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同チームが監視していた他の4つのエリア(駆除活動はしていない)ではいずれも、そのような集団的爆発は見られていません。
つまり、数の増加は、大気や海水の気候変化ではなく、駆除活動に原因があると予想されます。
そして追跡調査の結果、原因は駆除によって成熟個体がいなくなることにありました。
というのも、エビやカニのような甲殻類には、成体が若い個体を共食いするカニバル習性があり、これによってコロニーの増え過ぎが抑圧されます。
ところが成体を根絶すると、駆除されなかった小さな個体たちが無制限に急成長し、短期間で数が一気に増えてしまうのです。
「科学実験の失敗はしばしば私たちを予期せぬ方向に導いてくれる」と語るのは、研究主任のエドウィン・グロスホルツ氏です。
「この失敗により、外来種への正しいアプローチが見えてきました。私たちは、外来種の完全な根絶ではなく、機能的な根絶(Functional eradication)に取り組むべきです」と話します。
「機能的な根絶」の効果は、同氏も参加したカナダ・アルバータ大学の研究(『Frontiers in Ecology and the Environment』、2020)で証明されています。
具体的には、「ゴルディロックス値(Goldilocks level)」を目標として駆除を行うというものです。
ゴルディロックス値とは、外来種の急増を防ぐには十分な成体がおり、逆に、在来種を征服するには数が少なすぎるといったレベルのこと。
研究チームは、この方法をスティンソン・ビーチで実践したことで、2017〜18年には安定した数に落ち着いています。
一方で、この傾向は甲殻類に特有のものであって、他の外来種では駆除がどのような反応を起こすのか分かりません。
しかし、外来種もただ闇雲に駆除すればいいというわけではないようです。
参考文献
When ‘eradicated’species bounce back with a vengeance
https://phys.org/news/2021-03-eradicated-species-vengeance.html
元論文
Engaging the importance of community scientists in the management of an invasive marine pest
https://escholarship.org/uc/item/7456p21c
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部