年が明けて、楽しみなことのひとつが「初売りセール」。「新春価格」「お年玉価格」と銘打ったお買い得商品が店頭に並んでいるさまを見ると、目的のものでなくともつい買ってしまいたい気分になるものです。

 しかし、その判断はアパレルの初売りセールにおいては冷静に判断したほうが良いかもしれません。大手アパレル企業に12年勤めた筆者が、正月に洋服を購入する際の注意点を解説します。

■ それ本当に必要?「安いから!」を理由にしない

 まず、初売りセールとなると、価格を下げて販売されているアイテムはそのほとんどが秋物、冬物衣料。つまり、着られる期間は長くてもあと2~3か月だと思ってください。

 「え?春先まで着るよ?」という方もいるでしょう。ですが、それなら初めから春物を購入することをおすすめします。アパレルにおいて春物の本格投入が始まるのは、正月セールが終わった後。冬物を一掃して空いた売場に春物を並べていきます。

 そしてやはり、秋冬物と春物は似て非なるもの。特にカラーパターンは大きく異なり、パステルカラーやペールカラーといった明るい色のアイテムが多くなります。新しい年の始まりですから、せっかくなら気持ちも明るくなれる洋服を身に付けたいところですね。

 「また今年の冬に着るし……」という考えも基本的にはNG。なぜなら、洋服にも「鮮度」があるからです。次の秋冬を迎え、初売りセールで買った服をいざ着ようと思った時、店頭に並んでいるのはトレンドを押さえた新しい服ばかり。

 アパレル企業の商品作りは、特に流行に左右されますので、全く同じ服を2年連続で販売することはほぼありません、似たような服でも流行に合わせて若干でもデザインやシルエットに手をくわえることが多いです。そんな服を見てしまったら、「多少値は張っても新しいものが良かった」という気持ちになるのではないでしょうか。

 こうなってしまっては、まさに「安物買いの銭失い」。インナーを含む、ど定番のアイテムを除いて、「安いから!」を理由に秋冬物を購入するのは、後悔する可能性が高いことを念頭に置いておきましょう。

■ 「待ち」は厳禁!買うならセール初日のみ!

 ほとんどのショップが1月2日もしくは3日から初売りセールを開始します。アパレルにおいて年末年始はいわゆる「最大の書き入れ時」であり、年間の売り上げの中でも大きなウエイトを占めるため、ショップ側もここに照準を合わせて、売り上げの確保を狙ってきます。

 正月を過ぎると、本当にびっくりするくらい、秋冬物は売れなくなってしまいます。つまり、このタイミングで消化できなければ、商品はあっという間に不良在庫。出し惜しみをしている余裕などないのです。

 もちろん、商品は秋冬物ですので以降追加で生産されることはなく、在庫は今あるもの限りの場合がほとんど。つまり、良い商品からすぐになくなり、セール2日目、3日目には、もみくちゃにされた残品感のある商品ばかりが残った状態になります。こうしたアイテムはさらに値下げ、値下げを繰り返し、なんとか消化を図っていくのです。

 つまり、「残り物に福がある」的な考えは洋服の購入には当てはまらず、良いアイテムほど早くなくなる、ということ。初日は混雑しそうだから、と避けようとすると、間違いなく満足感の高い買い物は出来ません。

 本当に欲しい商品があるのなら、狙いは間違いなく初売りセール初日。最近はオンラインショップでも同時にセールが行われることも多いので、人込みを避けたい場合はそちらを狙ってみるのも良いでしょう。アクセス過多でサイトが落ちる……という可能性ももちろんありますが。

■ 福袋の中身は基本的に残品だと考える

 初売りセールの目玉と言えば、何といっても福袋。ショッピングモールなどでは、開店と同時に目当ての福袋を目掛けてダッシュする……という光景がよく見られます。

 アパレルにおける福袋は、基本的に在庫消化が目的です。「5万円相当の洋服が1万円で!」と聞くと、何となくお買い得に感じますが、いくら定価が高くても好みのものでなければ着る気にさえならないのが洋服ですから、中身が分からない状態で購入することは非常にリスクが高い行為と言えるでしょう。

 もちろん「元々そのブランドが大好きで、どのアイテムでも良い!」という方は購入しても良いと思いますし、近年あらかじめ中身が分かっている福袋、というのも増えてきました。

 このように「中身に信頼が置ける」場合であれば、お得な買い物になるでしょう。しかしながら、このパターンでなければ、手を出さない方が吉。そのお金があるなら、少し待って春物の新作を買った方が良い……とすら思います。

 せっかくの正月気分を味わいたいから、どうしても買いたいという場合は、中身に期待しすぎないようにしましょう。

■ 新年早々の後悔がないよう、アパレルの初売りは慎重に

 以上、アパレルの初売りセールで気を付けるべき3つのポイントを解説しました。

 「新年早々、失敗した……」といった後悔がないよう、ぜひこうしたポイントを念頭に置いて、お買い物に役立ててくださいね。

【山口弘剛:筆者プロフィール】
鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育て中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動中。

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 元店長が解説 アパレルの初売りセールで気を付けるべき3つのポイント