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本記事は、プロトタイピングツールのJustinmindでエディターをしているCassandra Naji氏によって投稿されました。
2017年は、AR(拡張現実)がメインストリームとなる飛躍の年となりそうです。そして、ARは次に来る大きなトレンドとして、UXデザインに大きな影響を与えることになりそうです。
喜ばしいことに、ARは、高いコストや低いエンゲージメント率など、UXデザイナーが何年も取り組んできた課題を解決する潜在的可能性を持っています。
しかし一方で、ARはUXデザイナーに課題をもたらします。
この記事では、ARはUXにどのような影響を及ぼしているのか、またUXデザイナーはどのようにして「魅力的かつコンバージョン率の向上に効果的なARのデザイン」という課題へ立ち向かうことができるかを見ていきます。
AR(拡張現実)は90年代初期から存在していましたが、「拡張現実」という言葉には未だに少し混乱を招くおそれがあります。
簡単に言うと、ARとは現実世界からの入力を、プログラムされたコンポーネントと結びつけるテクノロジーです。これらのプログラムされたコンポーネントは、実世界のデータと何らかの形で相互作用し、現実世界の入力が変化すると変化します。
バーチャルリアリティ(VR)が、ユーザーを現実世界から完全に切り離して架空の世界を体験させるのに対して、ARはプログラムされたレイヤーを現実世界に追加することにより、第三の、動的に拡張された体験を生み出します。
ARの例は、Snapchat、ポケモンGO、MicrosoftのHoloLens(ホロレンズ)などであり、大部分のユーザーは、使用したことがなくても少なくとも聞いたことがあるはずです。
ARのUXを設計するには、このテクノロジーの機能を理解する必要があります。デバイスの多数のセンサー(スマートフォンのGPS、カメラ、コンパスなど)は、すでにインストールされているソフトウェアアプリケーションに入力を送ります。
次にデバイスのインタフェースは、画面上に人間の感覚を強化する情報を追加することによって独立して応答します。
ユーザーはARに対応した最新のスマートフォンを持っているとしても、どこにいてもARの要素を見ることが可能なわけではありません。
ARのテクノロジーには、ARのソフトウェアが起動すること、現実世界のトリガーも必要です。これらの3つの要素が組み合わされてはじめて、ARを使ったユーザー体験が可能になります。
ARがユーザー体験に与えうる潜在的な影響は明らかに大きいといえます。このテクノロジーは、ユーザーとデバイス間のインタラクションの方法を完全に革新する可能性を秘めています。
インターフェース用のユーザーフローを設計することから、スクリーンレスな世界に存在するユーザーを想像することに至るまで、ARがUXデザインへ与える変化はその基本部分に関わるものです。
しかしまた恐ろしくもあります。ARのデザインを考えるということは、心理学、リサーチ、インタラクションの設計、ソフトウェア開発の分野が絡み合い、すでに複雑なのです。
ARはすでに、ユーザーのブランド体験やデジタルプラットフォーム体験を変えています。
一見すると、ポケモンGOとSnapchatという最もよく知られている2つの例では、ARを非常に軽い方法で応用しているように思えます。結局のところ、ポケモンを捕えたり、花の冠で自撮り画像を飾り立てることは、ほとんど画期的なUXのようには見えません。
しかし、数字を見てみましょう。ポケモンGOは2016年のリリースから1週間以内に、世界中の6,500万人がプレイしていました。
また、Snapchatは3月に公開された時点で240億ドルの時価総額があると評価されました(もっともその後、株価は下落して横ばいになりましたが)。 SnapchatとポケモンGOの成功の理由は、ARを使用してユーザーにカスタマイズ可能な独特の体験を提供していることです。
AR体験の定着性の理由を定義することは難しくありません。
ARは、インタラクションのコストを低減し、ユーザの認知的負荷を軽減し、複数の情報ソースを組み合わせて、ユーザーの意識が他に逸れることを最小限にします。
したがって、ARがソーシャルメディアやゲームを超えて根付いているのは驚くことではありません。
この技術は、優れたブランディングの機会として、先駆的な考え方を持つマーケティング部門によってすでに活用されています。ペプシは早期導入企業の1例です。2014年、この炭酸飲料の会社は、ロンドンのバス停でキャンペーンを行い、AR技術で普通の退屈なバス停の通路シェルターを、小惑星や虎がいっぱいのスクリーンに変身させました。
キャンペーンではペプシを売っていなかったかもしれませんが、ブランディングの面では強力な前進でした。
UXデザイナーは今後、マーケティングチームと綿密に連携して、エンゲージメント率を強化するためのAR体験をテストし、改良することになるでしょう。
コンバージョン率も、ARの可能性がすでにテストされている別の領域です。
例として、テーブルを購入する消費者を見てみましょう。
ユーザーのカスタマージャーニーは、単純化すると次のようなものになります。最初にオンラインでテーブルを検索します。次に店舗へ行き、携帯端末で写真を撮ります。そして自宅でその写真を見ます…しかし残念なことに、ユーザーは店舗で撮った見づらい写真から、どのテーブルを選ぶかを決定することは不可能です。ユーザーはフラストレーションがたまり、コンバージョン率の向上は失敗です。
IKEAなどの店舗では、この問題を解決するためにARを使用しています。 IKEAアプリを使用すると、ユーザーはモバイル端末を自分の家の特定の場所に向けると、端末の生成した家具を使って、同じ場面のARビューを生成することができます。
