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結果、人の代謝率は乳幼児期にピークを迎え、20代に入るまでに約3%ほど低下することが判明しました。
10代は成長期に当たりますが、被験者の体格を考慮したところ、思春期の1日の必要カロリーの増加はなく、世間一般で言われるような「代謝の急上昇」は見られていません。
そして、20代〜50代の間は、代謝率が最も安定し、低下することなく横ばいになっていたのです。
また、他の要因を考慮しても、男性と女性の代謝率の変化には、実質的な違いがありませんでした。
つまり、中年太りは、代謝の低下が原因ではないと考えられます。
では、代謝率はいつから低下するのでしょうか?
データ分析の結果、代謝率が明確に下がり始めるのは60歳を過ぎてからでした。
60代に達すると、人の代謝は年ごとに0.7%ほど低下するとのこと。それでも低下率はわずかなもので、大きな急落はありません。
しかし、90代に入ると、1日に必要なエネルギー量は、中年層に比べて平均26%少なくなっていました。
これは、筋肉量が少なくなるだけでなく、細胞の働きが鈍くなるためです。
研究主任の進化人類学者、ハーマン・ポンツァー氏は「代謝率が最も大きく変化するのは、生後1年の間」と指摘。
「1歳児は、大人に比べると、体格比で約50%もはやくエネルギーを消費しており、この時期の代謝率は急上昇していると言える」と述べています。
これは、赤ちゃんの細胞内で何かが起こり、活動的になっていることを意味しますが、その詳しいプロセスはまだ分かっていません。
ポンツァー氏は「本研究から、人の代謝は、これまで十分に理解されていなかった方法で、生涯にわたり変化していることが分かりました。
今後は、年齢ごとの代謝率の変化や安定化について、その仕組みを解明していきたい」と話しています。
参考文献
Huge Study Finds Our Metabolism Changes With Age, But It’s Not When You Think
https://www.sciencealert.com/scientists-have-mapped-out-how-our-metabolisms-change-over-our-lives
Metabolism doesn’t change with age — at least not how you think it does
https://www.zmescience.com/medicine/metabolism-doesnt-change-with-age-at-least-not-how-you-think-it-does/
元論文
Daily energy expenditure through the human life course
https://science.sciencemag.org/content/373/6556/808
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部