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外国語を学ぶ祭、最も効率的な方法は現地へ赴いて、そこの文化や環境に直接触れて、つまり没入して五感を通じて現地の文化に触れることが外国語習得において最も手っ取り早い手段であることはよく知られている。
しかし、留学や旅行には時間的にも経済的にもコストがかかるため、誰でもすぐに行けるものではない。
その点においてVRは没入感の高い体験をユーザーにもたらすため、上記に挙げた没入感のある外国語学習を実現できることが期待されている。
ニュージーランドの企業が開発した外国語学習用アプリ「ImmerseMe」は、360度動画を駆使した没入型外国語学習ができるアプリで、現在試験的にではあるものの学校教育に使用されており、成果を上げている。
ImmerseMeは世界中の都市や風景の映像を見ながら外国語を学習するシステムで、それぞれの映像にはストーリーがあり、例えばパリのベーカリーでパンを買う体験を、現地で交わされる生のフランス語を動画と一緒に観ることによって、現地で行う語学学習に近いそれを実現しようとするものだ。
現在、本アプリはカードボードVR、PC、スマートフォンおよびタブレットでの使用に対応しているが、2018年中にはRift、VIVE、Gear VRにも対応する予定であり、VR空間での語学学習によって習得率が高まることが期待できる。
本アプリは現在、ニュージーランドのNelson College for Girlsにて試験的に運用されているが、同校の生徒であるRhona Aranは本アプリについて次のように語っている。
また、Melbourne Grammar Schoolに通う生徒は、
同アプリは多種多様な言語に対応しており、現在は英語、フランス語、日本語、中国語、スペイン語、イタリア語、インドネシア語、ギリシャ語に対応しており、数年以内にはさらに多くの言語が追加される予定。
ImmerseMeの開発者であるScott Cardwellが、外国語を効率的に学ぶに際して最も重要なことは、直接現地に赴いてそこの文化に五感で触れることであると気づいたのは、彼がヨーロッパを旅行している時だった。
リアリティのある環境に没入してストーリーを体験することが、外国語を身に着ける最短距離であることを理解した彼は、ImmerseMeの共同創業者であるHanff Beganと共に世界中を旅し、ドイツのコーヒーショップを舞台にした映像や、パリのベーカリーでパンを買う映像を360度カメラで撮影してストーリーのあるコンテンツに仕上げ、外国語学習に適した内容にした。
完成した製品はまず学校で採用され、上記にも挙げたような試験的導入から開始されたが、アプリを使用した生徒たちの感想はポジティブで、VRが外国語学習にもたらす効果を示唆する結果となった。
現在のところ一般ユーザーが使用できるのはChrome対応のデスクトップアプリとモバイル端末(iOS、Android対応)の2Dアプリ、およびカードボードVR用アプリ(iOS、Android対応)であり、ハイエンド機種(VIVE、Rift、Gear VR)への対応は2018年を予定している。
ImmerseMeは3種類のプランに分かれており、それぞれ公式サイトから購入できる。
学校での使用を目的にしたプランであり、料金は$40/年。
・Travellerプランより66%割引。
・すべての言語にアクセス可能。
・Emailによるサポート。
・Google Chromeとの互換性。
・教員は無料でのアクセスが可能。
・(学校名など)所属機関の証明が必要。
標準プランであり、料金は$120/年。
・すべての言語にアクセス可能。
・Emailによるサポート。
・Google Chromeとの互換性。
ビジネスプラン、$300/年。
・ビジネス用プレミアムコンテンツを含む全てのコンテンツにアクセス可能。
・すべての言語にアクセス可能。
・EmailとSkypeによるサポート。
・Google Chromeとの互換性。
学校、および学術機関での使用の場合、30日間のフリートライアルを使用することが可能で、アクセスできる人数に制限は設けられていない。
詳細は公式サイトにて。
(7月24日14:30追記)
(追記執筆者:池谷 翼)
VRInsideは「VRを通じた言語学習」という興味深い内容に魅かれ、ImmmerseMeにインタビューを申し込んだ。
結果として担当者のScott Cardwellさんから、ImmmerseMe開発に際して語学学習者のために意識した点などについて様々なお話を伺うことが出来た。
以下ではその内容を紹介していこう。
――――現時点でImmmerseMeの対応する開発システムにはどのようなものがありますか?
