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その結果、射出されたクマムシは、秒速825mまで耐えることができたのです。
拳銃弾がだいたい300〜400m/s、ライフル弾が880m/s、速いものだと1450m/sほどですから、クマムシは、ライフル弾に近いスピードまで耐えられるということです。
対照として用意した「射出なし」のグループは、約8~9時間で乾眠から回復しましたが、825m/sはクマムシが耐えられるギリギリのラインのようで、回復にはそれ以上の時間がかかっていました。
体にもわずかの損傷が見られています。
また、901m/sまで上げるとクマムシは完全につぶれ、弾丸内でジャムのようになっていたようです。
この結果は、クマムシがある程度の衝撃なら、他惑星への不時着にも耐えうることを示唆します。
例えば、2019年に月面に不時着したイスラエルの探査機「ベレシート」には、数千匹のクマムシが載せられていました。
事後調査によると、ベレシートの月面衝突は、垂直方向の速度が134.3 m/s、水平方向の速度が946.7 m/sと分かっています。
つまり、探査機に搭乗していたクマムシは、この墜落事故を生き延びた可能性があるのです。
もしかしたらクマムシは、小惑星に乗った生命が他惑星への衝突によって宇宙に広がるという「パンスペルミア説」を可能にする存在なのかもしれません。
参考文献
Scientists Fired Tardigrades Out of a Gun to See if They Can Survive Space Impacts
https://www.sciencealert.com/tardigrades-can-survive-high-velocity-impacts-after-being-fired-from-a-gun
元論文
Tardigrade Survival Limits in High-Speed Impacts—Implications for Panspermia and Collection of Samples from Plumes Emitted by Ice Worlds
https://www.liebertpub.com/doi/full/10.1089/ast.2020.2405
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部