「櫓三年に棹八年」なんて言葉もあるように、技術を習得するにはそれ相応の時間を要すものです。

 切り絵作家として活動する長野県長野市在住の斉藤洋樹さんは、2022年で作家活動8年目を迎えました。これまでの作家としての軌跡を、作品の比較という形でTwitterに投稿したところ、大きな反響を集めています。

 切り絵の繊細な表現ができる点に魅力を感じ、独学で始めたという斉藤さん。高校の授業が、初めての出会いだったそうです。

 その後、「友人に見せたり、SNSで作品投稿をしたときに、『趣味だけじゃもったいないよ』と言われまして」と、2014年から切り絵作家として本格的に活動をするように。現在は、全国各地の展示会で作品を展示しています。

 今回の投稿は、「8年間ほぼ毎日切り絵を切り続けた結果」とのコメントにもあるように、活動初期と直近で制作した切り絵作品を比較という形で紹介しました。

 3枚の作品のうち、縦長で写された1枚目は、長野市にある信州善光寺仲見世通りを切り絵で再現したもの。作家活動を開始する前に制作した作品です。白と黒のモノクロで建物や道路を表現し、紫を基調とした空模様が印象的。

 横長で写した2枚目・3枚目は、いずれも東京・月島を題材に、2022年5月・2021年9月に制作しました。隅田川とビル群の対比が印象的な月島ですが、両作品ともにビルの照明や川の波面を、複数の色を用いることで、「夜間」と「日中」という月島の2つの表情を伝えています。

 2枚目では、白や橙で描かれた窓の照明が、そのままの色で隅田川にも照らし出されています。周囲は黒の切り紙で川全体を表現していることもあってか、見る人が「夜」と判別できるものに。

 反対に3枚目では、川全体は「青」、照明が少ないビル群にかかる部分は影をイメージさせる「黒」にして「日中」を表現。青で夜、白で日中を伝える空も含めて、色分けの妙を感じさせる2作品です。

 「趣味じゃもったいない」と言われるのも納得な1枚目も、見る人を引き付けるアートなのですが、それを凌駕するクオリティなのが2枚目ならびに3枚目。筆者が目を引いた「色」に加えて、切り絵作家としての技術面に8年間の積み重ねがあったと斉藤さんは振り返ります。

 「作者目線では、作品細部のカッティング技術の向上が一番の変化のポイントです。昔は、そういった部分を“誤魔化しながら”切っていたこともあり、技術的な理由からこだわった制作ではなかったなと記憶しています」

 「色については、特に『使い方』が格段に変わりました。以前は絵の具の扱いが苦手でして、市販の和紙をメインに使用していました。1枚目の作品も、和紙を裏から貼って制作しているんです」

 「ただ、制作していくうちに、『自分の欲しい色』や『表現したい色』を求めるようになりました。そこから本格的に絵の具の使い方を勉強し、今では1つの作品に様々な色を使えるようになり、空のグラデーションも自分が思った色を出せているかと思います。月島に関しても、ビルの夜景部分は、白い紙にポスターカラーで着色しています」

 8年という時間は、どことなく抽象的だった作品を、より具体的なものに昇華させました。そして斉藤さんに「世界を切り取る切り絵作家」という称号を与え、見る人たちには、「これって切り絵なの!?」という驚きと感銘を提供することとなっています。

<記事化協力>
斉藤洋樹さん(@kiriehiro)

(向山純平)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 「世界を切り取る切り絵作家」斉藤洋樹の継続を力にした八年間