加熱式たばこ「IQOS ILUMA iシリーズ」「IQOS ILUMAシリーズ」専用のたばこスティックとして、コンビニなどで広く販売されている「TEREA(テリア)」「SENTIA(センティア)」シリーズ。このたび韓国にある生産工場のようすが、日本のメディア向けに初めて公開されたので取材してきました。

 向かったのは成田空港から飛行機で2時間弱の、韓国・釜山市(プサン)にある金海(キメ)国際空港。日本で販売される「IQOS」シリーズ専用のたばこスティックの一部の生産工場は、日本国内ではなく、ここ韓国のとある場所にあるのです。

 金海国際空港から、さらに車で移動。高速道路で空港に近い海岸部を超えると、山並みを背に高層マンションがびっしり立ち並ぶ光景が目に飛び込んできます。映画でよく見る街並みだ……。

 釜山市街を過ぎ、車は郊外の梁山(ヤンサン)市へ。大きな建物と広い農地のコントラストが印象的な風景からは、のどかさと同時に不思議な活気を感じます。日本と同じく全体的には人口が減少傾向にある韓国ですが、ここ梁山市は周辺に点在する大都市から人が盛んに流入し、人口が増加傾向にあるのだそう。工業地帯として、いまとてもイケている街なのですね。

■ 私たちが手にする「IQOS」専用のたばこスティックは韓国で製造されていた!

 金海国際空港から移動すること1時間。いよいよ到着しました!フィリップ モリス コリアの梁山工場です。

 梁山工場では、「IQOS」専用の加熱式たばこスティックと、紙巻たばこの「マールボロ」「パーラメント」「バージニア・エス」を製造。フィリップ モリス社におけるアジア向けの一大生産拠点として位置づけられており、私たちが日本で手にする商品の一部もここから届けられています。

 国際的に重要な施設ということもあり、工場敷地内撮影はNG。取材陣は施設のルールに関する専用のペーパーテストを受け、許可された最低限の持ち物以外はすべて工場の外に置いていかなければなりません。あらためて今回のメディア公開がいかに特別な機会か、背筋が伸びる思いです。

 ※次から紹介する工場内部のようすは、完全に撮影NGとなったため、見学だけを行い、写真はオフィシャル提供をうけています。

■ 「IQOS」専用たばこスティックのアジア向け製品の生産を一手に担う「梁山(ヤンサン)工場」 世界トップの生産品質を支えるスゴい技術

 専用の白衣とイヤーマフを身に着けて工場に入り、まずは「IQOS」専用のたばこスティックの製造工程を見学。製造ラインに入ると、たばこ葉とメンソールのさわやかな香りに包まれます。

 加熱式たばこスティックの製造工程は、大きく分けて2段階。第1段階では、たばこ葉をシート状の「キャストリーフ(加工葉)」と呼ばれる形に整形し、ドラム状に巻いていきます。

 続く第2工程では、このキャストリーフにフレーバーを付けたうえで細かく裁断。加熱装置の熱を内側からたばこ葉に伝える「誘熱体」を挟み込みます。その後、フィルターを付け、巻き上げることで完成する仕組み。今回はこの第2工程のラインを見学させてもらいました。

 ごうごうと大きな音を立て、目にも止まらぬ速さでたばこスティックを生産していくライン。もっと大勢の人が入れ替わり立ち替わり働いているのかと思いきや、驚くほどに人の姿を見かけません。工程担当者の方いわく、ほとんどの工程が自動化されており、人は品質のチェックやトラブル発生時の対処のみに集中できる体制となっているそうです。

 そんな自動化を支えるのが、ラインの数カ所に設置された検査機器。カメラの映像を20秒ごとにスキャンし、製品に異常がないか確認します。検査の結果はコンピューターによって随時集計され、独自の「品質数値」として画面に表示。特別な研修を受けた専門スタッフによって、二重三重の厳しいチェックが行われています。

 このような工場は世界に数か所あるのだそうですが、その中でもここ梁山工場は品質、生産量ともに全拠点中トップの品質数値をキープし続けており、グループ内の他拠点のスタッフがたびたび視察に来るほどだそう。淡々としたラインの光景からは想像もつかないほど、その背景には人、機械ともにとても高度な技術があるということがわかりました。

