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デジタルアートの先駆者として、世界に名を馳せるチームラボ。最先端のテクノロジーを駆使し、没入型のデジタルインスタレーションで人々を魅了しています。今回は、チームラボ株式会社 取締役である堺大輔氏に、チームラボの軌跡、そして未来への創造に向けた思いを伺いました。(聞き手:デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏)
鈴木:これまでの経歴を教えてください。
堺:学生時代は東京大学でヒューマノイドロボットを研究していました。実は、弊社の代表取締役である猪子とは同じ大学院で学んでいたんです。それまでは、阿波踊りを通じての繋がりがある程度でしたが、一緒にチームラボを立ちあげることになりました。将来を考える中で、ロボット研究だけでは社会との接点が薄いという課題を抱えていたため、テクノロジーを活用した事業を模索することにしたんです。会社の設立当初は、猪子の他に大学の同級生や幼馴染を含む5人でスタートしました。
鈴木:会社を立ち上げる際、周りからの反応はいかがでしたか?
堺:当時、大学の教授たちはベンチャー設立に対してあまり好意的では方もいましたし、大学からのサポートも全くと言っていいほどありませんでした。そのような状況の中で、データベースにたまるデータの活用方法に注目し、様々なソフトウェアを作ってきました。
鈴木:創業当初は具体的にどのような事業をされていたのですか?
堺:設立当時からインスタレーションを制作していましたが、実際には全く収入が得られない状態でした。一方でWebサービスをゼロから開発する事業も行うことにしました。最初に手掛けたのはABCクッキングスタジオの予約システムでした。多くの案件でゼロからの開発を行い、企画からシステム開発まで、プロジェクトごとに幅広く取り組むこともありました。そのように創業期になんでも挑戦した経験が、今の私たちの財産になっています。これまで様々なレイヤーの考え方を学び、それをUIやシステムに落とし込むだけでなく、顧客がどのような体験をしていくかを中心に捉えたサービス展開ができたのは、この時期の経験のおかげだと思っています。
鈴木:当時は本当に元気で、何でもやります!っていう感じでしたね。
堺:今もその精神は変わらず、何でもやりますよ!(笑)
鈴木:チームラボのアート事業はどのように発展してきたのでしょうか?
堺:私たちのアート事業は、アーティストである村上隆さんの海外ギャラリーで初めて展覧会を開催したことをきっかけに、台湾やシンガポールといった海外へと広がっていきました。2014年には、日本科学未来館で初めての展示を行い、なんと50万人もの来場者を記録しました。さらに2018年には、お台場と豊洲に大規模な常設展を設置することができ、これが私たちにとって大きな転換期となりました。おかげさまでギネス世界記録にも認定され、2019年には年間230万人を動員しました。そして昨年は、250万人を超える来場者を記録し、さらなる記録更新に成功しました。
鈴木:出会いから考えると、その成長は想像できなかったですね。すばらしい成果ですね。
堺:ありがとうございます。実は、年内に新しい施設の新設を計画していますので、ぜひ遊びに来てください。
鈴木:チームラボのシステムソリューションの強みはなんですか。
堺:要件定義からサービス企画、UI/UX設計、開発、プロモーションまでを一気通貫で行える点です。特に、私たちが作成したアプリは、Webサイトを除いても1億5000万ダウンロードを達成しており、平均評価も4.52と高い数字を誇っています。また、私たちの強みは裏側のシステムにあります。多くの大手企業ではレガシーシステムが存在し、部署ごとにサイロ化が進んでいるため、API連携がスムーズにいかないことがよくあります。そこで、私たちは中間層を構築し、システムの負荷を吸収することで、フロントエンドの開発スピードを向上させています。
また、1100人の従業員のうち約7割がエンジニアであり、デザインと企画力も私たちの大きな強みです。このため、どのベンダーやSIerに対しても対等にやり取りでき、マルチベンダーの複雑なプロジェクトにも柔軟に対応することができます。具体的な事例としては、りそなグループのアプリ、BUMP OF CHICKENリスナー向け公式アプリ、さらにはアパレルブランドのECアプリなど、数多くのDX成功事例があります。
鈴木:UXから始まってシステムに行くというアプローチは面白いですね。
(後編へ続く)