ビジネスの不確実性が増す中、鍵を握るのは「人との距離を縮める努力」、すなわち「外交」である…。そんな外交の必要性を説く新シリーズ「外交の心得」がスタート! ビジネスを成功させるために必要な人間関係とは。なぜ今、外交の力が求められるのか。具体的にどんな外交に取り組むべきか。新シリーズでは、これからの時代に求められる「外交」のあるべき姿を提起します。【週刊SUZUKI #123】

ビジネスの成功要因が多様化・複雑化する中、我々は何を拠り所にすればよいのか…。こんな悩みを抱える人がにわかに増ええています。これまで通用した成功要因は何の役にも立たず、過去の実績も何ら意味を成さなくなったことが背景にあります。こうした状況に置かれた多くの人が、新たな成功のヒントを模索し始めているのです。

とりわけ事業や組織の再編、新規事業創出などの新たな施策を打ち出す企業は少なくありません。しかし、小手先の施策に取り組むだけでは不十分です。その前にもっと目を向けるべきことがあるのではないでしょうか。それが、人と人とのつながり、つまり人間関係の構築です。ビジネスの基本は人同士のつながりに他なりません。つながりを軽視し続ける限り、ビジネスは決して成長しないし、成功しません。人と人のつながりを生む「外交」こそが、これからの時代を勝ち抜く成功要因となるのです。

そもそも近年の日本社会は、人間関係が顕著に希薄化しています。特に若い世代が、人との関わりに距離を置く傾向が強まっていると感じます。こうした状況を招いた契機となったのが、新型コロナウイルス感染症のまん延です。日本はもとより世界中の企業がコロナを機にリモートワークという働き方に舵を切りました。その結果、対面でのコミュニケーション機会が激減し、人と人との距離は次第に広がっていったのです。SNSなどのコミュニケーションツールが台頭したことも、人間関係の希薄化を助長しました。若い世代を中心にコミュニケーション手段がデジタル化し、顔を見ながら対面で話すことの大切さが失われていったのです。お互いの感情や意図を正確に読み取ることが難しくなり、知らず知らずのうちに人との距離が物理的にも心理的にも広がっていったのです。私はこの「人との距離」の拡大こそが、現代のビジネス、ひいては社会全体における大きな課題であると考えます。

こうした状況を解消し、ビジネスを成功させるためにも、人との関係を今一度見直すべきです。良好な人間関係を起点にビジネスを再構築することが大切です。

では、どんな人間関係を構築するのが望ましいのでしょうか。ビジネスを成功させる人間関係を築くには、お互いが成長し、お互いが幸せを感じることが大切だと考えます。そのためにはお互いに共感し、学び合うことが不可欠だと強く信じています。「共感」と「学び合い」を通じて強固な信頼関係を築くことが、成功への絶対的な鍵となるのです。

具体的には、相手のニーズや価値観を深く理解しようと努め、そこから学びを得るようにします。これにより、より豊かで実りある人間関係を築くことができます。このような強く深い関係は、個人の満足に留まらず、ビジネスの成果に直結するのです。なぜならビジネスとは誰かのために何かを提供し、その対価を受け取る仕組みであり、突き詰めれば「誰かを喜ばせる」ことができてこそ、その真価を発揮するからです。この「誰かを喜ばせる」行為の根底には、相手への深い理解と共感が不可欠であると私は考えます。

このように人と人との距離を近づけ、信頼関係を築くための「努力」と「行動」を、私は「外交」と呼んでいます。双方が共感を得るために努力し、絶えず学ぼうと行動することが「外交」の本質であり、ビジネスを成功へと導くのです。

では具体的にどんな「外交」を心掛ければよいのでしょうか。本連載「週刊SUZUKI」では今後、外交のポイントを「外交の心得」として毎週1つずつ紹介していきます。「共感」と「学び合い」を実現する努力と行動の具体的な内容を、30個紹介します。「人間関係を構築する自信がない」、「相手の共感をどう得ればいいのか分からない」、「ビジネスの根底を支える人間関係を改めて見直したい」など、良好な関係を構築する自信がない人こそ、ぜひお読みいただければと思います。

なお、「外交の心得」は決して営業の現場だけで使われるものではありません。顧客との関係はもとより、社内の同僚や上司、部下、さらにはパートナー企業や取引先といった、あらゆる人間関係において必要な「心得」となります。さらに言えば、「外交の心得」はビジネスのみならず、人生においても極めて重要な要素です。人との関わりを避ける傾向が強まる現代だからこそ、意識的かつ積極的に人との距離を縮め、信頼関係を築き直すきっかけとして活用できるものと考えます。

これからのビジネス、ひいては人生において「外交の心得」の重要性はより増していくと考えます。人との距離を縮めるための積極的な行動こそが、低迷するビジネスを打開する唯一の手段と成り得るからです。私たちに成長と幸福をもたらすようになるからです。読者の皆さんにとって「外交の心得」が新たな拠り所になれば幸いです。

【外交の心得 はじめに】

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。

情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 人との距離を縮める「外交」こそビジネスを成功に導く鍵に