リコーは2025年5月1日、生体適合性を有しながら高強度かつフルカラーでの造形が可能な3Dプリンター技術を開発したと発表しました。この新技術は、インクジェット方式によるマテリアル・ジェッティングをベースとし、独自に開発したフィラー入りインクと専用のプリンティングプロセスを組み合わせることで実現されたものです。歯科用補綴物やメガネフレームなど、高い意匠性と精度が求められるオーダーメイド製品への活用が期待されています。

図1:本技術で造形した入れ歯

従来、3Dプリンターによる造形物はフルカラー出力が可能であっても、強度面での課題があり、実用的な製品への適用には限界がありました。今回の技術では、強度を維持しつつ精緻なフルカラー表現を可能にすることで、これまで不可能だった高精細かつ高耐久な造形を実現しています。さらに、造形物はJIS基準に基づいた生物学的安全性試験にも合格しており、医療用途にも対応可能とされています。

具体的には、リコー独自の6ヘッド構成インクジェットシステムが、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクを正確に配置しながら、紫外線で硬化させて積層。高濃度のカラーインクを少量使用し、透明および白色の強化インクと組み合わせることで、色再現性と強度の両立を実現しています。これにより、歯の色調グラデーションや歯肉との自然な境界表現が可能になり、入れ歯なども一体造形で製作できるようになっています。

図2:マテリアル・ジェッティング方式と呼ぶ印刷手法を採用
図3:マテリアル・ジェッティング方式の概要

同技術はすでにコアデンタルラボ横浜にて採用されており、歯科分野での臨床応用に向けた展開が進んでいます。仮歯に留まらず、小臼歯までの差し歯としても長期間使用できると見込まれており、薬事認証を取得のうえでの製品化が予定されています。

図6:本技術で造形した入れ歯

今後は、医療分野に加えて、メガネフレームや人工装具(エピテーゼ)などのパーソナライズ製品への応用が視野に入っており、高い意匠性と機能性を同時に求められる分野での活用が期待されています。今回の開発は、3Dプリンターの可能性を大きく広げる技術革新として注目されます。

レポート/DXマガジン編集部折川

情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 3Dプリンタで入れ歯を作成、フルカラーで強度を保持した印刷技術を開発