世界から高い評価を受け、TPPなどの影響で国際化が加速している日本のチーズ。NPO法人チーズプロフェッショナル協会が「食べて発見!世界へ挑むチーズニッポン」と題し、メディア向けの国産チーズセミナーを開催したので行ってきました。

 会場に入ると、フロアには現在アメリカで開催しているチーズの国際品評会「ワールドチャンピオンシップチーズコンテスト(WCCC)2022」に出品されている日本のチーズがズラリ!チーズの香りがほのかに漂う中、セミナーが始まりました。

 最初に登壇したのはチーズプロフェッショナル協会の副会長である坂上あきさん。チーズプロフェッショナル協会では、チーズの伝え手を育成するためにチーズプロフェッショナル資格認定試験制度を作り、今までに3600名を「チーズプロフェッショナル」として認定。

 さらにチーズの楽しさや知識を広げるためにC.P.Aチーズ検定を実施し、これまでに1万3220名が「コムラード・オブ・チーズ」に認定しているとのこと。

 協会の事業の中で最も重要なことと位置付けているのは「日本のチーズの応援」と語る坂上さん。2009年から「日本の銘チーズ百選」という展示試食会を開催したり、「Japan Cheese Award」という日本のチーズのコンテストを開催したりしているそうです。

 日本のチーズの国際化に向けては、農林水産省や農畜産業振興機構にサポートしてもらいながら、中央酪農会議や日本チーズ協会、チーズ普及協議会などと連携。国産チーズブランド化推進委員会を立ち上げ、日本のチーズの国際品評会への出展をオールジャパンで一丸となって支援しているとのことです。

 坂上さんは現在の日本のチーズ作りについて、昔は世界の伝統的なチーズ作りの技術に習って同じようなチーズを作っていたが、日本のチーズ作りの技術は世界でも高く評価されるようになり、今は日本の風土を生かした日本人の味覚に合ったチーズを作っていくという新たなステージに入ったと言います。

 そんな日本独自の日本らしいチーズは国際品評会でも賞を獲得。今後は世界的に評価が高い日本のチーズを日本の消費者にたくさん食べてもらうことが「日本のチーズの発展のカギになる」と話していました。

 続いて生産者によるトークセッションでは、チーズの生産者であるニセコチーズ工房の近藤裕志さんが登壇。アトリエ・ド・フロマージュの塩川和史さんがオンラインで参加しました。

 ニセコチーズ工房の「二世古 椛【momiji】」とアトリエ・ド・フロマージュの「翡翠」は、2021年にスペインで開催された国際品評会「ワールドチーズアワード(WCA)2021」で最高評価のスーパーゴールドを受賞しています。

 スーパーゴールドを受賞したことについて近藤さんは、日本の繊細なチーズの味が世界に認められたということは、その味覚を持った日本人は「今後もっと良いチーズを作っていけると感じている」と語っています。

 日本のチーズのさらなる発展のためには地域の取り組みも必要不可欠。近藤さんは、地元の高校生やパン屋とコラボしてメニューを作ったり、近郊の地域の食材や廃棄される予定の食材でチーズを作ったりしているとのこと。

 一方の塩川さんは地元の地域のワイナリーとコラボしてチーズを作ったり、イベントを開催したり、地元の野菜や信州牛を使ったチーズ料理を作るなどしているそうです。

 SDGsの観点から言うと近藤さんは食品ロスを今までほとんど出したことが無いと言い、出さないようなチーズの作り方をしているとのこと。塩川さんは近隣の養豚業者にチーズを作る時に出るホエーを引き取ってもらいエサに使ってもらったり、青カビの入りが悪かったりするものはレストランの材料に使ったりしていると紹介。

 年末年始に起きた生乳の供給過剰問題について、「チーズを使った料理の提案をもっとしていかないといけない」と近藤さん。ヨーロッパなどはチーズを使った料理が一般的で家庭でもよく使われているとし、パンフレットなどでチーズを使った料理を提案しているそう。しかし、「なかなか広まらなく、そこが問題」と苦労している様子でした。

 塩川さんは日本のチーズの国内消費について、日本独自のチーズを確立していくことが大切と言い、そうすれば国内だけでなく海外からも日本のチーズを求める声が上がってくると話していました。

 セミナーが終わると国産チーズの試食サンプルが参加者に配られました。中にはチーズ工房【千】senの「季節の熟成チーズ」、ボスケソ・チーズラボの「KASUGA」、アトリエ・ド・フロマージュの「翡翠」、ニセコチーズ工房の「二世古 椛【momiji】」が入っていました。

 どちらのチーズも美味しかったですが、記者の口に一番合ったものはニセコチーズ工房の「二世古 椛【momiji】」。濃厚な味わいで風味も良く、日本人の味覚に合わせて作られたというだけあって食べやすく、「もっと食べたい」と感じました。

 記者は今までチーズを頻繁に食べることはありませんでした。もしかしたら、「臭い」というマイナスなイメージや苦手意識があったのかもしれません。しかし、日本には食べやすくて美味しいチーズがたくさんあり、世界的にも評価されているという事実。それがもっと浸透して身近になれば、国内需要も高まるかもしれません。

取材協力:NPO法人チーズプロフェッショナル協会

(取材・撮影:佐藤圭亮)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 日本のチーズは世界レベル 国産チーズセミナーに行ってきた