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VR業界は、将来大きな利益を生み出すことが期待されている。その予想金額は調査会社や投資会社によって幅があるが、ゴールドマン・サックスは2025年までにVRビジネスが800億ドル(8.9兆円)を生み出すと予想しているほどだ。
テクノロジー企業やエンターテイメント企業はVRが生み出すこの大金の一部を、それもなるべく多くを得ようと競争を繰り広げている。
IMAXもVR事業に参入した企業の一つだが、同社は家庭用のVRよりもVRアーケードに期待をかけているようだ。
映画館で名前を目にすることの多いIMAXは、映像や音響にこだわった環境で映画を提供するエンターテイメントのプロフェッショナルだ。そんなIMAXは以前からVRに注目しており、2016年中にはイギリスのマンチェスターを皮切りにVRアーケードをオープンすることが予定されていた。
残念ながら予定が遅れて2017年にずれ込んでしまったが、2017年の2月にはロサンゼルスで初のVRセンターをオープンしている。施設内は映画館のようなシステムになっており、複数のプログラムから好みのコンテンツを選んでチケットを購入することで体験できる。
チケットのシステムはまさに映画と同じで、事前にインターネット経由で購入する他にカウンターで当日券の購入も可能だ。オープン直後だと人気コンテンツはほとんど完売で、ネット予約必須となるほど盛況だったようだ。
IMAXによれば、このセンターでの短いVR体験は熱狂とともに受け入れられているという。
4月に入ると、IMAXは2017年の末までにVRセンターを世界へ展開することを発表した。そのオープン予定地には東京も含まれていた。
だが、まだ足りなかったようだ。IMAXは多くのVRファンに対応するため、VRセンターの数を発表時の6から11へと増やすために動いている。
5月26日、アメリカで2番めのVRセンターがマンハッタンのマルチプレックスにオープンした。アメリカには合計5つのVRセンターが開設される予定となっている。
世界ではこの他に東京、上海、トロント、マンチェスター(イングランド)、フランス、そして中東にVRセンターをオープンする予定だ。
IMAXのCEOはまだ学習段階だとしている。経験を積んだ後には、さらに多くの国と地域でVRセンターを開設するのだろう。
「この先行テスト段階では、バラエティに富む地域を選択しています。性格の違う土地を選ぶことで、どういった地域がVRセンターに適しているのかを確かめることができます。
まだ学びの段階です」
IMAXがVR事業を展開すること自体は、自然だ。VR業界は大きく成長することが期待されており、そもそもVRコンテンツで重視される映像と音響はIMAXのお得意の分野である。
加えて、映画を始めとする従来のエンターテイメント市場が伸び悩んでいるという理由もある。そのため、多くのエンタメ関連企業がVRでの成功を目指しているのだ。
VRは比較的高価な遊びとなっているにもかかわらず、消費者はVRセンターを利用している。
IMAX VRセンターのチケットは10ドルと高くはないが、一度の体験時間は10分程度だ。1時間あたりの価格に換算すると、その価格は一般的な映画の10倍を超えてしまう。
ユーザが積極的にお金を使ってくれることは、それだけでもVR事業を行う理由になるだろう。
単にVR事業で収益を上げたいと考えるなら、VRセンターを開設するよりもコストのかからない家庭用VRデバイス向けのコンテンツを制作する方法もある。
高品質なVRコンテンツを処理できるデバイスとしてはViveやRiftといったPCベースのヘッドセットだけでなくPSVRが選択肢となる。DaydreamやGear VRのようなモバイルVRは処理能力で劣るが、利用するユーザの数は多い。
だが、Gelfondは家庭用VRデバイス向けのコンテンツを作ろうとは考えなかった。むしろ、そうしたデバイスの販売が期待を下回っていることをVRアーケードにとってのチャンスだと捉えたのだ。その見方は間違っていなかった。
2017年の最初の4ヶ月だけでも、ロサンゼルスのVRセンターには25,000人以上が訪れた。その収入は週に平均15,000ドル(166万円)にもなる。100箇所あれば、年間の売上高は2,500万ドル(28億円)になると見積もられている。
ニューヨークのVRセンターはロサンゼルスのセンターと異なり、IMAXシアターの隣にある。ロサンゼルスと比較することで、IMAXはVRセンターを展開するのに適した土地の条件を知ることができるだろう。
映画館とVRアーケードが娯楽を目的に訪れる顧客を取り合ってしまう部分があるとしても、相乗効果はそれ以上に大きいと期待されている。
映画の視聴者はヒーローの活躍を見て興奮した状態になる。さっきまで映画で見ていた世界をVRで体験できるなら、10ドルを追加で払っても良いと考えるのではないだろうか。
ニューヨークのセンターが成功すれば、大都市にあるIMAXシアターの横にはVRセンターが併設されるのが一般的になるかもしれない。
自社の技術を活かせる、成長中の業界であるVRに期待をかけるIMAX。家庭用のVRデバイスはその価格やコンテンツ不足を理由に普及が遅れているが、それがVRアーケードにとっては追い風になっている面もあるのだろう。
かと言って、VRアーケードの成長で家庭用VRが売れなくなるとも限らない。アーケード向けに生まれたコンテンツが輸入されることで、コンテンツ不足の打開に繋がることすら考えられる。
VR業界に参入するプレイヤーは日々増えている。複数の企業やプラットフォームが影響を与え合い、複雑な利害関係が生まれつつあるようだ。
参照元サイト名:Bloomberg
URL:https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-05-26/virtual-reality-isn-t-a-hit-at-home-so-imax-tries-arcades
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