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知的障害以外にも、学習困難や海外からの渡航者で日本語に不便である人でも分かりやすいと注目されている、「LLブック」。
脳卒中後の言語障害へのリハビリテーションにも使われる事があるこの本、いったいどういうものなのか。LLブックの国内における先駆者、埼玉福祉会に話をうかがいました。
福祉大国であるスウェーデンが生み出したLLブックを日本の福祉関係者が注目し始めたのは2010年代頃。時間はかかりつつも、その存在は徐々に広がっています。
「LL」とは、スウェーデン語の「LattLast」(英語ではeasy to read)の略で、「やさしく読みやすい」の意味。
そしてLLブック自体には、写真やイラスト、ピクトグラムなどが豊富に使われており、難しい言い回しや漢字を使わずに一文の文字量も少なめ、という特徴があります。ほかにも、漢字にはふりがながふられており、漢字を読む事が困難な人にも分かりやすい作りであることも特徴です。
豊富な視覚効果のあるLLブックですが、大きさはさまざま。大きいサイズを示す「LL」と勘違いされそうですが、いわゆる「ビッグブック」とは違うのです。埼玉福祉会が出版しているシリーズものは規格が揃っており、知的障害や発達障害のある人が読みやすい「仕事の本」シリーズは、障害を持つ人目線で描かれています。
「埼玉福祉会は社会福祉法人として、知的障がい者が自らのことを自分で決められる、自己決定権を守るための環境づくりを行っており、その一環にLLブックの出版があります。読書バリアフリーの推進も目標としています。弊会の代表が新聞記事でLLブックの研究をしている藤澤和子先生の記事を見かけ、連絡を取り、その後スウェーデンなどの視察を経て作りました」とインタビューに応じていただいたのは、埼玉福祉会のLLブック担当・国重清香さん。
現在は埼玉福祉会以外の福祉団体や出版社もLLブックの出版を手がけており、三省堂の「三省堂ことばつかいかた絵じてん」や、自立した生活を送る手助けとなる内容の本など、障がい者の学びに繋がるようなものから童話や物語と、興味・関心を高めるような数々のLLブックが出版されています。
特に埼玉福祉会では、知的障害のために一般的な表現では読みにくい方をターゲットにしているとのこと。障害の程度は人それぞれですが、ひらがなで簡単な文章を理解できる層に届く本はあまり多くないのが現状。そういった方々に、作業所での仕事や生活の自立のための本が出版されているのです。
前出の国重さんによると、全国のさまざまな図書館にて取り扱いがあり、「LLブック 展示」などで検索すると各図書館の展示の様子が確認できるそうです。また、埼玉福祉会の地元である新座市では、市立小中学校への配置も進められているとのこと。支援学級での授業にも取り入れることができそうですね。
また、図書館への扱いが広がる事で児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害者支援施設での活用も期待できそうです。
視力が弱い人が眼鏡をかけるのが当たり前のように、足の障害で杖をつくのが当然の様に、知的障害や神経発達症(発達障害)を伴う知能の遅れがある人にも、自立のための補助が当たり前になっていく時代が来ています。誰もが自分を理解し、適切に自立できる、お互いがお互いを分かり合える社会にしていくには、こういった図書がある事を知るのも手段の一つかもしれません。
<記事化協力>
社会福祉法人 埼玉福祉会
(梓川みいな)