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近年、私たちの消費行動は急速に変化しています。特に新型コロナウイルスの影響を受けた2020年代を経て、2021年を迎えた今、消費者の価値観は以前にも増して多様化しています。この状況をふまえ、ローランド・ベルガーが発表したレポート「小売ビジネスの未来」では、2030年に向けたBtoCビジネスの7つの未来像を提言しています。これからの小売業界はどのような方向に進むのか、そのポイントを詳しく解説していきます。
ローランド・ベルガーによると、2030年には消費者の価値観の多様化が一層進むと予測されています。その結果、従来型の「フォロワー層」は消滅の見込みです。特に、社会・情緒・価格・機能の4つの価値観に基づいて新たな消費者セグメントが形成され、多様なニーズに対応するための戦略が必要になります。これに合わせて、小売業界は変革を余儀なくされています。
2030年のBtoCビジネスにおける未来像の一つとして、消費者データの活用が進み、多様な価値観に応えるプライベートブランド(PB)の市場が拡大することが挙げられます。これにより、顧客のニーズに細やかに応じる商品展開が可能となり、競争力の向上が図られるでしょう。また、商材や消費者、地域特性を踏まえた店舗オペレーションの変革が求められます。エリアの特性を最大限に活かしながら、店舗群の経済価値と社会価値を高める新たな運営方法が模索されることでしょう。
さらに、循環型経済の発展に伴い、中古品ビジネスが成長します。飲食や物流などの複数産業を絡めた余剰在庫の経済圏が形成されることで、持続可能なビジネスモデルが確立され、相互の価値を高める結果が期待されます。一方で、市場で環境価値の訴求が進む中、訴求が「マス向け」と「社会価値重視層向け」に二極化します。企業は自社のブランドがどちらに向かうべきかを明確にし、戦略を練る必要があります。
小売企業は医療や介護サービスと連携し、消費者の健康ニーズに応えるチャンスがあります。店舗が地域の健康ハブとしての役割を担うことで、新たな顧客体験が提供されるでしょう。また、電気自動車(EV)充電ステーションの設置などにより、顧客は待機時間を利用して購入体験を楽しむことができるようになります。今後のビジネスにはモビリティと購買体験の融合が不可欠です。そして、AR、VR、メタバースなどのデジタル技術の進展が進む中、リアル店舗は「在庫拠点」と「体験サービス提供」に二極化することが予測されています。これは消費者の購買行動がオンラインへとシフトする中での重要な変化です。
2030年を見据えたBtoCビジネスは、消費者の価値観の多様化を受けて大きな転換期にあります。企業は変わる市場環境に迅速に適応し、「ステークホルダーマネジメント型」の経営モデルへとシフトしていく必要があります。その中で新たな顧客セグメントに応える方法を模索しながら、持続可能な成長を目指すのが今後の課題となるでしょう。
【関連リンク】
株式会社ローランド・ベルガー
https://www.rolandberger.com/ja/Locations/Japan/Start.html
執筆者:齋藤 一真