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まずは、宝島社の「このマンガがすごい! 2018」にもランクインした、少年ジャンプ+の『青のフラッグ』をピックアップ。
高校3年生の春。主人公・一ノ瀬 太一は、同じクラスの空勢 二葉から相談を受ける。
「三田くんってどんな人ですか?」
太一の幼馴染・三田 桃真(通称トーマ)は文武両道で容姿端麗、常に女子たちの注目を集める学年一のモテ男子。トーマとはなんとなく疎遠になっていたのだが、流れで空勢さんの恋愛に協力することになってしまう。
トーマのために努力する、ひたむきな空勢さん。その姿を見て、少しずつ特別な感情を持ち始める太一。
進路、受験、人生の選択。たくさんのことに迷い悩む高校3年という季節に、3人の純愛物語が始まる……。
甘~い王道の青春ラブストーリー……ではありません!!
いや、筆者も最初はそう思っていましたが、読み進めた先に待っていたのは胸をギューっと締め付けるような切ない想い。一癖も二癖もある青春物語に仕上がっています。
トーマの見つめる先にいるのは……。こんな展開を少年マンガでやってのけるとは驚きです。
作者は週間少年ジャンプで『クロス・マネジ』『バディストライク』を連載していたKAITO先生。感情の表現がとても繊細で、言葉のないシーンでも表情や仕草だけでぐわっと心に沁み込んできます。
純粋で、優しくて、苦しい。爽やかなだけじゃない彼らの青春模様から目が離せません!
掲載アプリ:少年ジャンプ+(隔週水曜更新)
ジャンル:ラブストーリー
作者:KAITTO
純愛の次は狂気に満ちた愛を。2つめに紹介するのはサイコミで連載中の『ふたりモノローグ』。
地味で目立たない女子高生・麻積村(おみむら)ひなたと、隣の席に座るクールなギャル・御厨(みくりや)みかげ。2人は小学生時代の友人だったが、いろいろあって疎遠に……。
高校で再開を果たしてお互い仲良くなりたいと思っているのに、ギャルに変貌したみかげにひなたはおびえ、みかげはみかげで気持ちを上手く表現できず……。想いがすれ違いまくる学園友情(ラブ?)コメディです。
とにかくみかげのひなたに対する愛が深すぎてシビれます。上はひなたが初めてメガネをかけてきた時の1シーン。たったそれだけなのにこのテキスト量! 詩人か? 文豪か?
ひなたを尊い存在と崇め奉り、一挙一動に悶絶する様子が可笑しすぎ。言葉のチョイスにセンスが溢れていて、大げさじゃなく、読んでいると声を出して笑ってしまいます。作者の語彙力に脱帽。
そして2人の仲に華(?)を添える佐呂間 由依(さろまゆい)もヤバすぎぃ! ひなたとみかげを見守りながらも、脳内でとんでもない妄想を膨らませ暴走。こちらはこちらで、みかげとはまた違うワードセンスで笑わせてくれます。黙っていれば美少女なのに……。
とにかく登場人物たちのモノローグ(心の中のひとりごと)が行き交ってぶっとびまくりの作品ですが、たま~に胸キュンな友情エピソードを組み込んでくるのがニクいところ。絶妙な塩梅だからこそ、登場人物たちの”サイコみ”もより強調されます。
掲載アプリ:サイコミ(毎週土曜)
ジャンル:コメディ
作者:ツナミノユウ
推理ミステリーマンガの金字塔『金田一少年の事件簿』。筆者も愛してやまない作品なのですが、読んでいると「それはムリあるだろ!」と思わずツッコんでしまうこともありますよね。
それ、犯人自身も思ってたみたいです。
金田一シリーズのスピンオフ『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』がマガジンポケットで今年7月から始まりました。
今までに登場した犯人たちを主人公に据え、事件の裏側を描くコメディ作品。オペラ座館、学園七不思議、蝋人形城、雪夜叉伝説など、名事件の数々が犯人視点で語られます。
「そんなことできるんかい!?」「妖しすぎるでしょwww」と読者たちが思っていたことを、犯人たちが代弁してくれるのがなんとも滑稽。
本編を知らないとまったく楽しめませんが、熟知していればいるほど面白さがにじみ出てくる作品です。読み終わったら、きっと本編を久しぶりに読み返したくなるでしょう。
絵のタッチが初期金田一に寄せてあるのも、古参ファンには嬉しいポイント。昔は今より少し丸みを帯びていたんですよね。
なお事件の順番は本編と違うので、次にどの事件が来るかは予測不能。筆者が一番見たかった雪夜叉伝説の氷橋はやってくれたので、次は「金田一少年の殺人」のドアを使ったトリックや、「魔犬の森の殺人」の犬笛トリックあたりを読みたいかなーなんて。
とにかく、金田一ファンは要チェックの作品です!
