いかついタトゥーに彩られた外見とは裏腹に、猫の行動と心を知り尽くし、猫の性格が原因かと思っていたお困りごとの真の要因を解き明かし解決へと導く、猫性善説に基づく飼い主しつけ番組「My Cat From Hell」(邦題「猫ヘルパー」)で知られる、Jackson Galaxy氏。猫ジャーナル読者諸兄は、もちろんすでにご存じかと思いますが、念のためどんな方かはこちらの動画でご確認ください。
そんな猫の行動専門家として名高い彼の著作で、猫飼い必携ノウハウ本『Total Cat Mojo:The Ultimate Guide to Life with Your Cat』の邦訳版が登場しておりましたのでご紹介。その名も『ジャクソン・ギャラクシーの猫を幸せにする飼い方』であります。書名だけ見るとハウツー本ですが、誤解です。これは猫の言葉を人間語に翻訳した辞書とか猫との暮らし方百科事典といっても過言ではありません。そんじょそこらのハウツー本とは情報量が違います。
読み方もフツーの本のように、頭からお尻まで順繰りに読むべきではありません。ちゃんと索引が付いていますので、気になる単語を引いて、そこから読むべきです。猫と暮らす人であれば、いつの間にか全部読み終えていることでしょう。そういう本なのであります。猫に対する思い込みや勘違いに気づかせてくれる『FACTFULNESS』ともいえましょうか。
なぜ、人は猫に対して困るのか。それは分からないからです。猫の気持ちを、行動の原因を、猫に対する受容の手だてを。そして、それは愛情の多寡で決まる問題ではありません。知っているか知らないか、気づくか気づかないかだと、ジャクソンは本書を通じて教えてくれるのであります。てんこ盛りの情報量からすればほんの一部ですが、以下の引用からでもビビッと気づく方も多かろうと思います。
猫に「投影」するべからず
今日がさんざんな日で、疲れきって、ようやく家にたどり着いたとしよう。家に入ってまず目に入ったのは、座ったあなたの猫だ。あなたをじっと見つめている。なにか非難するような目に見える。
この場合の問題は、猫が何を考えているかという客観的なことを、完全に客観的でないところから判断している点にある。これは「投影」と呼ばれる。心理学で、不安や怒りを感じたとき、その原因が他人にあると捉える傾向を指す言葉として使われる。
猫は「何を考えているかわからない」と思われることが多く、特に投影の対象にされやすい。投影は怒りやフラストレーション以外の理由からも行われる。僕たちは自分たちが望むことを猫も同じように望んでいるはずだと思ってしまうことがある、例えば、トイレはプライバシーが絶対に守られていないといけないと決めつけるが、これも正しくない。投影をしていると、どんどん間違った方向へと進んでしまいかねない。投影をする原因は、猫の生活やボディランゲージに対する理解が足りないことにすぎないのだ。
(同書 P210より)
投影の対象を探すとき、往々にして、自分よりも弱い立場にあるものを選ぶものです。自分が望まないことをする原因を転嫁しやすいからです。皆までは言いませんが、猫に限った話ではありませんね。猫との生活に自信のある方にこそ読んでいただきまして、己の思い込みの数々を払拭して、猫のみならず人間も幸せにするノウハウが詰まった一冊であります。
[ジャクソン・ギャラクシーの猫を幸せにする飼い方/エクスナレッジ]
情報提供元: 猫ジャーナル