Scott Cardwellさん:現在のところImmmerseMeは、Google Chromeデスクトップブラウザでのアクセスを対象として開発されています。
私たちはあらゆるWebブラウザと、iOSやAndroidといったモバイルデバイスの互換性を調査しました。
来年までにはCardboardとサムスンのGear VRに対して互換的なバージョンをもっているVRをリリースしたいと思っております。
OculusRiftとHTC ViveといったHMDへの対応は2018年末までに行うことを予定しております。
――――ImmerseMeの教育プログラムの内容について具体的に教えて頂けないでしょうか?また、ユーザーがそのプログラムを受講した場合、一般的にどのような言語レベルにまで到達することが可能なのでしょうか?
Scott Cardwellさん:ImmerseMeは360°VRコンテンツと発話認識テクノロジーを活用して制作されたオンライン言語学習ツールです。
例えばコンビニエンスストア、レストラン、博物館などといった特定の場所を訪れて、ターゲットとする言語を通じたコミュニケーションを学習する、という体験をシミュレートするよう設計されています。
私たちは現在、9つの言語をサポートしております。
日本語、英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、ギリシャ語、マンダリン(中国語普通話)、インドネシア語です。
まったくの初心者の方でもImmerseMeを使って毎日シナリオに触れていれば、使用開始から数か月以内には流暢になっていらっしゃるかと思います。
ImmerseMeでは言語のリスニング、リーディング、スピーキングの学習について特に焦点を当てております。
――――日本語コースのVR動画はどこで撮影されたのでしょうか?
Scott Cardwellさん:日本語コースの映像は、全て東京で撮影いたしました。
――――ImmerseMeの開発に際して、外国語を学びたいと考えているユーザーのために気を付けた点などはありますか?
Scott Cardwellさん:私たちは学生やビジネスパーソンなど旅行者の方々がおこなうコミュニケーションを手助けするのに相応しいツールを開発したいと考えました。
そうした理由から先ほどお話したように、コンビニエンスストア、レストラン、博物館、ホテル、カフェ、ベーカリー、学校、路上といった場所での実践的なシナリオを集中的に取り扱っております。
―――近年、VRを教育現場に導入する動きがアメリカなどでも広く見られるようになっています。教育目的のVRが発展していくことに対しては期待を寄せていらっしゃいますか?
Scott Cardwellさん:世界中でVRがポピュラーな教育ツールとなることを期待しております。
教育を目的としたVR産業は依然として新しい分野です。
FacebookやGoogle、サムスンがVRHMDなどのコンシューマ向けハードウェアを開発し始めてからわずか1、2年ほどしか経っていません。
私たちはVR産業に対して教育の分野で関わっていることに心が高鳴っております。
未来がどのようなものになるのか、見届ける日が来るのを待ちきれません!
語学学習用AR・VRアプリは続々と開発、リリースされ続けている。
イーオンはVR英会話学習アプリ「英語でおもてなしガイド(VR対応)」を、また語学学習アプリMondlyを開発したAti Studioも今年2月からVR語学学習アプリ「Learn Languages VR by Mondly」をそれぞれ公開している。
将来的には外国語学習事業を手掛ける多数の既存の有力企業が参入してくることは間違いないだろう。
そうした中で自社の開発製品に、競合他社の製品に無いオリジナリティを与えていくことはますます困難になっていくはずだ。
しかし今回Scott Cardwellさんにお話を伺ったことで、改めてImmmerseMeの「強み」を理解することが出来た。
それはImmmerseMeが「360°動画」を採用している、という点だ。
ImmmerseMeはCGで構成されたVR空間で、バーチャルアバターに対して話しかけるという学習方法ではなく、実際に現地で撮影した映像を元にプログラムを設計している。
もちろん、初心者でも数か月で上達可能、かつ現地での日常的会話を想定した「実践的シナリオ」が組み込まれているという点も特長だ。
しかし現地での学習体験を可能な限りリアルにシミュレーションしようとするImmmerseMeの試みこそが、少なくとも現段階では他の言語学習アプリには見られない最大のアドバンテージとして機能しているように思われる。
VRで語学学習を行うメリットとしては、一般的に「人目を気にせず会話練習ができる」などが挙げられる。
しかしこうした「シチュエーションに視覚的なリアリティを持たせること」も、学習者が学習ツールを選択する際のインセンティブとして十分機能するのではないだろうか。
参照元:VRFocus
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