デジタルシフトウェーブは2025年1月8日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「2025年大予測!~Co-Creation for the future~」。2025年を迎え、DXを取り巻く環境はどう変わるのか。デジタルやITを駆使した取り組みは社会にいよいよ根付くのか。日本オムニチャネル協会の役員が2025年の動向を予測しました。

2025年を迎え、私たちの社会やビジネスにどのようなインパクトが訪れるのでしょうか。デジタル技術が急速に進化する一方、地政学的リスクや国内の少子高齢化、さらにはアメリカ経済や世界的なIT競争の波も押し寄せ、あらゆる産業が新たな局面を迎えようとしています。

今回のセミナーでは、日本オムニチャネル協会の会長・鈴木康弘氏、専務理事・林雅也氏、理事・逸見光次郎氏の3名が登壇。DXの潮流と社会の変化を中心に2025年を占い、さらに今後の協会の活動方針を語りました。

世界の政治や先端技術の動向に注視

セミナー冒頭では、アメリカ政治や世界経済の動向が日本のDXに与える影響が議論されました。2025年に再登場が取り沙汰されるトランプ元大統領の人事や、イーロン・マスク氏など“型破りな起業家”が政界へ進出する可能性など、アメリカの政局は引き続き大きな注目点です。イーロン・マスク氏のようにテクノロジーと政治をまたぐ人材が本格的に台頭すれば、官僚組織のスリム化やAI・宇宙開発など、大胆な施策が進むかもしれないと期待を込める一方、「政治と経済の両面で大胆すぎる変化が起こるのでは」という不安も語られました。

写真:本オムニチャネル協会 会長 鈴木康弘氏

またアメリカのIT市場が堅調である一方、日本国内では「デジタル赤字」や急激な円安が進み、海外のクラウドサービス利用料の高騰が懸念される現状が取り上げられました。海外のSaaSを導入すればするほど費用がドル建てで流出してしまう問題をどうするか。これについて「国産のサービスやソリューションを育成・利用する動きが大切」という意見が共有され、円安時代を逆手に取り「国内での生産や開発能力をもう一度見直して、強みを作るチャンス」とも捉えられました。

写真:日本オムニチャネル協会 専務理事 林雅也氏

高齢化とIT人材不足に直面する国内企業の2025年は?

日本特有の課題として、2025年問題(団塊世代が75歳以上になり、高齢化が急速に進む)が深刻化する点も議題に上がりました。「2025年には75歳以上が全人口の17.8%に達する」という事実は、社会保障費や介護負担だけでなく、人材確保の難しさにも直結します。

さらに、企業の基幹システム刷新を巡っては「2025年の崖」が象徴的に語られました。20年以上前のコボルやアセンブラで作られたシステムを支えていたエンジニアが定年退職し、システムのブラックボックス化が進んでいる現実です。新しいクラウドやAI技術は魅力的ではあるものの、“そもそも何が動いているのか”を解明できないままでは移行もままならず、IT人材の不足も相まって致命的なトラブルを引き起こしかねません。ここでも「まずは現場と情報システム部の連携をどう作るか」「既存のシニア層の知見を活かす仕組みが必須」といった意見が交わされました。

写真:日本オムニチャネル協会 理事 逸見光次郎氏

日本オムニチャネル協会の活動と今後のビジョン

2020年に発足し、コロナ禍にもかかわらず会員社数を着実に拡大してきた同協会。企業規模や業種を問わず「チャネルの壁を超えて共創する」という理念を掲げ、セミナー、勉強会、アカデミーなど多彩な活動を行ってきました。

部会活動
昨年からは「共創ビジネス部会」「リテール・ロジスティクス」「ネクストリテール」「サステナビリティ」など、テーマ別に部会を発足。各分野で第一線を走るリーダーが主導し、それぞれ自由度の高い情報交換を行うことで、より実践的なノウハウが生まれたといいます。

アカデミー(人材育成)
学生向けに「仕事の心得」を伝えたり、ベンチャー企業の成長支援をする「ベンチャーアカデミー」、企業のIT担当を基礎から育てる「ITアカデミー」などを開催。いずれも「実践の場」と「対話の場」をセットにすることで、座学だけに終わらない取り組みを行っています。

国内外の横のつながり強化
昨年度は九州支部が発足し、通販や製造業など幅広い企業との連携が生まれました。さらに、インドをはじめとした海外視察も積極的に行い、「現地の空気を肌で感じる」ことが、企業の変革にとっていかに大事かを確認。今後は“海外フェロー”という形で現地在住者と協会を結び付け、最新の海外動向を吸い上げる体制を作る見込みです。

2025年に向けた協会のキーワードは「共創(Co-Creation)」

最後に、セミナーの締めくくりとして鈴木氏は「日本オムニチャネル協会の今後は『Co-Creation for the future』がキーワードになる」と強調しました。情報システム部門同士の連携を深める新たな部会、セカンドライフを見据えた“シニア”アカデミー、海外の情報をリアルタイムで取り込み合う仕組みなど、多方面に向けたプラットフォームを整備していく方針です。

「チャネルの壁を超える」という同協会の理念は、一見小売やECに特化した概念のようにも思われがちですが、実際には産業や企業規模、地域や国境の垣根までも乗り越える姿勢を目指しています。2025年以降、加速するDX時代に備え、社内外の人材・組織・技術を横断的につなぎ、新しい価値を創造する。これこそが日本オムニチャネル協会が掲げる“未来への共創”の真髄です。

国際情勢や高齢化社会の進行など、決して明るい話ばかりではない現実を直視しつつも、共創による発想の転換は大きな可能性を生むでしょう。セミナーの参加者からは「2025年以降に向けた日本企業の課題と対策を、具体的にイメージできた」「他業種・他地域との繋がりを活かしてビジネスを広げたい」といった声が多く聞かれました。

日本オムニチャネル協会は、引き続き年間を通じて各種セミナーや交流会、国内外の視察を企画し、会員同士が学び合い・刺激し合う場を提供していく予定です。DXの波が当たり前になった2025年を見据え、「Co-Creation for the future」の合言葉のもと、“壁を超える”試みはさらに加速していきそうです。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください
情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 日本オムニチャネル協会の役員が2025年を予測! 「共創」を加速させる協会活動のさらなる拡充も