犬にわさびを食べさせるのはNG

結論からお伝えすると、「わさび」は犬に与えてはいけない食物です。

人間にとっては料理の風味を引き立てる素晴らしい薬味ですが、犬にとっては消化器障害や神経への刺激を引き起こす可能性がある」、非常に危険な食べ物です。

わさび特有のツーンとした強い刺激は、犬の繊細な消化器系や神経に大きな負担をかけ、様々な苦痛を引き起こす原因となります。

愛犬の健康と安全を守るため、飼い主はわさびやわさびを含む加工品を犬から遠ざける必要があります。

わさびに含まれる成分と栄養素

わさびには人間にとって有益な栄養素も含まれていますが、犬にとってはそれらのメリットをはるかに上回る危険な成分が存在します。

わさびの主な成分

  • たんぱく質
  • リン
  • ビタミンB1
  • ビタミンB2
  • ビタミンC
  • ビタミンK
  • カリウム
  • カルシウム

わさびには、たんぱく質、リン、ビタミンC、B1、B2、Kや、カリウムやカルシウムといった栄養素も微量ながら含まれています。しかし、これらの栄養素を摂取するために犬にわさびを与えることは、全く現実的ではありません。

後述する「アリルイソチオシアネート」がもたらす健康リスクは計り知れず、ごくわずかな栄養を期待して与えることは、百害あって一利なしと言えるでしょう。犬に必要な栄養素は、安全性が確立された総合栄養食のドッグフードから摂取させることが基本です。

アリルイソチオシアネート(わさびの辛さ成分)

わさびのあの鼻に抜けるような独特の辛味と香りの主成分は、「アリルイソチオシアネート」という化合物です。

これは、わさびの細胞がすりおろされることで生成されます。人間に対しては抗菌作用や食欲増進などの効果が知られていますが、犬にとっては強力な刺激物であり、犬にとっては有害に作用する可能性があります。

この成分が犬の体内に入ると、口内や食道、胃、腸の粘膜を激しく刺激し、炎症を引き起こします。その結果、激しい腹痛、嘔吐、下痢といった消化器症状につながるのです。

犬がわさびを誤食した際に危険な量はどのぐらい?

犬がどのくらいの量のわさびを食べると危険なのか、その具体的な量を明確に示すことはできません。

なぜなら、中毒症状を引き起こす量は、犬の個体差に大きく左右されるからです。トイプードルやチワワのような小型犬と、柴犬やゴールデンレトリバーのような中~大型犬とでは、体の大きさが全く異なります。

また、年齢(特に子犬や老犬)、持病の有無、アレルギー体質かどうかといった健康状態によっても、わさびの刺激に対する感受性は大きく変わります。

結論として、ごく微量であっても健康被害が生じる可能性があります。

チューブ入りの練りわさび、寿司についてくる生わさび、わさび漬け、わさび味のスナック菓子など、形状を問わず、いかなるわさび製品も犬にとっては危険です。

犬がわさびを食べてしまった場合の応急処置・対処法

もし愛犬がわさびを誤って口にしてしまった場合、飼い主がパニックに陥ってしまう気持ちはよく分かります。

しかし、自己判断での応急処置は絶対に行わないでください。特に、塩やオキシドールなどを使って無理に吐かせようとする行為は、わさびの刺激で既にダメージを受けている食道や胃の粘膜をさらに傷つけたり、吐瀉物が気管に入って誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こしたりする危険があり、状況を悪化させるだけです。

取るべき正しい行動は、速やかにかかりつけの動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰ぐことです。その際、以下の情報をできるだけ正確に伝えられるように準備しておきましょう。

  • いつ食べたか
  • 何を食べたか(チューブわさび、わさび味の菓子など、可能なら商品名も)
  • どのくらいの量を食べたか(おおよその推測で構いません)
  • 現在の犬の様子(嘔吐、下痢、よだれが多い、ぐったりしているなど)

これらの情報が、獣医師が的確な診断を下すための重要な手がかりとなります。夜間や休診日の場合は、地域の夜間救急動物病院に連絡してください。万が一の事態に備え、普段から救急対応してくれる病院の連絡先を控えておくと安心です。

わさびに似ている犬に与えてはいけない食物(刺激物)は?

