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ところが、約1万3000年前に、北米大陸から大型哺乳類たちが姿を消してしまいます。北米ではメガファウナの68%が、南米では80%が失われました。
これでピンチに陥ったのはアボカドです。
種子を遠くまで運んでくれる動物がいなくなったことで、親木と日光や成長を競わなければならなくなりました。
ベリーのように種子の小さい果実なら、小型の哺乳類によって分散されますが、アボカドは種子が大きいのでそうはいきません。
結局、親木の側に落ちた種子は、十分な日光や栄養が得られず、そのまま腐ってしまいます。
アボカドの生存戦略は、哺乳類の運び手にすべてを負っていたので、本来ならここで絶滅するはずでした。
しかし、そうはならなかったのは、今日のアボカド人気が雄弁に物語っています。
アボカドは、どうやってこのピンチを乗り越えたのでしょうか?
この問題については、専門家たちがいくつかの有力な説をあげています。
1つは、大型哺乳類が絶滅した後、運よくジャガーたちがアボカドに興味を示してくれたという説。
ネコ科動物の胃は、大きな肉を消化するのに十分なサイズがあるので、アボカドを丸呑みできると考えられます。
しかも、彼らは移動力に長けているので、これまで以上に種子の散布範囲は広がったでしょう。
一方で、この説を裏づける証拠は見つかっていません。
もう1つは、リスやネズミなどのげっ歯類が、アボカドの種を地中に埋めて腐るのを防いだという説。
体が小さいのでアボカドを主食にすることはなかったでしょうが、種を持ち帰って地中に埋め、アボカドの生存に貢献した可能性があります。
しかし、こちらの説も証拠はありません。
アボカドはどうして危機を乗り越えられたかは未だに謎ですが、ただ、メガファウナに取って代わる分散者が現れたことは確かです。
何らかの動物がアボカドの命を繋いでくれたおかげで、ついにアボカドは人類によって発見されます。
人類は、栽培によってアボカドを大きくし、より多くの果肉を食べられるよう改良しました。
記録によると、アボカドは、紀元前500年頃からメキシコをはじめとする中南米で主食として親しまれています。
16世紀には、スペインの征服者がアステカ人からアボカドを発見。
その後、北米の方まで広がり、1914年には、カリフォルニアの地でアボカドが大々的に栽培されるようになりました。
現在でも、アボカドの約90%はカリフォルニアで栽培されています。
メガファウナ亡き後の分散者が何者かは分かりませんが、彼らがいなければ、人類がアボカドに出会うことはなかったかもしれません。
※この記事は2021年10月公開のものを再掲載しています。
参考文献
Why the Avocado Should Have Gone the Way of the Dodo
https://www.smithsonianmag.com/arts-culture/why-the-avocado-should-have-gone-the-way-of-the-dodo-4976527/
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?