■ 吸い心地と安全性を何重にもチェック。高品質を守る鉄壁の専門部署「品質管理研究所」

 品質管理は生産時のみならず、実際に消費者へ届けられる段階においても盤石の体制が。工場内には「品質管理研究所」と呼ばれる専門の部署があり、実際に加熱式たばこを使う消費者の目線に立って、エアロゾル(空気粒子)やベーパー(蒸気)の状態を毎日チェックしています。

 中でも特徴的だったのが、IQOSの使用をシミュレートする「スモーキングマシン」。喫煙者がたばこを吸うときと同じ動作でたばこから出るエアロゾルを採取、分析して、常に同じ吸い心地を実現できているかチェックしているそうです。機密上写真を出せないのが残念ですが、タールで真っ茶色に染まった紙巻たばこのフィルターと、ほぼ無色状態な「IQOS」フィルターの比較サンプルを見せてくれました。

 「フィリップ モリスが目指すのは『煙のない社会の実現』です」と工場の担当者。IQOSでは一般的な紙巻たばこと比較して有害物質が平均で約95%もカットされているとのこと。数値としては「なるほど」と思っても、その効果を実際に目の当たりにして、思わず圧倒されてしまいました。

 この工程で採取されたフィルターは、続いてさらに詳細な検査工程へ移されます。フィルターを専用の容器に入れて30分撹拌して不純物を取り除いたあと、フィルターに残存するたばこ成分を抽出。「GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)」と呼ばれる専用の装置で分析し、ベーパーに有害な物質や、潜在的な害がないかどうかを徹底的に検査します。

 検査の結果、問題が見つかった場合は、製品の製造管理を担当する部署へ通達され、製造現場へも即座にフィードバック。製造工程の問題を取り除くことで、安定した吸い心地と安全をしっかりと担保しているとのことです。何重にも張られた厳密なチェックによって、私たちの豊かなIQOSライフが保たれているのですね。

■ 国際的にも重視されている日本の加熱式たばこ市場「高い期待に品質でお応えしたい」

 見学の後、製品の製造を統括するフィリップ モリス コリアのプロダクション・マネージャー、レオン・車(チャ)さんに詳しくうかがいました。

 梁山工場は2002年に設立され、その後2012年に現在地へ拡大移転。2015年には韓国貿易協会が優れた輸出実績を持つ企業に与える「1億ドル輸出の塔」を受賞するなど、めざましい成果を上げているそう。環境や労働安全の整備にも力を入れており、品質管理の国際基準「ISO9001」、環境管理の国際基準「ISO14001」、労働安全衛生の国際基準「ISO45001」の認証を受けているとのことです。

 チャさんいわく、梁山工場が主戦場に据えているのは日本と韓国。韓国南部に位置する梁山市は「ソウルよりも福岡のほうがずっと近い立地」である、日本の拠点貿易港である神戸港、横浜港への距離もそれぞれ船で2日、3日と近いことから、「日本向けの便は、ほぼ韓国向けの国内便の一部として取り扱っている」ほどだと言います。

 「日本における加熱式たばこのシェアは韓国を大きく上回っており、私たちとしても非常に重要なマーケットと認識しています。日本における『IQOS』シリーズ発売から10周年を迎えますが、これからもアジアの拠点工場として日本市場向けの生産を増やし、これまで以上に高い品質でお応えしていきたいと思っています」(チャさん)

 フィリップ モリスの加熱式たばこ製品カテゴリーにおいて、いかに日本が重要視されているか、チャさんの言葉からはその思いが強く感じられました。「同じたばこといえど、紙巻たばこと加熱式たばこはどう違うの?」という漠然とした疑問が、今回の工場見学によってクリアになった気がします。

取材協力:フィリップ モリス コリア

(取材:天谷窓大)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 天谷窓大 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024071601.html
情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 日本のメディア初公開!「IQOS」専用たばこスティックの韓国生産工場のスゴい中身を取材してきた