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その合格通知書に面白い仕掛けを施して新入生に送った大学がある。中国の西安市にある西北工■(記者注:「業」の簡体字)大学(Northwestern Polytechnical University, NPU)がそれだ。
同大学は成績良好だった受験者に「AR合格通知書」を送付したのだ。こうした試みは中国でも初めてのことだという。
送られてきた紙の合格通知書の上でスマートフォンをかざすと、大学のバーチャルキャンパスモデルがディスプレイ上でAR表示される。
新入生がこのAR製の手紙を受け取るためには以下の手順が必要だ。
まず中国では広く知られた無料メッセージアプリ「WeChat(微信)」を使い、合格通知書の「pleying AR」と書かれたQRコードをスキャンする。次にNPUのARアプリケーションをダウンロードし、そして再び通知書を読み込むと手紙が出現するのだ。
ARでは3Dモデルと一緒に、NPUの歴史や学科の特色についての情報も表示される。
NPUの入学事務局副局長のXie Danは人民日報に対して次のように語っている。
「合格通知書は単に一枚の紙っぺらでしかありません。しかし注意深く埋め込まれたAR技術は、最先端をゆく(NPUの)性格、そして(NPUが持つ)プライドの感覚を提示するのに役立ちます。」
またXie氏は次のようにも語る。
「学校の歴史、そして学科の特色についてのイントロダクションは、合格通知書を生徒に対するこの上ない贈り物として仕立てる(NPUの)精神を表現しております。ARテクノロジーは入学情報を変化させえ、イノベーションへのドアを開けるのです」
ただの合格証明書だと思っていたら、AR技術が組み込まれていたというだけでも驚きだし、新鮮な体験であることは間違いない。
だがそれだけではなく、Xie氏が語るように新入生にとっては自身の進学先がどういうユニークな性格を持つ大学なのか、改めて知る機会ともなっていると言えよう。
とは言え「最先端の」「AR技術」と謳われている内容が、実際にはQRコードを読み取るだけ……というのは、些か物足りなさを感じざるを得ないだろう。
もちろん受け取った側の新入生がARを利用できないのでは仕方ないから、特別なデバイスがいらないこうした方式を採用するしかなかった、という事情は想像できるが……。
当たり前だがNPUでおこなわれている「最先端の研究」とはこんなレベルではない。
今回のニュースは、あくまで、大学から新入生へのちょっとした粋な心遣い程度に見るのがよいだろう。
そして実際、新入生にとっては合格通知書と一緒に届けられた貴重な体験、という意味で「嬉しいプレゼント」にはなっているはずだ。
ただあえて言えば入学前の新入生向けにXR形式で入学情報を提供するという試み自体は新しいように感じられる。
とは言え、全く前例がないわけではない。日本においても大学のオープンキャンパスなどでAR・VRによる説明会が開催されるなどしている。
たとえば日本では2016年夏に工学院大学で、高校生を対象にVR技術を用いたキャンパスツアーの疑似体験プログラムが開催されていたようだ。
また宝塚大学東京メディア芸術学部では大学説明会にて、同大学が企業と共同開発した「クローンズ・ゲート」の世界を体験するという試みも実施されていた。
AR・VRを利用して大学情報を発信することの意義は大きい。文字と写真だけのパンフレットよりも、より深く大学の魅力をプレゼンテーションできるいい機会になるからだ。
大学の研究室の様子や、施設紹介、あるいは一般的なキャンパスライフを追体験してもらうのにも使える。または代表的なサークルや部活動、他にも大学周辺の学生街を紹介するのにも使えるかもしれない。
もちろん入学前の受験生で高価なHMDを所有している人間はごくごく一部に限られてしまうだろう。オープンキャンパスで直接来てくれた人にHMDを渡してVR体験をさせるのなら別だが、遠方の学生に情報発信をおこなう上では、スマートフォンを介したAR技術の利用が一番現実的だろうか。
参照URL:
西北工■大学(Northwestern Polytechnical University)
http://en.nwpu.edu.cn/
人民日報
http://en.people.cn/n3/2017/0705/c90882-9237511.html
VR SCOUT
https://vrscout.com/news/chinese-university-students-ar-acceptance-letters/
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