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海外はもちろん、日本でも医療や不動産、エンターテイメントや教育分野にもVR/AR/MRが活用され始めている昨今、建築業界でも同テクノロジーの導入事例が増えてきている。
建設前に施主と完成イメージを共有したり、建設現場の施工状況の確認を行ったりなど、その用途は様々だが、まだまだ実用化に至っているケースは少ない。
そんな状況の中、着々と実用化に向けて、開発を進めているのがインフォマティクス社が開発しているMR支援ツール「GyroEye Holo」だ。
2017年6月7日(火)に鴻池組(こうのいけぐみ)が施工主を務める、現在工事中の東京大学本郷キャンパス理1号館にて「GyroEye Holo」の実証実験が行われ、その有効性の検証が行われた。
本記事では、実証実験の実施から見えてきた「GyroEye Holo」の有効性と課題について、ご紹介していきたいと思う。
「GyroEye Holo」はHololensを装着し、建築現場等で設計図面をホログラムとして実寸で現実世界に投影し、様々な検証を視覚的に支援するツール。
利用時の流れとしては、2次元図面(DFXやDWGデータ)を、GyroEyeコンバータを経由してCMSへアップロードし、アプリ経由でHololensにダウンロード。その後、実際の現場に移動し、Hololensを装着すると、実寸大の図面をその場にオーバーラップさせることができる。
製品紹介はコチラ:
・Hololensで設計図面を実寸で現実世界に投影する「GyroEye Holo」が2017年夏頃、販売開始
今回の実証実験の内容は以下の通りで、実際の現場を使って行われた。
実際の業務手順に沿って、施工状況をチェックしたり、天井や床などに表示された図面を見たりと、その有効性の検証が行われた。
その後、別途時間をいただき鴻池組の現場所長である小野氏と、「GyroEye Holo」を開発するインフォマティクス社の金野氏に、お話をお伺いし、感じた可能性や改善すべき課題に関してお話を伺ってきた。
—率直に現場で使えると感じましたか?
小野氏:今までVRやARなど、様々なテクノロジーの導入を検討しましたが、今回の「GyroEye Holo」は今までのモノより一歩進んでいる、そんな印象を持ちました。
マーカーを軸に位置や高さなどが正確に取れるので、簡単に現場の設備や配管などを見れる事には利用価値が高いと感じました。
ただ、墨出しなど実務で使うには、もう少し高い精度が必要かなとも感じました。
今後、精度が高まり、オンスケ―ルで墨出しができるようになると大きく業務時間の短縮になるので、ぜひ期待して待ちたいと思います。
—他にはどんなシーンで使うことが考えられますか?
小野氏:直近だと一番、現実的なのはある程、現場が出来てきた際の最終チェック時に使えると思いました。
他にも設備系の方には高さ関係がわかるので、いいかもしれません。ダクトがどうなっているのかなどは、図面だけだとイメージしにくいですが、「GyroEye Holo」だとその点、簡単に視覚化されて見えるので、イメージしやすいですね。
—もし精度が実用化レベルまで高まった時、Hololensを装着したまま、作業できそうですか?
小野氏:安全面を考えると、少し怖い部分はあります。オブジェクトが死角になったり、Hololens側の操作に夢中になり、危険物を察知できないなど、現場は何が起こるかわからないので。
金野氏:本リリース後のバージョンアップ等で、アプリ側で表示/非表示の制御ができるようになり、作業とチェックを切り分けられるようにしていく予定です。
小野氏:なるほど。あと、もう少し見やすければ嬉しいですね。
現場だとヘルメット必須なので、少し動いてズレたりすると、毎回直さないといけないのは結構手間なので。ヘルメット一体型Hololensとかがあると便利ですね。
—実際に試してみて、他にも欲しいと思った機能などはありますか?
小野氏:空間上にチェック機能などを設け、作業者が確認している様子を動画としてクラウド上に保存できるなど、エビデンスが残せるようになると嬉しいですね。別途、工程管理などに時間を割かないで済むようになるので。
他には、Hololensの映像を事務所で見ながら、設計者と実務担当者がリアルタイムに会話できると、手戻りが減り、ここも工数削減につなげることができると思いました。
あとは、現場では手が塞がっていることが多いので、音声操作ができる便利です。
金野氏:現在、Cortanaが英語のみ対応している状況なので、今後アップデートで日本語に対応した際には検討します。ただ、現場だと騒音が大きく、反応しない可能性もあるので、音声以外の方法も考えないといけないと感じています。
—続いて、今後の開発方針についてお伺いします。今後は精度を高めることはもちろん、屋外での利用にも対応していく予定ですか?
金野氏:そうですね。今回の実証実験でも使いましたが、Hololensとサングラスを組み合わせた仕組みを試してみた所、非常に良好な結果が得られたので、屋外利用を想定した開発も行っていく予定です。
あとは、様々なお客様に試していただいている中で、既存のパッケージに収まらないケースが多々出てきているので、個別にカスタマイズも行っていく予定です。
—例えばどのような需要があるのでしょうか?
金野氏:弊社はGISソフト(※1)の提供も行っている関係で、電気・ガス・水道や土木関係などインフラ系の企業様とお取引きがあるのですが、こちらだとメンテナンスの需要が高いですね。
例えば、特定の場所に修繕時期を登録しておくと、Hololensを装着した人がその付近を歩くだけで、アラートが飛び、修理漏れがなくなるといったような保守面で利用したいという声がかなり多くなっています。
HoloLens側で正確に位置を認識しているので、作業員がどこにいるのかなど安全管理面でも有効ですね。
※1.GISソフト「SIS」
地図の作成/編集から、地図データの管理、アプリケーション開発まで幅広くこなせる、拡張性に富んだ地理情報システム(GIS)。
多種類の地図データフォーマットへの対応をはじめ、その柔軟かつ強力な機能と優れた操作性が高く評価され、行政、警察、インフラ、電力、通信、ビジネスなどの分野で広く活用されている。
—最後に本リリースの時期や価格帯についてお教えください。
金野氏:今検討中ですが6月21日(水)~6月23日(金)に東京ビックサイトで開催される「3D&バーチャルリアリティー展」でもう少しお話しできるかもしれません。
—本日はありがとうございました。
今回の実証実験で、精度や安全面など解決すべき課題の抽出と、有効性の確認が取れたことは大きな収穫だったのではないだろうか。
既にインフォマティクス社は、精度向上はもちろん、安全面の対策、屋外での利用など、抽出できた課題に対する解決のため、動いている。
今後、どのような形でこれらの課題を解決するのか? その結果は本リリースを待てば自ずとわかるはずだ。 続報を待ち、改めてご紹介したいと思う。
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