- 週間ランキング
藤井 香那:株式会社MIWAKU代表取締役社長CEO。2017年3月横浜国立大学卒業。ゴロー株式会社には2014年からインターンとして従事し、同社の発展を中核メンバーとして支えてきた。2017年4月にユナイテッド株式会社の社内起業支援制度「U-start」を活用して子会社MIWAKUを設立。チャット型小説アプリ「ちょこっと」を運営している。
村田美寿穂:2017年3月青山学院大学卒業。ユナイテッド株式会社 Kazary PJ責任者。内定者時代にユナイテッド株式会社の社内事業「スタートUアップ」(現U-CHALLENGE)で優勝し、事業立ち上げを行う。カフェや美容室等の空間を展示場所とし、クリエイターとマッチングさせる「Kazary」を提供中。
新嘉喜りん(聞き手):2012年ユナイテッド株式会社入社。現在キラメックス株式会社広報担当。
新嘉喜:本日はよろしくお願いします!最初に事業立ち上げのきっかけを教えてください。
藤井:大学時代に株式会社アラン・プロダクツ(旧ゴロー株式会社)で約3年間インターンをしていたんですけれど、そこではインターン生という立場でしか働けなかったのですが、会社のバイアウト※という成功体験があったときに、今度は自分で成功体験を実現したいという気持ちがありました。
※2016年9月、アラン・プロダクツ(旧ゴロー)評価額13.5億円でユナイテッド株式会社の子会社化。
ユナイテッドにジョインしたタイミングで起業を考えていて、そのときに手嶋さん(ユナイテッド取締役 兼 常務執行役員)とお話をしてユナイテッド内で起業する機会をいただいたのがきっかけです。
新嘉喜:自分で起業する選択肢もあったと思うのですが、社内起業を選んだ決め手はなんですか。
藤井:自分が必ず会社の代表であり続けたいという気持ちは実はなくて、大きなプロダクトを作りたいんです。一番好きなプロダクトがAmazonなんですけど、Amazonみたいな大きなプロダクトを作りたいという気持ちが強くて。ただ、まだ未熟なので、そこにいくには何ステップも必要だと思っていて、まずはゼロからプロダクトを作れることが必要だと思っていたんですね。会社をつくるには資金集めなども大変なので、最速、最短で会社とプロダクトが作れるいいお話をいただいたので決めましたね。
新嘉喜:プロダクトに集中できるところが大きかったんですね!Amazonが一番好きな理由は何ですか。
藤井:AmazonはITというかゴリゴリの配送業で、なくてはならないサービスになっているところが素晴らしいと思うんです。一番好きなのがAmazonプライムという、ユーザーに年間約4,000円を課金させてまでこのサービスに入りたいと思わせる価値を創り上げたのが凄いなと思っていて。私はユーザー課金がサービスの本質だと思っていて、そういうプロダクトを作りたいですね。
新嘉喜:村田さんはユナイテッド社内で新卒1年目にして事業責任者の立場ですが、きっかけはなんだったのでしょうか。
村田:大学は芸術学部だったので、アートやクリエイターといった芸術分野にずっと触れていたんですけど、芸術自体が世の中に広まっておらず狭い世界のものだなと思っていて、どうにか広めたいという気持ちがずっとあったんですね。なので、学生時代にフリーペーパーを作ったりしていたんですけれど、影響力は大きくなくて。その頃から、ぼんやりとですが一つの事業として、芸術をインターネットの力で広めていきたいという思いがずっとありました。
その後2016年にユナイテッドの内定者として、子会社のキラメックスでインターンをしていたのですけど、サービスが成長するところを近くで見ていたり、ユナイテッドの新規事業案を考えるキャンプに参加しているうちに、自分でやりたい思いがどんどん膨らんでいって。そのタイミングで、内定者でも参加資格のある事業化を前提とした事業創出プログラムがあって参加して、有り難いことに優勝でき、事業化の機会をいただけました。
新嘉喜:内定者で優勝、すごいですね。
村田:インターネット業界での経験は内定者インターンしかなかったのですが、やりたい気持ちと環境が目の前にあるのに絶対嘘はつきたくないと思い、行動をしたこと自体に大きな意味がありました。事業に対して熱意を持った人が挑戦できる環境が、ユナイテッドにはあると実感しています。
新嘉喜:藤井さん、株式会社MIWAKUの事業内容を教えていただけますか。
藤井:今は「ちょこっと(chocot)」というチャットのように読み進められるアプリを運営しています。元々海外で「HOOKED」という、タップでチャットのように読めるアプリが流行っていたんですね。現在ほとんどの人がLINEやFacebookメッセンジャーなどのチャットを使っているので、その形式でお話が進んでいくというのは新しいと感じていました。一方で、日本にはずっとケータイ小説という文化があって、今でも「魔法のiらんど」は根強いファンがいて、月間数億PVあると言われているんですね。ただ、サービスがスマホライクではないんですよ。チャットのUIに人々が慣れているというところと、ケータイ小説という台詞が多いストーリーが根付いているというところでサービスを作ろうって決めました。