掲載アプリ:マガジンポケット(毎週水曜更新)
ジャンル:コメディ
原作:天樹征丸、金成陽三郎
漫画:船津紳平
(いろんな意味で)殺伐とした作品が続いたので、お次はあったかハートフルな作品をご紹介。マンガワンで連載中の『シークレットコード 不機嫌な暗号探偵』です。
暗号解読事務所を営む千董生紺一郎(ちとせこんいちろう)の元に舞い込んできた様々な暗号解読の依頼を、助手のモモと解読していくミステリーマンガ。
私利私欲にまみれたドロドロした暗号は登場しません。それぞれの暗号に隠されているのは、人々のあたたかな想いとドラマ。そういう意味ではミステリーと言うより、ヒューマンドラマに近い作品かもしれません。
第1話の最後に書かれていた「人に内緒にしたいこと、特定の人だけに伝えたいこと……そんな誰もが持っている気持ちが込められたもの」という作者さんのコメントが非常に印象的です。
自分にはまったく関係のなさそうな暗号も、なんだかちょっと身近なもののように思えてきます。
無愛想でクールな紺一郎が、助手のモモの前では優しい顔を見せるところも良ポイント。思わずこちらも笑顔になってしまいます。
作品全体に優しい空気が漂っていて、きっと貴方のハートもポッと温めてくれるはず。少し古めにも感じる、りぼんやなかよしなどの少女マンガを彷彿させる絵のタッチも、作品と調和していい方向に作用しています。
癒しが欲しい方にオススメ!
掲載アプリ:マンガワン(隔週月曜更新)
ジャンル:ミステリー、ドラマ
作者:とりこぼ縞屋
最後に紹介するのは、連載開始当初に物議を醸した少年ジャンプ+の『あえじゅま様の学校』です。
少年ジャンプ+に限らず、マンガアプリ界隈ではデスゲーム系が乱発されており、本作も「またデスゲームか」と一部の人たちから反発の声が上がっていました。
いやいや、待ってください。ちゃんと読み進めればわかります。これはデスゲームものにあらず! もっと不条理で、ミステリアスで、ホラーな作品ですよ。
20歳のフリーター・寝屋川朔(ねやがわ さく)はある日、バイトの同僚に騙され見知らぬ村へと誘拐されてしまう。
そこで待ち受けていたのは、年齢も職業もバラバラの24人と「あえじゅま様」と呼ばれる山の神との学園生活。
あえじゅま様の異質さ以外はいたって普通の村。村人たちの人当たりもよく、拘束されることも、脅されることもない。これは本当に誘拐なのだろうか?
しかし、そんな甘い考えは「退学処分」を目の当たりにして吹き飛んでしまう。
あえじゅま様にあっけなく食べられてしまうクラスメイト。これは現実なのか? 村の目的は? 村から脱出する方法は? 恐怖の学園生活が始まる……。
本作の主題は命をかけた駆け引きではなく、村の目的を紐解いていくミステリー要素です。
突拍子のない設定にはもはや笑いすら感じますが、どうやら村人たちは何かを確かめようと(?)している様子。彼らの思惑が気になって仕方がありません。
また、村と対立するであろう東京の刑事たちの存在も重要なキー。あえじゅま様とどう対峙していくのか。これからの展開を、さらに面白くしてくれるのではないかと期待させてくれます。
そして、作品全体の不穏な雰囲気を引き立てるのが、不釣り合いなはずのギャグ要素です。世界観を壊してしまうのではとも思いますが、不思議なことに、非現実感を強調させて恐怖をより濃厚にしています。
ブラックジョークと鳥肌の立つ不気味さ。今までにないマリアージュがどう昇華されるのか、今後の展開に注目していきたい新作です。
掲載アプリ:少年ジャンプ+(隔週土曜更新)
ジャンル:サスペンス
作者:鈴丸れいじ