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長崎港の西側に位置する長崎市立小榊小学校は、児童数約700人を抱える市内でも大規模な学校です。2016年に移築された校舎からは美しい海の景色が見え、新興住宅地の中心に位置するため、児童数の増加傾向も続いています。特に注目すべきは、2021年度から実施されたGoogle for Educationの本格導入です。この取り組みを通じ、同校は教育ICTを積極的に活用し、市内の小中学校のリーダーとなっています。
導入の決定に至った経緯は、Googleの管理コンソールによるセキュリティの高さや、教育内容への適用のしやすさが大きな要因です。小榊小学校は、2021年1月に全児童にChromebookを配布しました。それ以前は、他社製タブレット1学級分のみがあったものの、実際の活用には限界がありました。導入初期には、Google Workspaceの多くのアプリを授業でどう活用するか、また教員間のICTスキルの差が児童たちにどのような影響を与えるかが課題とされました。
研修を通じてGoogle Workspaceに触れた教師たちは、共同編集やクラウドでの情報管理に驚きを覚え、結果的にICTスキルの向上に繋がりました。若手教員が多く、互いの知見をインターネットを介して共有することで、ICTスキルの差が縮まる様子は、教育の質の向上に寄与しました。最初は授業中にのみデバイスを使用する厳しいルールを設けていたものの、生徒からのリクエストに応じて徐々に柔軟な運用にシフト。2023年度からは児童たち自身がルール作りに参加することが決定しました。
新型コロナウイルス感染症の影響で、集会の形が制限される中でも、Google Classroomを活用した全校および学級向けの連絡が行われました。多くの教員がGoogle Classroomを利用し、課題の配信や児童のフィードバックを集約しています。Google Workspaceの他のアプリも活用し、各教科で効果的な授業実施を目指しています。例えば、国語や社会、算数の授業ではGoogle Jamboardが多く使用され、付箋機能を使って要点をまとめたり、視覚的に考えを整理したりすることが可能になっています。
ChromebookとGoogle Workspaceの導入によって、児童たちの学習意欲も向上しました。授業に集中できない子やノートに書き写すのが苦手だった子どもたちが、動画教材やタイピングを用いることで、より積極的に学習に取り組む姿が見られます。同校では、基礎学力の向上はまだ数値化されていないものの、対話力やプレゼンテーション能力の向上は感じることができ、感想をシェアし合う環境が生まれています。
また、ペーパーレス化も進展しており、教員の業務改善にも貢献しています。資料の印刷が減少し、ほぼすべてのアンケートがGoogleフォームで実施されるようになりました。これは教員の負担を軽減し、教員同士のコミュニケーションの機会も増えています。職員室では、関連する情報をGoogle Classroomで自由に共有できるようになり、業務の質向上に寄与しています。
小榊小学校は、長崎市からFGS(フロンティア・ギガ・スクール)校に指定され、今後も他校が参考にできるICT活用方法の研究を進めていく予定です。保護者同士のサポート組織「FGS応援隊」が学校と連携し、保護者の質問に対する対応も充実しています。今後は、学び方を選び続けることができる子どもたちを育成し、その輪を広げていくことを目指しています。
このように、小榊小学校の事例は、教育ICTの効果的な導入がどのように教育の質を向上させるか、そして子どもたちの学びをどのように変えるかを示す、示唆に富んだ成功のストーリーです。Googleのツールが、今後も同校の取り組みを支えていくことが期待されます。
執筆:DXマガジン編集部