10月まではプロの方に頼んで作品を書いてもらっていたんですけれど、11月からはユーザーが投稿できる機能というのを追加して今はCGM※としてサービスを提供しています。
※ユーザーによるコンテンツ投稿型メディア
新嘉喜:いろんなアイディアを検討したと思うんですけど、藤井さん自身がチャット型小説を「やりたい」と思った決め手はなんですか。
藤井:個人的に、スマホアプリとCGMにものすごく興味があったんです。私もずっとケータイ小説にハマっていたのでとても思い入れもあって、CGMができるのでやりたいと思って。難易度は高いと思ったんですけど、100%子会社で大胆に挑戦できるという機会がある中で、こういった話題性のある分野で挑戦したいと思いました。
新嘉喜:話題性、と言うとやはり競合サービスも複数ありますが、「ちょこっと(chocot)」はどんなことを目指していますか。
藤井:私が女性なので、そこは強みとして活かしていきたいですね。女の子たちが楽しめる作品を増やしていきたいです。「HOOKED」の場合は、完全にホラーが当たったんですけど、「怖い」という感情は分かりやすいのでSNSとの相性もよいんですね。「怖かったよ」というのは一言ですぐ伝わるんですけれど、「面白いよ」だと分かりにくいというか。同じ30秒でも怖い気持ちにさせるよりも、キュンとさせるとか、面白い気持ちにさせるというのは結構難しいんですね。ホラーは既に人気があるのがわかっているので、今はそれ以外のカテゴリでどう面白くしていくか、人が感情移入できるか模索しています。
新嘉喜:村田さんはいかがですか。
村田:「Kazary」というクリエイターさんと新しい展示場所を繋ぐサービスをメインでやっています。クリエイターさんは基本的にギャラリーなどで絵を展示をするんですけれど、ギャラリーは限定的な場所で興味がある人や、知り合いの人しか来なかったりするんですね。あと借りるお金が高くて、1週間10万円以上かかっちゃうんです。もっと気軽に作品を発表できる場所が提供できないかと思って、例えばカフェや美容院のような身近な場所を展示場所とし、クリエイターさんに提供するサービスを、一部実験的なところもありながらやっています。
新嘉喜:事業創出プログラムのときにお話をききましたが、そのときから、色々調査や検証を重ねて今の事業モデルに至ってると思うのですが、どういった背景がありましたか。
村田:最初はインターネットのサービスを考えていたんですけど、クリエイターさんにヒアリングをしていると、やっぱり自分の実物の作品を見て欲しいとお話をしていて。今は、SNSなどたくさんの人に作品を見てもらえる場所があるんですけど、それでもやっぱり実際の作品を見てもらえる方が嬉しいんです。質感や描いた跡みたいなものを、生で見て欲しいものなんですね。そういった、「リアルの場所」というのは需要があるんだなと思ってました。
私たちがやろうとしていることは、市場が大きいとか、今伸びているというアプローチではないので、まずはユーザーが本当に使いたいと思うサービスを作ることを一番大事にしました。クリエイターさんの課題を解決して、彼らに使ってもらえるサービスを作るところから入ったんです。
新嘉喜:もう実際にカフェやレストランで展示を開始されてますよね。反応はどうでしょう。
村田:クリエイターさんからも店舗さんからも、やってよかったという反応が多いです。今まで、ただの壁だと思っていた場所にアート作品がくることで、雰囲気や気持ちが変わりますよね。あとは、その作品を見にお客さんが来られたりするケースもあり、集客にもつながったというお話もいただいております。
新嘉喜:お二人とも最初はひとり+ユナイテッドの役員という体制で立ち上げたんですよね。村田さんは、金子さん(ユナイテッド代表取締役COO)、藤井さんは手嶋さん(ユナイテッド取締役)。当時大学生や新卒1年目でそのような環境はどうでしたか?
村田:私とは目線が全然違うと感じましたね。目の前の事象だけじゃなくて、ミクロとマクロ両方の時間軸で世の中の流れをみてて議論するので、私もそういった思考を意識するようになりました。
新嘉喜:藤井さんはどうですか。
藤井:手嶋さんも山下さん(ユナイテッド取締役)も精神的な支えというか、お父さんみたいな感じで。私自身プロダクトに集中していると、目線が狭くなってしまうことがあるんですね。私は突き進むんですけれど、その先にはこういうリスクがあるよねと指摘してもらってます。二人のような方々が、後ろにいる安心感があるので自由に動けるんです。また、ものすごく距離が近くて毎日チャットで話をきいてもらっていますし、迷ったときのアドバイザーとして本当に頼りにしています。
村田:私も同じですね。その他にも、社内のいろんな人が応援して声をかけてくださって、心強いです。バックオフィスが既に整っているので、社内で事業を起こすことの良さだと思いますね。
新嘉喜:企画をするときに気をつけていることはありますか?
