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5月30〜31日にかけて、名古屋国際会議場で開催されたJapan VR Summit 2017のレポート、本記事ではVRが様々な業界で、様々な用途に用いられている様子を特集する。
会場となった名古屋国際会議場では、現在VRをビジネスに取り込むべく開発、研究を行なっている企業によるブース展示が行われていた。
豊田ハイシステムが展開する「就職活動 x VR」は、求人の際の企業のオフィス紹介を360度動画で行うものであり、筆者はGear VRでこのサービスを体験したが、この時閲覧したのは豊田ハイシステム社内を紹介する動画であり、社員のナレーションと共にオフィス内の雰囲気、社員同士のやりとり、食堂や各部署の担当者などのインタビューが収録されており、メニュー画面から自分の興味のある部署の映像を選んで観ることができる。
これによって就活生は遠方のオフィスへと赴くことなく、VRによってオフィスの様子や雰囲気、社員のインタビューを観ることができるが、そこには360度動画ならではの没入感があり、写真や2D動画にはない「まるでそこにいるかのような感覚」になることができ、企業研究において重要なツールになると感じた。
現在、「就職活動 x VR」は大学生であれば誰でも無料で利用できるカフェ「知るカフェ」で運営されており、関東、関西、東海、九州の上位校近隣に設置されている。
創業120年の歴史を持つ電気機器メーカーである明電舎は、安全教育にVRを活用しており、「VR安全体験教育」として全国出張販売も行なっている。
明電舎は10年以上前から安全体感教育を実施しており、たとえば感電事故防止のために人体に無害なレベルの電気ショックを与えて事故防止意識を高めたりといった具合に、実際に目で触れて、体感して覚えることをコンセプトとした安全教育を行なってきたが、VRを導入することによってこれまでカバーできなかった領域の安全教育が可能になったという。
例えば、VR空間上でビルの屋上に設置された足場から墜落する「墜落体験」や、電気カッターでパイプを切断している時に火花が飛び散る「火傷体験」など、実際に起こってはいけない事態をVRで仮想的に体験することによって、防災意識を高めることが狙いであるがその効果は高く、墜落体験の際にVRに没入して飛び降りることができない社員もいるという。
株式会社アルファコードが展示していたのは8K解像度の360度映像をHTC Viveで鑑賞するというものであり、筆者も体験したが、従来の360度映像にあった画面のぼやけがなく、秋葉原の街並みやグランドキャニオンの大自然、マーライオンの実在感などがハッキリと、細部に到るまで鑑賞することができた。
現在同社は360度動画を駆使した様々なサービスを展開しているが、そのうちの一つが「ぐるっと高知家バーチャルツアー」であり、高知県のPR動画を8K映像で制作したもので、東京都内にある高知県のアンテナショップにて体験することができる。
YouTubeで観られる動画の解像度は4Kまでだが、8K動画は容量が大きく超高解像度であるため再生にはハイスペックのゲーミングPCが必要であるため、現在のところはイベントでの体験型の上映として展開しているとのこと。
建築やデザイン、自動車生産などの製造業でもVRを取り入れる動きは加速しており、JVRSでも製造業に特化したソフトウェアが展示されていた。
CATIA 3DEXPERIENCEは、仏ダッソー・システムズが開発するハイエンドCADのCATIAの最新バージョンであり、HTC Viveに対応していてVR空間の中で3D CADをReviewできる。
デモではバイクの3Dデータを実物大でVR空間内で観ることができ、トラッカーを使って様々な角度から製品の完成図を検証することが出来、これによって従来のモノづくりで発生していた大きなコスト、例えば、試作品を何度も作り直す必要がなくなり、また製品設計の際の空間理解が深まることで、より迅速で正確な設計上の決定が可能になる。
VRソフトウェア制作会社のDVERSE社が開発する本ソフトも3D CADデータをVR空間上で閲覧できるソフトであり、対応プラットフォームは現在HTC Viveのみだが、後ほどOculusRiftにも対応していく予定。
建築や土木での利用を想定しており、例えば建物のCADデータを読み込むとミニチュアの模型として現れ、コントローラーを使ってポイント表示するとそれが実寸大に拡大され、まるで本当にそこにいるかのような感覚になり、工事を始める前に完成図をあらかじめ体験する、といった使い方を想定している。
現時点では、対応する3D CADデータはTrimble社のSketchUpのファイル形式のみで、Steamの公式ページでダウンロードすることができる。
ポーランドのImmersionが開発するTrue ScaleはオフィスデザインをVR空間で行うアプリで、CES 2017にて発表された。
直感的な操作が特徴であり、HMDを装着するとそこは小ぎれいなデザインオフィスになっていて、目の前には設計図を描くための大きな画板、右下には正方形の大きな机が置いてあり、画板に壁の線を引いてから横の机に目をやると、設計図の壁が3Dの模型として表示されている。
模型にコントローラーのポイントを当てると、それが実寸大表示されて中に没入することができ、その中で椅子や机を自由に配置したり、また画板に戻って設計図を書くこともできる。
True ScaleとSYMMETRY alphaはHTCがデモ展示しており、体験するには整理券が必要なほど盛況を呈していた。
就職活動、安全教育、町おこし、インテリアデザイン、様々な用途にVRの使い道が見出されているが、VRをビジネスに取り込むことには、どのようなメリットがあるのだろうか。
家や車、バイクなどは設計図やスケッチ、写真を見ただけでは完成時のイメージを掴むのが難しいが、VRであれば没入感のある空間で完成時と同じものを実物大で見ることができるので理解しやすく、また複数人での検証の際の「認識のズレ」を解消することができる。
データを、同じVR空間で複数の人間が共有することができるので、コミュニケーションや理解が円滑になり、データの送信や人の物理的な移動の必要がなくなる。
試作品の制作や、モノやヒトを移動させる必要が省けるため、時間的、物理的、経済的にコストカットが可能になる。
VRを職場で活用するメリットや使い道はまだ開発段階であり、これからどんな可能性やアイデアが生み出されるのか、今後も注目したい。
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