- 週間ランキング
この調査はデジタル画像を使ったオンラインアンケートによって行われました。SNSやオンラインリサーチ会社を通じて参加者が募集され、312名からの有効な回答が寄せられました。このうち犬と暮らしている人は56%にあたる174名だったといいます。
参加者が見せられた画像は、さまざまな犬がニュートラルな表情で正面を向いているもので、犬は全て形態がよく似ているスポーツ犬種グループですが、毛色、顔の模様、被毛の長さなどについてはさまざまなバリエーション18枚が揃えられました。
犬の顔はその複雑度によってスコア化され、模様や被毛が多いほど複雑度が高いという設定です。
犬だけでなく人間の顔画像も用意されました。男女各3名の計6名で、男性は髭の有無で3パターン、女性はメイクアップの有無で3パターンの18枚の画像が揃えられました。人間の顔は、男性の場合は髭(面積や長さ)が多いほど、女性の場合はメイクが濃いほど複雑度が高いという設定です。
犬と人間のどちらの画像も特に感情を表していない中立的な表情のものが選ばれたのですが、参加者はそれぞれの画像について「どの程度表情豊かだと感じるかを1〜10の尺度で答えてください」と求められました。さて、結果はどのようなものだったのでしょうか。
参加者からの回答を分析した結果、わずかながら顔の複雑度と表情の印象についての関連が見られました。
犬の場合は、複雑度が低い(模様や被毛が少ない)方が、表情豊かだと感じる人が(わずかながら)多いという結果でした。逆に人間の場合は、複雑度が高い(髭が多い、メイクが濃い)方が表情豊かだと感じる人が(わずかながら)多いというものでした。犬と人間で結果が逆である点が面白いですね。
顔の複雑度とは別に、回答者は全般的に人間よりも犬について「表情が豊か」だと感じる傾向が見られました。調査に使用された画像の犬も人間も実際には目立った表情を浮かべていないので、回答者は人間の表情をより正確に読み取ったとも言えます。
また、犬を飼っている人は犬に慣れていない人よりも、犬を「表情豊か」だと感じる傾向が強くなっていました。これは犬の顔の複雑度がどのスコアであっても同じ傾向でした。
犬の顔の模様や被毛の長さなどの複雑度は、人間が犬の顔を見た時に表情を判断する場合にわずかながら影響を及ぼし、模様などのない複雑度の低い顔の犬の方が、表情豊かだと見なされやすいという調査結果をご紹介しました。
犬は人間の社会の中で大きな役割を果たしている生き物なので、犬と人間のコミュニケーションを理解することは非常に重要です。このような研究は、犬と人間のより良いコミュニケーションをサポートし対策を立てていくことに活かされます。
《参考URL》
https://doi.org/10.1079/hai.2024.0005