藤井:私自身がもの凄く普通の一般の20代前半女性だなと思っていて。友達に奨められたものはすぐにハマれるし、世の中で流行っているものに対して夢中になれるんですね。なので、自分が好きなものだったり、いいなと思えるものは一般の人も好きなものなんだなというところは自信があります。自分が普通すぎるからこそ、良いという面があると思うのでその部分を大事にしています。
新嘉喜:プロデューサーとして、意識的に流行っているものをやってみるというわけではないんですね。
藤井:違いますね。普通に受け入れてて本気でハマります笑。最近では、美寿穂ちゃんに「ユーリ!!! on ICE」を教えてもらったんですけど、本当にハマって、ずっと見ています。高校生や大学生みたいなハマり方をしてしまうんですね。でも、その感覚は大事だと思っています。
新嘉喜:サービスを作るプロセスで、気をつけてやっていることはありますか?
藤井:Twitterでユーザーになりきるんです笑。ユーザーヒアリングに近いんですけど、例えばこういう高校生にインタビューして日常が知りたいなと思ったら、自分で高校生のアカウントを作るんです。LJK(Last JKの略で高校三年生のこと)とか、何部とか、そういった書き方もマネして完全な女子高生のアカウントを作り上げて、近しい高校生に絡みにいくっていう。そうやって相手を理解するようにしています。今テスト中なんだなとか、どのように世の中を見ているのかなどを見ていますね。いろんなことがわかるんですよ。フォロワーをみれば、一発でどんなものが好きかとか、どんな人とつるんでいるかわかりますし。
村田:私もTwitterのトレンドを見ています。その日の日本で何が話題になっているか全部分かるんですね。どうして話題になっているんだろうとか、人がどんなことに興味を持っているんだろうとか自分なりの分析を日常的にしています。
あとは、ユーザーになる人たちがどういう生活をしていて、どこにお金を使っているかとか、どうやって稼いでいるとか、どういう時間の使い方をしているかというのは調べます。そのうちのどれかを使ってもらうわけなので。直接会ってヒアリングもしますし、Twitterでフォローして見ていますね。
藤井:Twitterは神ですね。
村田:そう笑。Twitterがあるとすごく調査しやすいんです。直接インタビューすると、やっぱりどうしてもカッコつけたくなるところもありますから。とはいえ、聞かないとわからないことが多いのでインタビューも勿論しますが、Twitterもみて両方から情報を得るようにしていますね。
藤井:私、DMしています。女子中学生や高生とかって企業の人に「普段どんなアプリ使っていますか?」と聞かれると教えにくいと思うんですけど、自分も学生として「暇だから面白いアプリ教えて〜」と聞くとみんな教えてくれますね。自分と近い存在の方が自然に教えてくれるので、「好きはアイドル誰?」とか話しかけて「私も◯◯推しだよ」などと会話から始めています。
村田:自分自身が学生時代からひたすらずっとTwitterにいて、LINEよりもTwitterでやり取りをするような学生でした。Twitterは自然に開いてて、日常的とか身近と言うより、呼吸をするような感じです笑。その感覚は活かしていきたいなと思っています。
新嘉喜:今後はそれぞれの立場で、一人の人としてどのようになっていきたいですか。
藤井:常にプロダクトを作り続けられる人になりたいというのはあるんですけど、まずは1回当てる、絶対に諦めないということを決めています。あとは…、会社をやりはじめてからインターン生の頃とは、桁外れに関わる人の数が増えました。そこで、すごく感じたのは人として誠実であり続けようと。今、いろいろと叱られたりご指摘いただいてて、自分自身の足りない点を反省することも多いんですけど、常に誠実に向き合っていれば、例えダメなところがあっても人はついてくると思うので、誠実で信頼される経営者を目指していきたいです。
村田:サービスを生み出し続けていきたいですし、ユーザーの近くにずっといてユーザーのために何かを提供し続けられる人になりたいですね。今は、まだまだ提供できる価値が小さいと感じているので、いずれはユーザーにとっての世界が大きく良い方に変わるような、インパクトのある価値を提供できるサービスを作り出すことを目標にしています。そのために、ユーザーと真摯に向き合う気持ちは変わらず持ち続けて、多くのアウトプットを生み出すことに全力で取り組んでいきたいですね。
インタビュアー:新嘉喜りん(キラメックス株式会社 広報)