わさび以外にも、犬に与えてはいけない刺激の強い食べ物は数多く存在します。これらは人間の食卓ではおなじみですが、犬の健康を脅かすリスクがあることを理解しておきましょう。

からし

からしもわさびと同様にアブラナ科の植物の種子から作られ、辛味成分を含んでいます。犬の消化器系に強い刺激を与え、腹痛や下痢の原因となるため与えてはいけません。

唐辛子(とうがらし)

唐辛子の辛味成分である「カプサイシン」は、犬の口内や胃腸の粘膜に強い刺激と痛みを与えます。嘔吐や下痢を引き起こすだけでなく、大量に摂取すると呼吸困難などに陥る危険性もあります。

こしょう

こしょうの辛味成分「ピペリン」も、犬の胃腸にとっては刺激物です。料理にかかっているものを少量舐めた程度で大問題になることは稀ですが、積極的に与えるべきものでは決してありません。

ニンニク・ネギ類

玉ねぎ、長ネギ、ニラ、ニンニクなどは、刺激物であると同時に、犬にとって極めて危険な中毒物質を含みます。これらの食品に含まれる「有機チオ硫酸化合物」という成分が、犬の赤血球を破壊し、「溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)」という命に関わる重篤な状態を引き起こします。加熱しても毒性は消えないため、ハンバーグやシチューの煮汁なども絶対に与えないでください。

ショウガ

ショウガにも辛味成分が含まれており、胃腸への刺激となる可能性があります。少量であれば血行促進などの効果を謳う情報もありますが、感受性には個体差が大きく、すべての犬に安全とは言えません。リスクを避けるため、与えない方が賢明です。

犬のしつけで「わさび(わさびスプレー)」を使っても大丈夫?

家具への噛み癖や食糞などをやめさせる目的で、犬が嫌がる匂いや味を利用した「ビターアップル」のようなしつけ用スプレーが市販されています。

その中で、「わさびの刺激を使えばしつけができるのではないか」と考える方がいるかもしれませんが、しつけ目的でわさびやわさびスプレーを使用することは絶対にやめてください。この方法は効果が期待できないばかりか、多くの弊害を伴います。

まず、犬によっては刺激に慣れてしまい、効果がすぐに薄れてしまう可能性があります。また、わさびの成分を犬が舐めたり吸い込んだりすることで、健康を害するリスクは無視できません。

そして最も大きな問題は、痛みや恐怖といった罰を用いるしつけ(嫌悪療法)が、飼い主と愛犬との信頼関係を根底から破壊してしまう可能性があることです。犬は「なぜ嫌なことをされるのか」を正しく理解できず、飼い主に対して恐怖心や不信感を抱くだけになってしまいます。

噛み癖や拾い食いといった問題行動には、必ず原因があります。運動不足や退屈からくるストレスなのか、あるいは飼い主の気を引きたいだけなのか、その根本原因を探ることが大切です。

エネルギーを発散させるおもちゃを与えたり、「ちょうだい」や「待て」といったコマンドを褒めながら教える「ポジティブリンフォースメント(陽性強化)」という手法で、望ましい行動を教えていくことが、愛犬との良好な関係を築く上で最も効果的で正しいしつけ方です。

まとめ

わさびは、その強力な刺激成分により、犬の消化器系に深刻なダメージを与える危険な食べ物です。栄養上のメリットは一切なく、リスクしかありません。寿司や刺身の横にあるわさびはもちろん、わさび味の加工品も含め、いかなる形であっても絶対に犬に与えないでください。

万が一、愛犬が誤って口にしてしまった場合は、自宅で様子を見たり、無理に吐かせたりせず、直ちに動物病院へ連絡して獣医師の指示を仰ぎましょう。

また、しつけの道具としてわさびの刺激を利用することは、犬の健康を損ない、飼い主との信頼関係を壊すだけの誤った方法です。愛犬の問題行動には愛情を持って向き合い、褒めて教えるポジティブなトレーニングを実践してください。愛犬の健康と安全を守れるのは、飼い主であるあなただけです。


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情報提供元: わんちゃんホンポ
記事名:「 犬にわさびは絶対ダメ!与えてはいけない理由と正しい対処法を解説