考えられる。
道路の映像にARで進むべきルートを表示するARアプリはSygicが実現している。地図よりも直感的とされるこのアプリに進むべきではないルートを隠すような機能が追加されれば、誤った道に入ってしまうことを減らせるかもしれない。
あるいは、ARを使ったマッチングアプリで相性の良くない相手は隠してしまうといったことも可能かもしれない。
スマートフォンのARで隠しても、直接前を見れば目に入ってしまうので効果は薄い。特に有効なソリューションになる可能性が高いのは、ARヘッドセットを業務で使う場合だ。
スマートヘルメットやゴーグル型デバイスにこの機能を搭載すれば、本来自分の担当ではないものが気になってしまうという事態を避けて担当する業務に集中することができるだろう。
映像を見ればすぐに分かる通り、ARによって何かを隠している部分には違和感がある。
本当に何もないかのようにナチュラルに隠すのはまだ難しいが、買い物中に無駄なものが視界に入らないようにすることで衝動買いを減らす、といった使い方は可能かもしれない。
iPhone一つで実現できる、これまでになかった新しいARのアイデアではある。この方法が効果的な利用法が見つかれば面白い技術になりそうだ。
参照元サイト名:Next Reality
URL:https://mobile-ar.reality.news/news/apple-ar-real-world-objects-disappear-thanks-textures-and-arkit-0178968/
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