化粧品から衣料品まで、オンラインの買い物についても同じテクノロジーを応用できます。MavenEcommerceの統計によれば、消費者はすでにこの種の体験を望んでおり、人々がオンラインショッピングで最も関心のあるARアプリケーションのタイプは次の通りです。
ユーザーがコンテキストに応じてモノを見ることを可能にすると、コンバージョン率の問題を解決し、すべての人を幸せにするでしょう。
そう遠くない未来においては、ARはユーザー体験を向上させる機会をもっと提供するでしょう。
現在、UXデザイナーはインタラクティブなプロトタイピングツールを使用して、ユーザーインターフェイスをモデル化しテストしています。
しかし将来的には、UIのプロトタイプとMicrosoftのHoloLensなどのツールで生成した3Dプロトタイプを組み合わせることになるでしょう。既存のプロトタイピングツールも、トレンドに追いつくためにAR機能を導入する可能性もあります。
しかし、あらゆる地震対策テクノロジーの変容と同様に、ARを設計するUXデザイナーは課題に直面することになるでしょう。これらの課題を見てみましょう。
UXのデザイナーがARを始める前でさえ、彼らは多くの新しい用語を理解する必要があります。モジュレーションされた現実感、HMD、HUDなどの用語に慣れ親しむことは、ARの課題に正面から向き合い、拡張されたユーザー体験を実際に考え始めるのに適しています。
UXデザイナーは、目への負担や親指の負担を軽減するために、体験をデザインすることには慣れています、しかし、ARは、腕への負担など他の身体的要因も考慮する必要があります。
ユーザーは一日中、自分のスマートフォンを目の高さで持ち歩くことはできません。ウェアラブルコンピュータの快適性は、ARの導入にとってますます重要になります。
ARによって投げかけられる使用環境の課題は大きくなるでしょう。
デスクトップ上の体験を設計するとき、UXデザイナーは、ユーザーの存在する場所に関して、比較的限られた変数の集合を用いて作業しています。
しかしARの場合には、ユーザーの存在する場所、彼らが何を見ているか、どんな状況にあるかは限定されなくなります。
そのため、UXデザイナーは、日なた/日陰の環境、さまざまな天気、屋内と屋外、静止した場所と動作のある場所などで、ソフトウェアの使用に関する包括的なユーザーテストを実行する必要があります。ユーザーテストは堅牢性に適応する必要が生じるでしょう。
ユーザーの身体の安全性も問題です。ポケモンGOのデザイナーは、プレイヤーが車にぶつかったり、崖から歩いたりしたという報道がされた時に、この問題に直面しました。
それはおそらく負の側面最たるものであるため、危険な結果を最小限に抑えるAR体験を設計する必要があります。
これらの課題が意味することは、UXデザイナーは新しいテクノロジーに関するユーザーの期待を深く理解し、それに一致するようにエクスペリエンスを設計し始める必要があるということです。
ARのユーザー体験の設計という分野は、まだ初期段階にありますが、UXデザイナーが今考え始めることができるベストプラクティスは多くあります。
ARキャンペーンが、ペプシのようにバス停の通路シェルターで行うのか、あるいはユーザーの家庭や通りで行われるかどうかにかかわらず、UXデザイナーはそれらの条件のためのインタラクションを設計し、これらの条件で完全にテストする必要があります。
AR UXのRob Manson氏は、物理的なユーザーのシナリオを有益に、次の4つの主要カテゴリに分類しました。
UXデザイナーは、関連する物理シナリオのためのユーザーのカスタマージャーニーを定義し、インターフェイスがそれぞれにどのように応答するかを定義する必要があります。
ユーザーは、最も快適かつ最も手間のかからない方法でデバイスを所持します。ウェアラブルデバイスではなく、手に持つタイプのデバイスのAR体験を設計する場合は、その物理的な快適性要因を考慮する必要があります。
UXデザイナーは、デバイス使用の典型例についてよく把握しましょう。
例えば、ユーザーは座ったとき、あるいは胸部の高さまでデバイスを持ち上げたとき、デバイスをより長い時間持っていることができます。
非コマンドライン・インタフェースについて基本的なことは、それが単独で動作するということです。AR体験は、可能な限りユーザーからの物理的な入力をほとんど必要としないように設計されるべきです。
ユーザーがデバイス画面を通して拡張された画像で見ているときには、同時にジェスチャー機能を使用するのは難しくなるため、このことには意味があります。音声制御はこの問題に対する明白な答えであり、UXデザイナーはSiriやAlexaのような音声対話フローの設計をより多く始める必要があります。
ARはユーザーが望むような体験をユーザーに与える可能性を秘めています。それはエキサイティングで、役に立ち、実用性があり、意味のある体験です。ARには、ユーザーのニーズとビジネス目標を結びつけて、その過程でデジタル世界に楽しいものを創造する潜在的可能性があります。
しかし、このような成功物語は、この新しいテクノロジーによって必然的に生まれる課題にUXデザイナーが対応できるかどうかにかかっています。
UXデザイナーが現在のARテクノロジーを理解して利用し、またいつものように、ユーザーに共感して、ユーザーにただ必要なものだけでなく彼らの望むものを与えることによってそれは可能になります。
ポケモンGOのようなARを用いたゲームアプリはUnityというゲームエンジンを使って開発されています。
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