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アポロ11号が人類史上初めて月面着陸に成功したのが1969年のこと。それから50年余りが経過した現代においても、自由に月へ行き来することは叶ってはいませんが、「月の土地を購入できる」サービスがあることをご存じでしょうか?
販売を行っているのはアメリカの「ルナ・エンバシー社」。しかも1エーカー(約1200坪、サッカーグラウンド1面分)たったの2700円から(2023年9月時点)で分譲中です。宇宙への憧れはいくつになっても尽きないものですよね。ということで、今回この月の土地を購入してみることにしました。
ルナエンバシー社は月をはじめ、火星、金星などの土地を販売し、その権利書を発行する、地球圏外不動産業(と称したサービス業)を行っている企業。アメリカ人の「デニス・ホープ」氏が設立し、日本では代理店である「ルナエンバシージャパン」が活動を行っています。
早速ホームページを見てみると、「月の土地(2700円)」や「月の土地カードセット(3250円)」「MOON GIFT CARD(3400円~)」に「月球儀(1万6500円)」なんてものまで。幅広く商品の取り扱いをしており、「お客様の声」を見る限り、多くの人が購入しているようです。
「月の土地」を購入すると、土地権利書、月の憲法、月の地図などがセットで送られてくる模様。とはいえ、「紙だけだと何だか味気ないなー」と感じたため、3250円の「月の土地カードセット」を購入しました。ポチッとな。
それから待つこと約1週間。ついに我が家に書類一式が届きました。「Celestial Real Estate」と書かれた同社のオリジナル厚紙封筒も、なかなか良い味を出しています。
中を確認すると、前述の通り3枚の用紙が。高級感のある紙を使用しており、こう言っては何ですが割としっかりとした作りです。署名付きの権利書や、地図上に示された所有地を見ると、「これが自分の土地か……!」と、テンションが上がります。
そして、セットの目玉である「ムーンオーナーシップカード」は、氏名や購入日、所有地などが記された、クレジットカードのような質感。財布にそっと忍ばせておけば、事ある毎に「オレ、月の土地持ってるんだぜ」と自慢することが出来そうです。
同梱物を全て並べてみると、この豪華仕様には惚れ惚れしますね。さらに土地が付いて3250円で買えるなんて。もしも旅行で月に行ったときは、真っ先に自分の所有地で記念撮影をしたいと思います。問題はどうやって月に行くか、ではありますが……。
さて、みなさんが気になっているのは「この月の土地所有権が、果たして本当に有効なのか?」という点だと思います。
1967年に発効された宇宙条約によると、宇宙の土地は国家が所有することは禁止しているが、個人が所有してはならないという点については言及されておらず。この盲点を突いたデニス・ホープ氏が1980年にサンフランシスコの行政機関に所有権の申し立てを行ったところ、正式に受理されたことから月の土地を販売し、権利書を発行するという「地球圏外の不動産業」を開始したのが始まりなのだそうです。
しかしながら、法的には、所有権は客観的要件として占有を伴う必要があり、ルナ・エンバシー社は現実に月やその他の天体の土地を占有しているわけではないため、所有権を認められる可能性はほぼ100%ないと言えるでしょう。
「じゃあこれって詐欺じゃないの?」とも捉えられますが、販売が合法か非合法かという問題については、さまざまな解釈があるのは事実です。近年では前澤友作氏やジェフ・ベゾス氏ら民間人も宇宙旅行に行けるような時代になっていますから、宇宙の土地について再度議論がなされる日はそう遠くないかもしれません。
とはいえ、それでもこうしたビジネスが成立するのは、人々が宇宙への憧れを抱いてやまないことが大きな要因のひとつでしょう。だって、月に土地を持っているなんて、ジョークだと分かっていても気分が上がるものですし、例えばプレゼントとして恋人や婚約者に月の土地を贈るなんて、すごくロマンチックじゃないですか?
いわばこの商品を買うことは「夢を買う」ことと同等。送られてきた権利書や所有地の地図、オーナーシップカードを眺めながら、遠く離れた月の土地に思いを馳せることができる……それだけでも、「月の土地」を購入するメリットとして十分であると思います。
※価格は全て税込です。
<参考・引用>
ルナエンバシージャパン
(山口弘剛)